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■ロレートシナリオ
アイヴィー様方と一夜を過ごした翌日、私は国に戻ってきた。
肴に土産話を聞かせろ、と陛下に言われるかと思ったが、その夜はエメリーを側に付けていた。
その次の夜も、私は呼ばれなかった。
一人にされた私は自分の部屋で、机に伏していた。カーテンが閉まっていない。
窓硝子の向こうは暗闇。光が見えない。
「レイナー。ああ、居た居た」
寝巻姿のエメリーが私の部屋に来た。
相変わらず、夜中だというのに気軽に訪れてくれる。
「何しに来た」
「ん? 夜這い」
言いながらククッと笑う。
「エメリー、用事がないなら来るなと言って…」
「そうカリカリすんなって。お前、ほんっと余裕ないなあ、最近」
私は黙った。包帯セットを見せられる。
「コレ、巻いてくんねーかなと思ってさ」
自分で巻け、という言葉を私は飲み込んだ。奴は利き腕の上部を負傷しているのだ。
「メイスン医師に頼めば良いだろう」
「嫌だね。あいつ、ペタペタ触ってくるし」
王室は専属の医師団を抱えている。メイスン医師は我々のような武官の担当だ。私達と同年代で医師団最年少の鬼才。
男性なのだが、趣向や話し方がユニーク、というか少々女性的で、実は私も得意な相手ではない。
包帯セットを押し付けられる。
「シャワー入ったからさ、新しい包帯に取り換えたいわけ。イイだろ? そのくらい」
茶髪はまだ濡れていた。艶やかに光っている。シャワー上がりの清潔な匂い。
エメリーは私のベッドに座り、寝巻の上をスポッと脱いだ。
普段は軍服で覆われている、華奢な上半身が晒される。ラインは細いが武官らしい身体つきだ。
奴がニヤリと笑う。
「バカ。んな見つめんなよ」
エメリーの隣に座る。
上腕には生々しい傷が残っていた。陛下に向けられた銃弾の爪痕だ。
「身を呈して、陛下をよく守ってくれた」
「どーいたしましてー。陛下が居なくなったら、お前がどうなるか解らないからな」
傷口をガーゼで覆う。
「ラテから聞いた。レイナも命懸けで殿下を守ろうとしたんだろ?
無茶してくれるぜ。無事で良かったよな、お互い」
「ああ」
白い布を巻いていく。柔らかいのに、表面はざらついている。
グラグラと肩が揺れた。笑っている。
「なんだ?」
「気持ちイイ。レイナの手、冷たくって」
「笑うな。包帯がずれる」
「ハイハイ。そういや、もうすぐだな、ご主人様選び。相談に乗ってやってもいいぜ?」
「これは、私の問題だ」
「俺の問題でもあるんだよねー、これが」
「どうして」
「もし、お前が殿下を選んだ場合、陛下は俺を側に就けたいんだってさ」
「お前を? ホワイトではなく?」
「俺もそう言ったんだけどねー。俺のほうが陛下のお口に合うんだと。
あー、ラテには言うなよ? あいつ、ガチ泣く。てゆうか俺、恨み買うの決定」
「私が、陛下のお側を選んだら?」
「今と同じ。俺はお前の下。で、ラテ辺りが殿下のお側に就くんじゃねえの?」
包帯が巻き終わる。
「成程。ではお前は私に、殿下に就くように、アドバイスしに来たというわけか」
はー、と盛大に溜め息を吐かれた。
「レイナ閣下は、こんなんで、よく王様の側近が務まるなあ」
「どういう…」
「ホントに夜這いしてやんねーと解らないのかよ、レイナ」
左腕で肩を押された。私の上半身がベッドに倒される。
「前にも言ったろ? 俺はお前の下じゃなきゃダメなんだよ」
「なら、上官を見下ろすな。退け」
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アイヴィー様方と一夜を過ごした翌日、私は国に戻ってきた。
肴に土産話を聞かせろ、と陛下に言われるかと思ったが、その夜はエメリーを側に付けていた。
その次の夜も、私は呼ばれなかった。
一人にされた私は自分の部屋で、机に伏していた。カーテンが閉まっていない。
窓硝子の向こうは暗闇。光が見えない。
「レイナー。ああ、居た居た」
寝巻姿のエメリーが私の部屋に来た。
相変わらず、夜中だというのに気軽に訪れてくれる。
「何しに来た」
「ん? 夜這い」
言いながらククッと笑う。
「エメリー、用事がないなら来るなと言って…」
「そうカリカリすんなって。お前、ほんっと余裕ないなあ、最近」
私は黙った。包帯セットを見せられる。
「コレ、巻いてくんねーかなと思ってさ」
自分で巻け、という言葉を私は飲み込んだ。奴は利き腕の上部を負傷しているのだ。
「メイスン医師に頼めば良いだろう」
「嫌だね。あいつ、ペタペタ触ってくるし」
王室は専属の医師団を抱えている。メイスン医師は我々のような武官の担当だ。私達と同年代で医師団最年少の鬼才。
男性なのだが、趣向や話し方がユニーク、というか少々女性的で、実は私も得意な相手ではない。
包帯セットを押し付けられる。
「シャワー入ったからさ、新しい包帯に取り換えたいわけ。イイだろ? そのくらい」
茶髪はまだ濡れていた。艶やかに光っている。シャワー上がりの清潔な匂い。
エメリーは私のベッドに座り、寝巻の上をスポッと脱いだ。
普段は軍服で覆われている、華奢な上半身が晒される。ラインは細いが武官らしい身体つきだ。
奴がニヤリと笑う。
「バカ。んな見つめんなよ」
エメリーの隣に座る。
上腕には生々しい傷が残っていた。陛下に向けられた銃弾の爪痕だ。
「身を呈して、陛下をよく守ってくれた」
「どーいたしましてー。陛下が居なくなったら、お前がどうなるか解らないからな」
傷口をガーゼで覆う。
「ラテから聞いた。レイナも命懸けで殿下を守ろうとしたんだろ?
無茶してくれるぜ。無事で良かったよな、お互い」
「ああ」
白い布を巻いていく。柔らかいのに、表面はざらついている。
グラグラと肩が揺れた。笑っている。
「なんだ?」
「気持ちイイ。レイナの手、冷たくって」
「笑うな。包帯がずれる」
「ハイハイ。そういや、もうすぐだな、ご主人様選び。相談に乗ってやってもいいぜ?」
「これは、私の問題だ」
「俺の問題でもあるんだよねー、これが」
「どうして」
「もし、お前が殿下を選んだ場合、陛下は俺を側に就けたいんだってさ」
「お前を? ホワイトではなく?」
「俺もそう言ったんだけどねー。俺のほうが陛下のお口に合うんだと。
あー、ラテには言うなよ? あいつ、ガチ泣く。てゆうか俺、恨み買うの決定」
「私が、陛下のお側を選んだら?」
「今と同じ。俺はお前の下。で、ラテ辺りが殿下のお側に就くんじゃねえの?」
包帯が巻き終わる。
「成程。ではお前は私に、殿下に就くように、アドバイスしに来たというわけか」
はー、と盛大に溜め息を吐かれた。
「レイナ閣下は、こんなんで、よく王様の側近が務まるなあ」
「どういう…」
「ホントに夜這いしてやんねーと解らないのかよ、レイナ」
左腕で肩を押された。私の上半身がベッドに倒される。
「前にも言ったろ? 俺はお前の下じゃなきゃダメなんだよ」
「なら、上官を見下ろすな。退け」
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