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■テオ四歳
■背景:かいぞくごっこ
四歳児はぷにぷにの頬を両手で支えている。
うーん、などと言いながら、物思いな溜め息を吐いていた。
海運王メネシス家に生まれ、後に当主となるテオ・メネシス。
普段は明るい子なのだが、今日はアンニュイなご様子。
世話係の青年は小さな主人に尋ねた。
「テオ様、何かお悩みですか?」
「うん。こまってるんだー」
「何です?」
「おおきくなったら、なにになろっかなーって、まよってるの」
「大きく、なったらですか?」
「てお、けーきやさんがいいかなー? そしたら、まいにち、けーき、たべられるよね!」
「そう、かもしれませんね」
でもなー、とテオは首を傾げる。
「てお、おえかき、じょーずだから、おえかきやさんもいいしー。
おうたもじょーずだから、おうたやさんもいいしー」
テオの姉は弟の行動を何でも褒めていた。また、家人も可愛い盛りのテオには甘い。
絵を描けば「お絵描きがお上手」、歌を歌えば「お歌がお上手」と讃えていた。
「あとね、てお、おふねもすきだから、かいぞくもいいなー。
ねえ、ぜのは、てお、なにがいいとおもうー?」
世話係は自らの腕を抱く。
「それは、困りますね」
「うん。ておもね、こまってるんだー。まよっちゃうよね。
あ、でもね、いっこは、きまってるよ!」
「何ですか?」
「てお、おおきくなったら、あねうえのおよめさんになるの!
およめさんと、けーきやさん、いっしょになれるよね? だいじょぶだよね?」
「テオ様は、お姉様のお嫁さんにはなれませんよ」
「えっ! てお、あねうえ、あいちてるよ!?」
「お嫁さんになれるのは女性です。テオ様は男性ですからお婿さんですよ…なれるとしても」
「そっか。まちがっちゃった。じゃあ、おむこさんになるー!
でね、『いつまでも、しあわせにくらしましたとさ、めでたしめでたし』になるのー!」
「テオ様」
「なーに?」
「いえ。そろそろシエスタの時間ですね。今日の絵本は何にしましょうか?」
「んー。あ、あれ。おはなの、おひめさまのおはなし!」
「親指姫ですね、畏まりました」
世界中の童話が揃った本棚から、ひとつの背表紙に指を伸ばす。
世話係は絵本を持ち、もう片方の手を主人に差し出す。
「ではベッドに参りましょう」
「うんっ」
小さな手を握った。
fin
■背景:かいぞくごっこ
四歳児はぷにぷにの頬を両手で支えている。
うーん、などと言いながら、物思いな溜め息を吐いていた。
海運王メネシス家に生まれ、後に当主となるテオ・メネシス。
普段は明るい子なのだが、今日はアンニュイなご様子。
世話係の青年は小さな主人に尋ねた。
「テオ様、何かお悩みですか?」
「うん。こまってるんだー」
「何です?」
「おおきくなったら、なにになろっかなーって、まよってるの」
「大きく、なったらですか?」
「てお、けーきやさんがいいかなー? そしたら、まいにち、けーき、たべられるよね!」
「そう、かもしれませんね」
でもなー、とテオは首を傾げる。
「てお、おえかき、じょーずだから、おえかきやさんもいいしー。
おうたもじょーずだから、おうたやさんもいいしー」
テオの姉は弟の行動を何でも褒めていた。また、家人も可愛い盛りのテオには甘い。
絵を描けば「お絵描きがお上手」、歌を歌えば「お歌がお上手」と讃えていた。
「あとね、てお、おふねもすきだから、かいぞくもいいなー。
ねえ、ぜのは、てお、なにがいいとおもうー?」
世話係は自らの腕を抱く。
「それは、困りますね」
「うん。ておもね、こまってるんだー。まよっちゃうよね。
あ、でもね、いっこは、きまってるよ!」
「何ですか?」
「てお、おおきくなったら、あねうえのおよめさんになるの!
およめさんと、けーきやさん、いっしょになれるよね? だいじょぶだよね?」
「テオ様は、お姉様のお嫁さんにはなれませんよ」
「えっ! てお、あねうえ、あいちてるよ!?」
「お嫁さんになれるのは女性です。テオ様は男性ですからお婿さんですよ…なれるとしても」
「そっか。まちがっちゃった。じゃあ、おむこさんになるー!
でね、『いつまでも、しあわせにくらしましたとさ、めでたしめでたし』になるのー!」
「テオ様」
「なーに?」
「いえ。そろそろシエスタの時間ですね。今日の絵本は何にしましょうか?」
「んー。あ、あれ。おはなの、おひめさまのおはなし!」
「親指姫ですね、畏まりました」
世界中の童話が揃った本棚から、ひとつの背表紙に指を伸ばす。
世話係は絵本を持ち、もう片方の手を主人に差し出す。
「ではベッドに参りましょう」
「うんっ」
小さな手を握った。
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