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■追加ストーリー後日談(ネタバレ含)
■シハル姉さんとのコラボ作品
write
【Party】:シハル姉さん
【Crown】:呉羽
【PAINT】:シハル姉さん
【Party】
ユウタの開催したパーティが終わり夜も更けてきた頃、興奮のため眠りにつけない者たちが集まっていた。
「すっごいよなー。ジョシュアってマジで『王の生まれ変わり』だったんだぜ。」
「本当、本当。すごいよねー。」
興奮さめやらぬ様子で語るレッドと同じく興奮状態で相槌を打つユウタ。
「でも、僕が一番驚いたのはジョシュアよりもハルヤのお祖父様ですよ。
お祖父様が『王の生まれ変わり』で彼の孫であるハルヤもこの学院に来ていて
次の王であるジョシュアに出会ったなんて不思議な縁ですよね。」
「うん。それは俺も本当にびっくりした。祖父さまは王だったって言うし、ジョシュアとは同じ寮になるし。
本当、すごくびっくりしたよ。」
「だよなー。俺だってジイさんから何も聞いてなかったし。」
「実はさ、俺達がここで出会ったのは最初から決められて、そのことに気がつかなかっただけなのかもね。」
「どうだろうな。けど、王であるジョシュアに惹かれてやってきた、っていう説だったら当たってるかもな。」
ユウタの呟きにレッドが便乗する。
「確かに、それはあるよね。多分、ジョシュアがいたから俺達こうして同じ場所に集まったんだと思う。」
「では今夜はこの不思議な集まりと王の生まれ変わりに出会えたことを祝してミニパーティでもやりましょうか。」
「ミニパーティ?」
「いいじゃん!それ。」
「うん。俺も賛成。」
不思議そうな顔のユウタと賛成意見のレッドとハルヤ。
「普段のパーティより随分小さいですけど、お菓子などを持ち寄って騒ぐんですよ。眠れない夜はこれに限ります!」
「シェフが起きていれば何か頼んだり、バトラーに飲み物を頼んだりしてサロンで騒ぐこともあるし、誰かの部屋で騒ぐこともあるよ。」
シルヴァンとハルヤがユウタのために説明する。
「そうなんだ・・・。じゃあ、今日はこのサロンでやろうよ!」
「いいじゃん。サロンのが広いしな。」
「じゃあ僕はバトラーに言って飲み物をもらってきますね。」
言ってサロンを出て行くシルヴァン。
「ここに飾ってある絵ってパーティの絵なんだよね。皆すっごい楽しそうでさ、俺好きなんだよね。この絵。」
ユウタが壁に飾ってある複数の絵を見て言う。
「今日のパーティも楽しかったよ、ユウタ。」
「ホント。お前もこれで立派なマージナルプリンスだな。」
「そうかな。へへっ。あ!じゃあさ、シルヴァンが戻ってきたらこのミニパーティの様子を絵に残そうよ!俺、残したいんだ。」
「うん。いいんじゃない?ね、レッド。」
「もちろん!あーなんか、俺も何かに残しておきたい気がしてきた。」
今日のパーティの様子、この身で体験した不思議な出来事。
それをどういった形であれとにかく残しておきたいというのは皆同じであった。
「じゃあ俺、部屋からキャンパスと絵の具持ってくる!」サロンを出て行くユウタ。
「お待たせしましたー!」
飲み物を持って現れたシルヴァン。
「ごめん、シルヴァン。すぐ戻るから!」
「どうしたんですか?ユウタは。」
「絵を描きたいから道具を持ってくるってさ。」
「そうなんですか。楽しみですね!ユウタの絵。」
「そうだ!俺もジイさんみたく映画としてフィルムに残してやる。」フィルムにってことは俺達も何かやるの?」
「もちろん!」
「わあ、楽しみです。」
「それにしても、さすがレッド。血は争えないってことだね。おじいさんと同じことをやろうとするなんてさ。」
「ま、あんなすごいもん見ちまったら誰だってあれを形として残したいって思うだろ。
俺とジイさんはそれがたまたま同じ形だったってだけだよ。」
レッドの祖父もまた『王の生まれ変わり』に出会い、先程レッド達が体験したのと同じものを体験し、フィルムに残したのだ。
「お待たせー!持ってきたよ。」
「あ、お帰り。」
「ただいま、ハルヤ。それじゃ、皆グラス持って。」
言われるままに3人はグラスを持つ。
ユウタは真っ白なキャンパスに彩(いろ)を載せ始める。
下書きはなく、そのまま描く。オレンジ、ピンク、紫、緑、様々な色を使い描いていくユウタ。
そしてしばらく後、絵は出来上がった。
「できたー!!」
「どれどれ。」
絵を覗き込むレッド。
キャンパスに描かれていたのはグラスを持って楽しそうに微笑む3人の姿だった。
このミニパーティがどれほど楽しいものなのかが一目で分かる作品に仕上がった。
「すごいじゃん、ユウタ。」
「ユウタは絵がお上手ですね。」
ハルヤとシルヴァンの賛辞を受け、ユウタは照れくさそうに微笑む。
「ユウタ、お前すげぇよ。俺イメージ湧いてきた!部屋戻って台本書いてくる!また明日な!」
バタバタと自分の部屋へ戻るレッド。
「行っちゃった・・・。」
「レッドの台本、楽しみですね。」
「え、レッドが台本書くの?」
「うん。何か、今日のことをフィルムに残したいとか言ってた。」
「うわー!楽しみだな~!!あのアルフレッド・ヴィスコンティの台本か~。」
とそこへ時計の鐘が鳴る。
見ればもう普段であれば当に寝ている時間帯だった。
「もう夜も遅いですし、そろそろ部屋に戻って休みましょうか。」
「そうだね。」
3人は部屋に戻り、それぞれ床(とこ)についた。
明くる朝、サロンには一枚の絵が追加されていた。
昨晩ユウタが描いた絵だ。
一方、レッドの台本はというと・・・こちらも完成して第一稿を皆で回して読むことになった。
タイトルは「PAINT」王とその仲間達の物語である。
後にこの絵とフィルムは学院の宝として大切に保管され、後輩達に語り継がれていった。
【Crown】
「ちょっと、いいかな」
ジョシュアが人の部屋を訪ねるにしては、少し遅い時刻だった。
どんな用事か察したアンリは、追い返すことなく、彼を中に通した。
机にはタロットカードと、読み掛けだったらしい一冊の本が置かれていた。
アンリは「セイロンで良いよね?」と言って紅茶の用意を始めた。
待つ間、ジョシュアは窓際に立っていた。
宵闇には細い月が見えた。月齢一日目。新月は終わったのだ。
「無事に帰れたかな、三人とも」
その背中を見て、アンリは溜め息を吐いた。
「君、他に思うことないの?」
「えっ?」
ジョシュアが振り向く。アンリはティーポットを傾ける。
「帰れたんじゃない? 君に泣きついて来ないんだし」
テーブルにセイロンで満たされたカップが二つ並ぶ。
ジョシュアは、ありがとう、と言って窓辺からソファに向かった。
昨日、三人の男がジョシュアの前に現れ、「貴方が王の生まれ変わり」だと告げられた。
ジョシュアに伝えるべき言葉を伝え、彼等は帰っていった。ここではない、別の世界に。
ジョシュアのソーサーがカチャリと鳴る。
「不思議な、体験だったよね」
アンリは自分のカップに赤いジャムを入れていた。金色の匙で攪拌しながら「そう?」と異論を唱える。
「僕はもう今更何が出てきても驚かなくなってしまったな。
ここに初めて来た時から、可笑しなもの被ってる人に会ってるし」
そう言って、ジョシュアの額を見上げる。
彼の瞳には映っているという『月桂樹の王冠』を見ているのだろう。
「でも、今回のことで、どうして君がそんなもの被ってるのか、その理由らしいものは解ったね?」
「俺が、王の生まれ変わりだから、なのかな」
「多分ね」
「そう言えば、彼等は、サン・ジェルマン伯爵のことも知ってるみたいだったね?」
「うん。伯爵とあの三人の祖先が顔見知りになっても不思議じゃないから」
「どうして?」
「新約聖書『マタイによる福音書』には、
生まれたばかりのイエスを『ユダヤの王』だと崇める占星術師が三人登場する。これが東方の三博士。
彼等の名前はギリシア語では、ガルガラト、マガラト、ダマスクスだけど。
ラテン語では、ガスパル、バルタザル、メルヒオルだ。代々、その名を受け継ぐ部族なんじゃないの? 知らないけど」
ジョシュアは赤い瞳をぱちくりさせている。アンリは冷静な口調で続けた。
「伯爵は『キリストとも友人』だとか言ってる人だからね。三博士とも知り合ってる可能性はないとは言えない」
ジョシュアは困った顔で苦笑した。
「なんだか、スケールが壮大だね。俺、夢でも見てたのかなと思えてくるよ」
「王冠被ってる人に不思議だとか夢みたいだとか言われたくない」
アンリは席を立って、机に向かった。手に取ったのはタロットカード。
カードを撫でるように、ベッドの上に散らした。
「ジョシュア。引いてみて、一枚。どれでもいいから」
「えっ。アンリ、占いしてくれるのかい?」
正式な占い方は知らないから、と言ってアンリは今まで人に頼まれても占いをしてこなかった。
「占いじゃないよ。ただ、君が引いたカードの意味を、僕が教えてあげるだけ」
「それは…」
占いって言うんじゃないか、そう言おうとすると、
「僕の気が変わるまで、あと5秒。4、3…」
カウントダウンが始まってしまったので、ジョシュアは慌てて一枚選んだ。
描かれていたのは葉でできた輪の中に一人の人間が居る絵。ナンバーは21。
カードの名前はフランス語で書いてある。アンリはカードを見て、微笑した。
「さすがだね。君なら、それを選び出しそうな気がした」
ジョシュアの手からカードを抜き取る。
「Le Monde(ル・モンド)、大アルカナ最後の、最高のカード『世界』だ」
アンリはベッドにカードを置く。
「この、人間を囲んでいる葉、何の葉だと思う?」
ジョシュアは、はっとする。
「月桂樹、なのかい?」
アンリは頷いた。白い指がカードを丸くなぞる。
「葉のリングは輪廻転生を意味してる」
「輪廻、転生…」
「終わりじゃない。これから始まるんだ」
人差し指はカードから離れ、ジョシュアの額に触れた。
「君が創る、新しい『世界』がね」
【PAINT】
月桂樹の森に佇む一人の青年。
彼の名はジョシュア・グラント。王の生まれ変わりである。
彼は全てのものに愛されている。森へ訪れれば木々が、風が、小鳥がざわめいて歓迎する。
彼は小鳥達と共に歌を歌い始める。
その歌に惹かれるようにやってきた一人の男。
ジョシュアの友人であり、彼に仕える占い師でもあるアンリ・ユーグ・ド・サンジェルマン。
「やあ、アンリ。」
「何をしているの、こんなところで。」
「小鳥達と一緒に歌を歌っていたんだ。」
アンリは軽く溜め息を吐き、言った。
「占いでは森に近づくと良くないことが起こる、と出ていると教えたはずだけど?」
「ごめん。でもアンリがいつも言っているだろう?」
「何?」
「占いを信じすぎるなって。」
アンリは占い師であるが、自分を占いに頼られることを嫌う。
「それに、ここに居れば君も来るかと思って。」
「・・・。」
憮然とした表情で黙るアンリ。
そんなアンリを見て微笑み、ジョシュアはアンリを連れ城へ戻る。
その頃城では雇われ舞手のハルヤがジョシュアに会いにきたアルフレッドに頼まれ、舞を披露していた。
和服を着て片手に扇を持っている。
彼の視線の先には美しき梅の木。そして落ちてくる花びらを扇で受け止める。
美しい花を切なげな表情で見つめるハルヤ。
舞は静かに始まり、静かに終った。
観客のアルフレッドから感嘆の息が零れる。
「やっぱすげぇな、お前。」
「すごくなんてないよ。これくらいなら踊れる人他にも沢山いるよ?」
「そうか?俺はニッポンのことよく知らねぇけどこんな綺麗に踊れるやつ見たことないぜ。」
「そうかな。ありがとう。」
実際、舞っているときのハルヤはとても美しかった。
強くしなやかに。緩やかな動きの中にある激しさ。
舞うハルヤはいつもの彼からは想像できないほど艶やかで色香を漂わせている。
舞のことなど何も知らないアルフレッドが見ても思わず感嘆の息を漏らしてしまうほどだ。
彼の舞を見て虜にならないものはこの世に存在しないのではないかと思ってしまう。
「なあ、お前さ、もっと大勢の前で踊りたいとか思わないわけ?
こんな小さな城の中で俺やジョシュアに頼まれて踊るだけじゃ物足りないとかないわけ?」
「俺、大勢の前だと緊張するしこのくらいの方がちょうどいいよ。」
「お前って欲がねぇよな。」
「そういうわけじゃないけど、俺はこうして踊っていられるだけで充分幸せなんだよ。」
「ふーん。」
「レッドとも知り合えたしね。」
「ま、そこは同感だな。お前と知り合えたことは幸運だったと思ってるぜ。」
「ありがとう、レッド。」
王の帰りを待つ二人の居る部屋が突然開け放たれた。
大きな音を立てて開けられた扉。この開け方は王でないことは二人共わかっていた。
「ジョシュアー!!大変ですー!!」
「シルヴァン。ジョシュアなら出かけてるぜ。」
シルヴァン・クラーク。王の身辺警護役。要するにボディガードである。
「え?そうなんですか?」
「お前、ボディガードなんだからもっとジョシュアの側についてろよ。」
「でもジョシュアって気がつくと居ないんですよねー。
まあ、ジョシュアにはアンリがついているでしょうし、大丈夫ですよ。」
「よくそれでボディガードやってられるな、お前。」
「この島は平和ですからねー。」
「シルヴァン、それでジョシュアに何か用だったの?」
ハルヤが話を促す。
「あ、そうなんです。大変なんですよ!何と!!絵描きさんが来ているんです!」
「絵描き?」
「はい。ちょっと頼りなさげな人なんですが絵は上手でしたよ。僕、簡単な似顔絵描いてもらっちゃいました♪」
「うわ、マジかよ。」
「二人共落ち着いて。っていうか、その絵描き信用していいの?」
「大丈夫ですよ。僕、人を見る目には自信があるんです。」
「シルヴァン・・・。」
ボディガードがカンで人を信用して良いものか悩むところだがハルヤを連れてきたのもシルヴァンであるためこの場合は信用に値するだろう。
「で、その絵描きは今どこにいるんだよ。」
「あ、忘れるところでした。 ユウタ、入ってきてください。」
開け放たれたままの扉からそっと顔を覗かせたのはハルヤ達と同じくらいの年齢の東洋人だった。
「君、もしかして日本人?」
ユウタを見てハルヤが言う。
「あ、はい。日本から絵の修行のため来ました。ユウタです。」
「お前、絵描きなんだろ?俺のことも描いてくれよ。」
「レッド。ユウタはジョシュアを描くために来たんだって言ってたじゃん。」
「ああ、そっか。悪ぃ。」
「そんな!全然大丈夫です!!ところで、王様はどこに行ったんですか?」
「そういえば、どこに行ったんでしょうね。」
シルヴァンが辺りを見回す。
そこへ、廊下の方から話し声が聞こえてきた。
「帰ってきたみたいだよ。」
「ジョシュアー!遅かったじゃないですか。僕待ちくたびれちゃうところでしたよ。」
「ごめん、どうしても森へ行きたくなってね。」
謝るジョシュアと隣で不機嫌そうな表情のアンリ。
「そうだったんですか。今、ジョシュアにお客様が来てるんですよ。」
「初めまして、ユウタです。あなたの肖像画を描かせてもらうために来ました。」
「え、俺の肖像画?」
「はい。」
「困ったな。あまりそういうのは得意じゃないんだ。」
「一人が苦手だったら二人でも大丈夫です!」
「そうかい?なら、アンリと一緒に描いてもらえるかな。」
「ジョシュア。勝手に僕を巻き込まないでほしいのだけど?」
「ごめん。でもアンリと一緒ならじっとしているのも耐えられると思うんだ。
それに、占い師としては森へ行ったことで良くない事が起きるかどうか確かめないといけないだろう?」
「・・・・・・。」
「それじゃあ、ユウタ。お願いできるかな。」
「はい!」
そうしてジョシュアはアンリと共にユウタによって肖像画として残された。
「ジョシュアとアンリで描いてもらえるんだったら俺らも3人で描いてもらおうぜ。」
「え!?」
「いい案ですね♪」
提案者のアルフレッド、途惑うハルヤ、乗り気のシルヴァン。
「ユウタ、お願いできますか?」
「もちろん!」
中央にハルヤ。向かって右側にシルヴァン。左側にアルフレッド。
ハルヤは両側から肩や腕を組まれている。
かくして城には2枚の肖像画が残された。
1枚は王と占い師、もう1枚は仲睦まじい3人の姿が。
後にこの肖像画は欲しがる者が後を絶たず、とても高価なものとなったが誰の手に渡ることもなかった。
END
■シハル姉さんとのコラボ作品
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【Party】:シハル姉さん
【Crown】:呉羽
【PAINT】:シハル姉さん
【Party】
ユウタの開催したパーティが終わり夜も更けてきた頃、興奮のため眠りにつけない者たちが集まっていた。
「すっごいよなー。ジョシュアってマジで『王の生まれ変わり』だったんだぜ。」
「本当、本当。すごいよねー。」
興奮さめやらぬ様子で語るレッドと同じく興奮状態で相槌を打つユウタ。
「でも、僕が一番驚いたのはジョシュアよりもハルヤのお祖父様ですよ。
お祖父様が『王の生まれ変わり』で彼の孫であるハルヤもこの学院に来ていて
次の王であるジョシュアに出会ったなんて不思議な縁ですよね。」
「うん。それは俺も本当にびっくりした。祖父さまは王だったって言うし、ジョシュアとは同じ寮になるし。
本当、すごくびっくりしたよ。」
「だよなー。俺だってジイさんから何も聞いてなかったし。」
「実はさ、俺達がここで出会ったのは最初から決められて、そのことに気がつかなかっただけなのかもね。」
「どうだろうな。けど、王であるジョシュアに惹かれてやってきた、っていう説だったら当たってるかもな。」
ユウタの呟きにレッドが便乗する。
「確かに、それはあるよね。多分、ジョシュアがいたから俺達こうして同じ場所に集まったんだと思う。」
「では今夜はこの不思議な集まりと王の生まれ変わりに出会えたことを祝してミニパーティでもやりましょうか。」
「ミニパーティ?」
「いいじゃん!それ。」
「うん。俺も賛成。」
不思議そうな顔のユウタと賛成意見のレッドとハルヤ。
「普段のパーティより随分小さいですけど、お菓子などを持ち寄って騒ぐんですよ。眠れない夜はこれに限ります!」
「シェフが起きていれば何か頼んだり、バトラーに飲み物を頼んだりしてサロンで騒ぐこともあるし、誰かの部屋で騒ぐこともあるよ。」
シルヴァンとハルヤがユウタのために説明する。
「そうなんだ・・・。じゃあ、今日はこのサロンでやろうよ!」
「いいじゃん。サロンのが広いしな。」
「じゃあ僕はバトラーに言って飲み物をもらってきますね。」
言ってサロンを出て行くシルヴァン。
「ここに飾ってある絵ってパーティの絵なんだよね。皆すっごい楽しそうでさ、俺好きなんだよね。この絵。」
ユウタが壁に飾ってある複数の絵を見て言う。
「今日のパーティも楽しかったよ、ユウタ。」
「ホント。お前もこれで立派なマージナルプリンスだな。」
「そうかな。へへっ。あ!じゃあさ、シルヴァンが戻ってきたらこのミニパーティの様子を絵に残そうよ!俺、残したいんだ。」
「うん。いいんじゃない?ね、レッド。」
「もちろん!あーなんか、俺も何かに残しておきたい気がしてきた。」
今日のパーティの様子、この身で体験した不思議な出来事。
それをどういった形であれとにかく残しておきたいというのは皆同じであった。
「じゃあ俺、部屋からキャンパスと絵の具持ってくる!」サロンを出て行くユウタ。
「お待たせしましたー!」
飲み物を持って現れたシルヴァン。
「ごめん、シルヴァン。すぐ戻るから!」
「どうしたんですか?ユウタは。」
「絵を描きたいから道具を持ってくるってさ。」
「そうなんですか。楽しみですね!ユウタの絵。」
「そうだ!俺もジイさんみたく映画としてフィルムに残してやる。」フィルムにってことは俺達も何かやるの?」
「もちろん!」
「わあ、楽しみです。」
「それにしても、さすがレッド。血は争えないってことだね。おじいさんと同じことをやろうとするなんてさ。」
「ま、あんなすごいもん見ちまったら誰だってあれを形として残したいって思うだろ。
俺とジイさんはそれがたまたま同じ形だったってだけだよ。」
レッドの祖父もまた『王の生まれ変わり』に出会い、先程レッド達が体験したのと同じものを体験し、フィルムに残したのだ。
「お待たせー!持ってきたよ。」
「あ、お帰り。」
「ただいま、ハルヤ。それじゃ、皆グラス持って。」
言われるままに3人はグラスを持つ。
ユウタは真っ白なキャンパスに彩(いろ)を載せ始める。
下書きはなく、そのまま描く。オレンジ、ピンク、紫、緑、様々な色を使い描いていくユウタ。
そしてしばらく後、絵は出来上がった。
「できたー!!」
「どれどれ。」
絵を覗き込むレッド。
キャンパスに描かれていたのはグラスを持って楽しそうに微笑む3人の姿だった。
このミニパーティがどれほど楽しいものなのかが一目で分かる作品に仕上がった。
「すごいじゃん、ユウタ。」
「ユウタは絵がお上手ですね。」
ハルヤとシルヴァンの賛辞を受け、ユウタは照れくさそうに微笑む。
「ユウタ、お前すげぇよ。俺イメージ湧いてきた!部屋戻って台本書いてくる!また明日な!」
バタバタと自分の部屋へ戻るレッド。
「行っちゃった・・・。」
「レッドの台本、楽しみですね。」
「え、レッドが台本書くの?」
「うん。何か、今日のことをフィルムに残したいとか言ってた。」
「うわー!楽しみだな~!!あのアルフレッド・ヴィスコンティの台本か~。」
とそこへ時計の鐘が鳴る。
見ればもう普段であれば当に寝ている時間帯だった。
「もう夜も遅いですし、そろそろ部屋に戻って休みましょうか。」
「そうだね。」
3人は部屋に戻り、それぞれ床(とこ)についた。
明くる朝、サロンには一枚の絵が追加されていた。
昨晩ユウタが描いた絵だ。
一方、レッドの台本はというと・・・こちらも完成して第一稿を皆で回して読むことになった。
タイトルは「PAINT」王とその仲間達の物語である。
後にこの絵とフィルムは学院の宝として大切に保管され、後輩達に語り継がれていった。
【Crown】
「ちょっと、いいかな」
ジョシュアが人の部屋を訪ねるにしては、少し遅い時刻だった。
どんな用事か察したアンリは、追い返すことなく、彼を中に通した。
机にはタロットカードと、読み掛けだったらしい一冊の本が置かれていた。
アンリは「セイロンで良いよね?」と言って紅茶の用意を始めた。
待つ間、ジョシュアは窓際に立っていた。
宵闇には細い月が見えた。月齢一日目。新月は終わったのだ。
「無事に帰れたかな、三人とも」
その背中を見て、アンリは溜め息を吐いた。
「君、他に思うことないの?」
「えっ?」
ジョシュアが振り向く。アンリはティーポットを傾ける。
「帰れたんじゃない? 君に泣きついて来ないんだし」
テーブルにセイロンで満たされたカップが二つ並ぶ。
ジョシュアは、ありがとう、と言って窓辺からソファに向かった。
昨日、三人の男がジョシュアの前に現れ、「貴方が王の生まれ変わり」だと告げられた。
ジョシュアに伝えるべき言葉を伝え、彼等は帰っていった。ここではない、別の世界に。
ジョシュアのソーサーがカチャリと鳴る。
「不思議な、体験だったよね」
アンリは自分のカップに赤いジャムを入れていた。金色の匙で攪拌しながら「そう?」と異論を唱える。
「僕はもう今更何が出てきても驚かなくなってしまったな。
ここに初めて来た時から、可笑しなもの被ってる人に会ってるし」
そう言って、ジョシュアの額を見上げる。
彼の瞳には映っているという『月桂樹の王冠』を見ているのだろう。
「でも、今回のことで、どうして君がそんなもの被ってるのか、その理由らしいものは解ったね?」
「俺が、王の生まれ変わりだから、なのかな」
「多分ね」
「そう言えば、彼等は、サン・ジェルマン伯爵のことも知ってるみたいだったね?」
「うん。伯爵とあの三人の祖先が顔見知りになっても不思議じゃないから」
「どうして?」
「新約聖書『マタイによる福音書』には、
生まれたばかりのイエスを『ユダヤの王』だと崇める占星術師が三人登場する。これが東方の三博士。
彼等の名前はギリシア語では、ガルガラト、マガラト、ダマスクスだけど。
ラテン語では、ガスパル、バルタザル、メルヒオルだ。代々、その名を受け継ぐ部族なんじゃないの? 知らないけど」
ジョシュアは赤い瞳をぱちくりさせている。アンリは冷静な口調で続けた。
「伯爵は『キリストとも友人』だとか言ってる人だからね。三博士とも知り合ってる可能性はないとは言えない」
ジョシュアは困った顔で苦笑した。
「なんだか、スケールが壮大だね。俺、夢でも見てたのかなと思えてくるよ」
「王冠被ってる人に不思議だとか夢みたいだとか言われたくない」
アンリは席を立って、机に向かった。手に取ったのはタロットカード。
カードを撫でるように、ベッドの上に散らした。
「ジョシュア。引いてみて、一枚。どれでもいいから」
「えっ。アンリ、占いしてくれるのかい?」
正式な占い方は知らないから、と言ってアンリは今まで人に頼まれても占いをしてこなかった。
「占いじゃないよ。ただ、君が引いたカードの意味を、僕が教えてあげるだけ」
「それは…」
占いって言うんじゃないか、そう言おうとすると、
「僕の気が変わるまで、あと5秒。4、3…」
カウントダウンが始まってしまったので、ジョシュアは慌てて一枚選んだ。
描かれていたのは葉でできた輪の中に一人の人間が居る絵。ナンバーは21。
カードの名前はフランス語で書いてある。アンリはカードを見て、微笑した。
「さすがだね。君なら、それを選び出しそうな気がした」
ジョシュアの手からカードを抜き取る。
「Le Monde(ル・モンド)、大アルカナ最後の、最高のカード『世界』だ」
アンリはベッドにカードを置く。
「この、人間を囲んでいる葉、何の葉だと思う?」
ジョシュアは、はっとする。
「月桂樹、なのかい?」
アンリは頷いた。白い指がカードを丸くなぞる。
「葉のリングは輪廻転生を意味してる」
「輪廻、転生…」
「終わりじゃない。これから始まるんだ」
人差し指はカードから離れ、ジョシュアの額に触れた。
「君が創る、新しい『世界』がね」
【PAINT】
月桂樹の森に佇む一人の青年。
彼の名はジョシュア・グラント。王の生まれ変わりである。
彼は全てのものに愛されている。森へ訪れれば木々が、風が、小鳥がざわめいて歓迎する。
彼は小鳥達と共に歌を歌い始める。
その歌に惹かれるようにやってきた一人の男。
ジョシュアの友人であり、彼に仕える占い師でもあるアンリ・ユーグ・ド・サンジェルマン。
「やあ、アンリ。」
「何をしているの、こんなところで。」
「小鳥達と一緒に歌を歌っていたんだ。」
アンリは軽く溜め息を吐き、言った。
「占いでは森に近づくと良くないことが起こる、と出ていると教えたはずだけど?」
「ごめん。でもアンリがいつも言っているだろう?」
「何?」
「占いを信じすぎるなって。」
アンリは占い師であるが、自分を占いに頼られることを嫌う。
「それに、ここに居れば君も来るかと思って。」
「・・・。」
憮然とした表情で黙るアンリ。
そんなアンリを見て微笑み、ジョシュアはアンリを連れ城へ戻る。
その頃城では雇われ舞手のハルヤがジョシュアに会いにきたアルフレッドに頼まれ、舞を披露していた。
和服を着て片手に扇を持っている。
彼の視線の先には美しき梅の木。そして落ちてくる花びらを扇で受け止める。
美しい花を切なげな表情で見つめるハルヤ。
舞は静かに始まり、静かに終った。
観客のアルフレッドから感嘆の息が零れる。
「やっぱすげぇな、お前。」
「すごくなんてないよ。これくらいなら踊れる人他にも沢山いるよ?」
「そうか?俺はニッポンのことよく知らねぇけどこんな綺麗に踊れるやつ見たことないぜ。」
「そうかな。ありがとう。」
実際、舞っているときのハルヤはとても美しかった。
強くしなやかに。緩やかな動きの中にある激しさ。
舞うハルヤはいつもの彼からは想像できないほど艶やかで色香を漂わせている。
舞のことなど何も知らないアルフレッドが見ても思わず感嘆の息を漏らしてしまうほどだ。
彼の舞を見て虜にならないものはこの世に存在しないのではないかと思ってしまう。
「なあ、お前さ、もっと大勢の前で踊りたいとか思わないわけ?
こんな小さな城の中で俺やジョシュアに頼まれて踊るだけじゃ物足りないとかないわけ?」
「俺、大勢の前だと緊張するしこのくらいの方がちょうどいいよ。」
「お前って欲がねぇよな。」
「そういうわけじゃないけど、俺はこうして踊っていられるだけで充分幸せなんだよ。」
「ふーん。」
「レッドとも知り合えたしね。」
「ま、そこは同感だな。お前と知り合えたことは幸運だったと思ってるぜ。」
「ありがとう、レッド。」
王の帰りを待つ二人の居る部屋が突然開け放たれた。
大きな音を立てて開けられた扉。この開け方は王でないことは二人共わかっていた。
「ジョシュアー!!大変ですー!!」
「シルヴァン。ジョシュアなら出かけてるぜ。」
シルヴァン・クラーク。王の身辺警護役。要するにボディガードである。
「え?そうなんですか?」
「お前、ボディガードなんだからもっとジョシュアの側についてろよ。」
「でもジョシュアって気がつくと居ないんですよねー。
まあ、ジョシュアにはアンリがついているでしょうし、大丈夫ですよ。」
「よくそれでボディガードやってられるな、お前。」
「この島は平和ですからねー。」
「シルヴァン、それでジョシュアに何か用だったの?」
ハルヤが話を促す。
「あ、そうなんです。大変なんですよ!何と!!絵描きさんが来ているんです!」
「絵描き?」
「はい。ちょっと頼りなさげな人なんですが絵は上手でしたよ。僕、簡単な似顔絵描いてもらっちゃいました♪」
「うわ、マジかよ。」
「二人共落ち着いて。っていうか、その絵描き信用していいの?」
「大丈夫ですよ。僕、人を見る目には自信があるんです。」
「シルヴァン・・・。」
ボディガードがカンで人を信用して良いものか悩むところだがハルヤを連れてきたのもシルヴァンであるためこの場合は信用に値するだろう。
「で、その絵描きは今どこにいるんだよ。」
「あ、忘れるところでした。 ユウタ、入ってきてください。」
開け放たれたままの扉からそっと顔を覗かせたのはハルヤ達と同じくらいの年齢の東洋人だった。
「君、もしかして日本人?」
ユウタを見てハルヤが言う。
「あ、はい。日本から絵の修行のため来ました。ユウタです。」
「お前、絵描きなんだろ?俺のことも描いてくれよ。」
「レッド。ユウタはジョシュアを描くために来たんだって言ってたじゃん。」
「ああ、そっか。悪ぃ。」
「そんな!全然大丈夫です!!ところで、王様はどこに行ったんですか?」
「そういえば、どこに行ったんでしょうね。」
シルヴァンが辺りを見回す。
そこへ、廊下の方から話し声が聞こえてきた。
「帰ってきたみたいだよ。」
「ジョシュアー!遅かったじゃないですか。僕待ちくたびれちゃうところでしたよ。」
「ごめん、どうしても森へ行きたくなってね。」
謝るジョシュアと隣で不機嫌そうな表情のアンリ。
「そうだったんですか。今、ジョシュアにお客様が来てるんですよ。」
「初めまして、ユウタです。あなたの肖像画を描かせてもらうために来ました。」
「え、俺の肖像画?」
「はい。」
「困ったな。あまりそういうのは得意じゃないんだ。」
「一人が苦手だったら二人でも大丈夫です!」
「そうかい?なら、アンリと一緒に描いてもらえるかな。」
「ジョシュア。勝手に僕を巻き込まないでほしいのだけど?」
「ごめん。でもアンリと一緒ならじっとしているのも耐えられると思うんだ。
それに、占い師としては森へ行ったことで良くない事が起きるかどうか確かめないといけないだろう?」
「・・・・・・。」
「それじゃあ、ユウタ。お願いできるかな。」
「はい!」
そうしてジョシュアはアンリと共にユウタによって肖像画として残された。
「ジョシュアとアンリで描いてもらえるんだったら俺らも3人で描いてもらおうぜ。」
「え!?」
「いい案ですね♪」
提案者のアルフレッド、途惑うハルヤ、乗り気のシルヴァン。
「ユウタ、お願いできますか?」
「もちろん!」
中央にハルヤ。向かって右側にシルヴァン。左側にアルフレッド。
ハルヤは両側から肩や腕を組まれている。
かくして城には2枚の肖像画が残された。
1枚は王と占い師、もう1枚は仲睦まじい3人の姿が。
後にこの肖像画は欲しがる者が後を絶たず、とても高価なものとなったが誰の手に渡ることもなかった。
END
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