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Marginal Prince Short Story
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■ディーノ×アンリ
■追加シナリオクリア推奨
待ち合わせ場所は聖アルフォンソ島のとあるカフェ。
アンリが着いた時、髭面の男は苦い顔でコーヒーを飲んでいた。

「ここのエスプレッソ、まじぃ」

シュガーポットを引き寄せて、たっぷり二杯入れた。
あの茶色の液体は今チョコレートに似た味がするのだろう。
アンリはテーブルに近付いた。

「無事に侵入できたようだね? ディーノ」

「当たり前だろ。生徒の物に、警備のチェックは入らねえからな」

「事前に君の船を僕の所有物として登録しておく。それに乗って君が来る」

「チョロいモンだぜ」

「ほんと。こんなカンタンに侵入させるなんて。この島の警備組織は極めて優秀だね」

「俺様とお前が組めば敵ナシだな。次は、いっちょ、世界征服でも企んでみっか?」

「それは僕の気が向いたらね」

「ゴーサイン待ってるぜ、お姫様」

へへへ、とマフィアが薄汚く笑う。

今日二人が島で会うことにした理由は、ビジネスパートナー同士の『会議』の為である。
アンリは電話で充分だと言ったのだが、
「愛やビジネスについて話す時は顔を合わせないとな」というマフィアの主張により、こうなったのだ。

「さあ、移動するよ」

「へいへい。仰せのままに、お姫様」

マフィアはエスプレッソを一気飲みし、「やっぱ、まじぃ」と呟き、水を流し込んだ。


二人は人通りの少ない裏道を歩いていく。
周りに人が居ないのをいいことに、マフィアはアンリの肩に腕を回した。腰を屈めて無駄に耳元で囁く。

「今日はどこのベッドで密会するんだ?」

「くっつくな」

腕を払う。道を曲がると、向こうに単細胞とお調子者の顔が見えた。アルフレッドとシルヴァンだ。
翻って、マフィアを押し戻そうとする。

「おっと。お前から抱き付いて来るとはな?」

一瞬のうちに背に腕を回されていた。

「我慢できなくなっちまったか? 素直になってきたな、お姫様?」

アンリは胸板を押して距離を取る。

「同じ寮の生徒が居たから少し待って、と言いたかったの」

「お前のオトコかあ? なら、そのツラ拝ませて貰わねえとな」

ひょいと顔を出す。通りの向こうには、アンリと同い年くらいのガキが二人。
片方の眩しい笑顔には見覚えがあった。

「お、おい。あれ、コリンじゃねえのか!?」

「そうだけど?」

マフィアが言っている『コリン』とは、アルフレッドが5歳の時に主演したドラマ『わんぱくコリンといたずらジミー』のことだろう。
本人でさえ「子供と動物で泣かせようってドラマさ」と言っている作品だが、
主役の演技力はその嫌らしい企画を大成功に導き、世界中のファンに愛された作品だ。

あそこを歩いているのがコリン本人だと、アンリが肯定すると、
マフィアは興奮して、スターを発見したミーハーなファンと化した。

「俺、泣いた! あのドラマ、すげー泣いた!」

「君…ホームドラマで泣くの?」

この強面がテレビの前でおんおん涙を零している姿を思い描く。
おそらく父親も隣で泣いていたのではないだろうか。

仕事では血も涙もない残虐な顔を持つくせに。
泣かせるドラマには激弱なマフィアの親子が意外と容易に想像できて、アンリはぐったりした。
命を預ける相手を間違えただろうかと時々真剣に思い悩む。

「おい、アンリ!」

マフィアに両肩を掴まれる。アンリは顔を歪めた。

「痛っ…」

ドスの聞いた声でマフィアが脅す。

「コリンからサイン貰ってこいや」

「僕が? アルフレッドの?」

「あれ、本物なんだろ? 同じガッコに居んだろ? サイン貰ってこいや。『ディーノさんへ』って名前入りで!」

「冗談じゃない。お断りだね」

「じゃあ俺達、もう終わりだな」

「そんなことで?」

fin
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