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Marginal Prince Short Story
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■アイヴィー5年前
囚われ人2 続編
遅いお仕事帰り。お外は当然真っ暗だ。
年中温暖な気候だとかで、夜中でもそんなに寒くはない。

晩メシを食いに旧市街に寄った。料理ができない男の日課だ。
島に来て、まだ日が浅いので、初めての店に入ってみるのが、ちょっと楽しみ。
適度に猥雑な街並みをブラブラ歩いていると、変わったドアを見つけた。

上半分がステンドグラス、下は木で出来たドア。
傍らに立て掛けてある縦型のブラックボードには、
チョークでビールや料理のメニューが書かれてる。
店の全体の外観はログハウス調。内装も焦茶色っぽいかんじなんだろうと想像が付いた。

全体的に気に入って今日はココで食べて行くことにした。
『OPEN』と彫られたプレートがドアに引っ掛けてある。
ドアを開けるとイイかんじに、カランコロンカラーンとベルが鳴った。

「いらっしゃいませー」

お兄さんが明るい声で迎えてくれた。
赤みがかった髪、ちょこっと後ろで結んでる。年は俺より下、二十歳前後、かな。

俺の好きなビールメーカーのTシャツに腰巻きエプロン。
黒地に白字でビールのロゴ。シンプルでイイ。
あのTシャツ欲しいなあ、なんて見てたら、目が合った。

途端に若いお兄さんは、大きな目をパチパチした。

「マイク? いつ戻って……」

えと。マイクって、どちらさん?


店内の薄汚れた壁は、ビールのポスターや看板が貼り巡らされ、
天井には三角のフラッグが、ぶら下がってる。俺の好きなアイルランドパブ式の酒場だ。

席に付いた俺は早速、ポケットから煙草を取り出す。
テーブルの隅にあった灰皿の三段タワーから、頂上をいっこ取る。
毒の煙が身体に回り、人心地が付いた。今日もお仕事お疲れ様、俺。

「さっきはスミマセン」

料理を持った店員さんが俺の席に来た。俺を誰かと人違いしちゃった、赤毛のお兄さんだ。
そんな頭下げられることじゃないので、「あー、もう全然気にしてないよ?」と返した。
ま、確かにビックリはしたけど。

「あの、初めてのお客さん、ですよね?」

「うん。島に来たばっかなんだ」

「そっか。そうだよね」

赤毛のお兄さんは、ちょっと俯いた。
左腕にジャラジャラとブレスレットが巻かれているのが見えた。

「あ、コレ、サービスです。良かったら食べて下さい」

持ってた皿をテーブルに乗せる。ナチョスだ。

「え、サービスって……貰っちゃってイイの?」

「はい。さっき驚かせちゃったお詫びです。マスターにはナイショだけど」

「マジで。じゃあ、なんか悪ぃけど、ありがたく頂くわ。丁度、腹減ってたんだ」

「良かった。じゃあ、どうぞごゆっくり」

見た目は、トルティーヤチップスがはみ出したグラタン。
三角のチップとグリンピースとクリーム色の豆がサルサソースと混ざってる。
それにチーズを掛けて焼いた物だ。パセリが振ってあってキレイなかんじ。

焼いたチップから、香ばしいトウモロコシの匂い。
チップは安くて薄べったいのじゃなくて、厚みのあるちょっとリッチなタイプだ。
端の焦げてるトコが苦くてウマかった。


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