×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
■アイヴィー4年前
■囚われ人12 続編
「今日のお客さんはジョシュアか」
きっと今日も一人で待っているのだろうと思い込んでたから、俺は少し驚いた。
「こんにちは、アイヴィー」
愛想良く挨拶をするジョシュアの横に、連れが居た。
それも、この前入学してきた、無愛想な美少年だ。
二人を後部座席に乗せて、俺は運転席に入る。
バックミラーに二人のガキが映っている。ちっこい方は窓の外を見ていた。俺は赤い瞳と目が合う。
「どちらまで?」
「あちこち見て回りたいんですけど、良いですか? アンリにこの島を案内したいんです」
「そりゃあ、もちろん」
「ありがとうございます。それじゃ、最初は植物園へ」
「あいよ」
俺が運転中、ジョシュアはアンリに植物園の見所を説明していた。
だが、はっきり言って説明下手だ。話すこと自体に慣れていないかんじ。
緊張しているようにも見える。先月会ったばかりだし、まだそんなに親しくないのだろう。
アンリは大した相槌も打たず、迷惑そうな顔をして聞いていた。
「あとは、えっと。あっ、クジャクが放し飼いになってるんだ。アンリ、クジャクは好き?」
美少年の眉間に皺が寄る。
「……別に。好きでも嫌いでもないけれど」
「そ、そっか。ごめんね」
その日も無事に一日のお仕事が終わった。
家に着くと、郵便物が幾つか来てた。
お仕事関係の封筒に交じって、ポストカードがあった。もう見慣れた文字。
ピコだ。どうせまた旅の自慢話なのだろう。
まとめてデスクに置き、PCとラジオのスイッチを入れる。
チューニングは合わせてある。一日中、音楽番組をやってる局だ。
背中でボサノヴァを聞きながら、アイスコーヒーを作る。
茶色い粉をグラスに入れて、ミネラルウォーターをちょこっと注ぐ。
マドラーで掻き混ぜ、茶色い原液が出来てから、残りの水を入れて、軽く混ぜる。
溶け残りの粉が水面に少し浮いてるくらいが美味しい、という思い込みだ。
氷を入れた後、グラスに口を付けながらPCの前に座る。
メールチェックをすると、理事会から来ていた。タイトルは、【重要】入学希望者について。
先月、あの美少年が入ってきたばっかなのに。ご盛況なことだ。
「今度はどんな奴が入ってくんのよ」
添付ファイルを開けると、入学希望者の資料が書かれていた。
「へえ。ドイツ軍人の家柄か、なんかクロイツに似てんなあ、こいつ」
メールチェックが終わった。次はアナログメールの確認だ。
ポストカードを手に取る。映っているのは海。左側には海に面した島。
島には街の灯りが見え、海はピンクとオレンジが溶け合った夕焼け色。手前には小さな船が浮かんでいる。
カードを表に返して、短いメッセージに目を移す。
「それでは、次のリクエストです」
ラジオの声に肩が跳ねる。DJは流れるような口調で次の曲を紹介した。
「マルタ大好きさんからのリクエストで、『スタンド・バイ・ミー』です」
特徴的な前奏のベース・ライン。四人の少年が冒険する映画の主題歌。
俺はその曲を最後まで、ぼうっと聞いていた。
泣きはしない
泣いたりしない
ホントだよ?
涙なんか一粒も流さない
君が居てくれるなら
君がボクの傍に居てくれるなら
ダーリン ダーリン
傍に居て
傍に居て
傍に居て
一緒に居たいだけなんだ
ボクの傍に居て欲しい
俺は汗をかいたグラスに手を伸ばす。
生ぬるいコーヒー。口の中には酸味だけが残った。
→
■囚われ人12 続編
「今日のお客さんはジョシュアか」
きっと今日も一人で待っているのだろうと思い込んでたから、俺は少し驚いた。
「こんにちは、アイヴィー」
愛想良く挨拶をするジョシュアの横に、連れが居た。
それも、この前入学してきた、無愛想な美少年だ。
二人を後部座席に乗せて、俺は運転席に入る。
バックミラーに二人のガキが映っている。ちっこい方は窓の外を見ていた。俺は赤い瞳と目が合う。
「どちらまで?」
「あちこち見て回りたいんですけど、良いですか? アンリにこの島を案内したいんです」
「そりゃあ、もちろん」
「ありがとうございます。それじゃ、最初は植物園へ」
「あいよ」
俺が運転中、ジョシュアはアンリに植物園の見所を説明していた。
だが、はっきり言って説明下手だ。話すこと自体に慣れていないかんじ。
緊張しているようにも見える。先月会ったばかりだし、まだそんなに親しくないのだろう。
アンリは大した相槌も打たず、迷惑そうな顔をして聞いていた。
「あとは、えっと。あっ、クジャクが放し飼いになってるんだ。アンリ、クジャクは好き?」
美少年の眉間に皺が寄る。
「……別に。好きでも嫌いでもないけれど」
「そ、そっか。ごめんね」
その日も無事に一日のお仕事が終わった。
家に着くと、郵便物が幾つか来てた。
お仕事関係の封筒に交じって、ポストカードがあった。もう見慣れた文字。
ピコだ。どうせまた旅の自慢話なのだろう。
まとめてデスクに置き、PCとラジオのスイッチを入れる。
チューニングは合わせてある。一日中、音楽番組をやってる局だ。
背中でボサノヴァを聞きながら、アイスコーヒーを作る。
茶色い粉をグラスに入れて、ミネラルウォーターをちょこっと注ぐ。
マドラーで掻き混ぜ、茶色い原液が出来てから、残りの水を入れて、軽く混ぜる。
溶け残りの粉が水面に少し浮いてるくらいが美味しい、という思い込みだ。
氷を入れた後、グラスに口を付けながらPCの前に座る。
メールチェックをすると、理事会から来ていた。タイトルは、【重要】入学希望者について。
先月、あの美少年が入ってきたばっかなのに。ご盛況なことだ。
「今度はどんな奴が入ってくんのよ」
添付ファイルを開けると、入学希望者の資料が書かれていた。
「へえ。ドイツ軍人の家柄か、なんかクロイツに似てんなあ、こいつ」
メールチェックが終わった。次はアナログメールの確認だ。
ポストカードを手に取る。映っているのは海。左側には海に面した島。
島には街の灯りが見え、海はピンクとオレンジが溶け合った夕焼け色。手前には小さな船が浮かんでいる。
カードを表に返して、短いメッセージに目を移す。
|
「それでは、次のリクエストです」
ラジオの声に肩が跳ねる。DJは流れるような口調で次の曲を紹介した。
「マルタ大好きさんからのリクエストで、『スタンド・バイ・ミー』です」
特徴的な前奏のベース・ライン。四人の少年が冒険する映画の主題歌。
俺はその曲を最後まで、ぼうっと聞いていた。
泣きはしない
泣いたりしない
ホントだよ?
涙なんか一粒も流さない
君が居てくれるなら
君がボクの傍に居てくれるなら
ダーリン ダーリン
傍に居て
傍に居て
傍に居て
一緒に居たいだけなんだ
ボクの傍に居て欲しい
俺は汗をかいたグラスに手を伸ばす。
生ぬるいコーヒー。口の中には酸味だけが残った。
→
PR