忍者ブログ
Marginal Prince Short Story
Admin  +   Write
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

■テオ ハルヤ シルヴァン アンリ
注:エイプリルフールネタではありませんが春のお話です
「今日は風が冷たいねえ。季節は春だというのに」

生徒代表室からシュヌーシア寮への帰り道。
テオは、冬のような風に吹かれ、身体を震わせていた。

枝の上でも小鳥達がぴったり並んで留まっている。
その根元にはウサギ。賢いことに幹を風よけにしているようで、身体を丸めて目を瞑っている。

「森の皆もあんなに寒がって……けれど、ああ、なんて愛らしい。できることなら私も混ざ」

また強風が吹く。

「これではシュヌーシアに着くまでに凍えてしまう。あ、そうだ! ウーティスで少し休ませて貰おう」

現在地から一番近い寮へ急いだ。


「ジンジャーハニーティでございます」

「おお! 素晴らしいチョイスだね、ありがとう、バトラー」

ウーティス寮サロンは、丁度、放課後のティタイムだった。
テオは受け取った紅茶を、早速ひと口飲む。ほうと息を吐き、ソファに身を沈めた。

「美味しい。凍死寸前だったが、おかげで生き返ったよ」

向かいのソファでハルヤが笑った。

「いつも大袈裟だね、テオは」

生徒代表は胸に手を当てる。

「ああ、今の君の笑顔で冷えた胸があたたまったよ」

ハルヤはオリエンタルスマイルを見せる。

「……そういうのが大袈裟なんだってば」

ハルヤの隣で、シルヴァンも笑っていた。

「でも、今日は本当に寒いですよね。昨日までは春の陽気だったのに」

窓の外を見る。雲が濃くなっている。
風もまだ止んでいない。森も震えているかのようだ。

「今日は冬に逆戻りですね。明日はあたたかいと良いんですけど」

ぼそりとハルヤが呟く。

「あ、そっか。アルフォンソ島も『花冷え』なのかも」

「ハナビエ? 東洋の黒い真珠! それはもしかして日本語かい!?」

「あ、ごめん。学院では英語を話さなきゃダメだよね」

「母国語禁止なんて校則があるわけないじゃないか!」

「そうですよ! ハルヤ、ハナビエとは、どういう意味なんですか?」

子供の頃、母様に聞いたんだけどね、とハルヤは話し始めた。

「春の初めって、日本では気温が変わりやすいんだ。
桜の花が咲く頃に、急に寒くなることを、『花冷え』って言うんだよ。
英語で直訳すると『Cherry blossom Chill』ってかんじかな?」

ニッポン大好きなシルヴァンとテオは目を輝かせる。

「わお。綺麗な言葉ですね!」

「美しい……流石は東洋の黒い真珠を生み出した国だ!」

「俺は関係ないよ。昔からある言葉だし、春の季語なんだ。あ、二人は季語なんて知らないよね」

「知ってます!」「知っているとも!」と二人の手が同時に上がる。

「ハイクに必ず入れる季節の言葉ですよね! サムライムービーで見ましたー!」

「私も東洋文化の講義で習ったよ!」

「あ、そうなんだ。二人とも、勉強熱心だね……」

「当たり前だよ、東洋の黒い真珠。東洋の神秘的な文化は元々好きだったし、君との話題を広げたいのだよ」

「堂々と下心を言いましたね、テオ」

「というわけで、東洋の黒い真珠。冷え切った私の手をあたためるのに、
君のその美しい手をちょっと貸しておくれ?」

「あー! ズルイです、テオ! ハルヤ、僕も、お願いします!」

「ええっ? ちょ、ちょっと、二人とも……」

「僕の手なら、貸してあげてもいいよ?」

氷の微笑を見せているのは、隅の席に座っているアンリだった。

「僕の手じゃ、不満?」

「まさか! ぜひとも貸しておくれ!」

アンリは、ちょっとした嫌がらせのつもりだったのだ。
この手の冷たさに驚いて、すぐに離すだろうと思ったのだ。
ところが、テオは冷たさを物ともせず、アンリの左手をひしと両手で包んだ。
アンリは一瞬驚き、憮然とする。

「ねえ。冷たくないの?」

「アンリの愛が、あたたかいのだよ」

「……意味が解らない」

「ああ。今、私の手も胸もポッカポカだよ。ありがとう、アンリ」

「……離して」

「おや、急に冷たくなって。どうしたんだい? あっ!」

テオが指を鳴らす。

「アンリ! これから君のことを、『花冷え』と呼んでも」

「嫌」


fin
PR
≪ 囚われ人12   *HOME*   囚われ人11 ≫
カレンダー
05 2026/06 07
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
ブログ内検索
キャラ名、CP名などで作品検索可
アーカイブ
カウンター
バーコード
material by bee  /  web*citron
忍者ブログ [PR]