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■アンリ
ミハイルに用事があって、シュヌーシアに訪れた帰り。
どこからか、微かな声が聞こえた。しかも、女性の。
ソプラノ歌手の歌声のようにも、遠くから聞こえる叫び声のようにも感じる。
でも、聖アルフォンソ学院は男子校。教職員を含めても、女性は一人も居ない筈。
まだ聞こえる。本当に小さな声だ。
気になって、声のするほうに向かってみると、保健室に着いてしまった。
窓から見えたのは白衣の背中、一つに束ねた長い髪。
僕の大嫌いな保健教師だ。
スタニスラフ・ニコライエヴィッチ・ソクーロフ。
後ろ姿を見るだけで寒気がする。
しかし、あれは何をしているんだろう。
何もない宙で両手を動かしている。不気味だ。
観察しているうちに、あの手の動きに合わせて、女性の声がするのが解った。
指揮者ごっこ?
彼は生徒によって、カウンセリング手法を変えると聞く。
誰か用のカウンセリングの準備でもしてるのだろうか。僕は彼と最低限しか話さないから、よく知らないけれど。
彼の奥に、箱みたいな物が見えた。
それでやっと解った。
あの箱は電子楽器。名前は、何だったかな。
確か、目には見えない電子の弦を弾いて音を出す、テルミンだ。
彼に、あんな繊細な楽器が弾けるなんて。
不思議な音色。バイオリンやピアノとは違う。
早くここから離れなくちゃいけないのに。足が動かない。
物悲しい旋律が、滲みてくる。
むかつく。
サディストのくせになまいきだ。
fin
ミハイルに用事があって、シュヌーシアに訪れた帰り。
どこからか、微かな声が聞こえた。しかも、女性の。
ソプラノ歌手の歌声のようにも、遠くから聞こえる叫び声のようにも感じる。
でも、聖アルフォンソ学院は男子校。教職員を含めても、女性は一人も居ない筈。
まだ聞こえる。本当に小さな声だ。
気になって、声のするほうに向かってみると、保健室に着いてしまった。
窓から見えたのは白衣の背中、一つに束ねた長い髪。
僕の大嫌いな保健教師だ。
スタニスラフ・ニコライエヴィッチ・ソクーロフ。
後ろ姿を見るだけで寒気がする。
しかし、あれは何をしているんだろう。
何もない宙で両手を動かしている。不気味だ。
観察しているうちに、あの手の動きに合わせて、女性の声がするのが解った。
指揮者ごっこ?
彼は生徒によって、カウンセリング手法を変えると聞く。
誰か用のカウンセリングの準備でもしてるのだろうか。僕は彼と最低限しか話さないから、よく知らないけれど。
彼の奥に、箱みたいな物が見えた。
それでやっと解った。
あの箱は電子楽器。名前は、何だったかな。
確か、目には見えない電子の弦を弾いて音を出す、テルミンだ。
彼に、あんな繊細な楽器が弾けるなんて。
不思議な音色。バイオリンやピアノとは違う。
早くここから離れなくちゃいけないのに。足が動かない。
物悲しい旋律が、滲みてくる。
むかつく。
サディストのくせになまいきだ。
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