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Marginal Prince Short Story
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■アンリ
僕が自室で出張準備をしていた時のことだ。

「おや。旅行の予定があるのかね?」

背後に神秘学の講師が立っていた。

「……オーギュスト。勝手に部屋の中に入ってこないでって言っているでしょう。それから、旅行じゃなくて仕事だから」

「それはお疲れ様。今度はどこに行くのかな?」

「メッシーナ」

今回はシチリア東部で投資先との会談。
結構大きな額が動くので、僕が出向きたかった。

「おや、この時期にシチリアかい? 暑そうだね」

「解ってるよ。長居したくないし、すぐに帰ってくる」

シチリアの夏は、馬鹿かと思うほど暑い。
よくあんなところで暮らせるものだと思う。

「用がないなら出て行ってくれないかな、ボージェ教授」

彼は手帳に何か書いて、そのページを差し出した。
それを僕は受け取らずに、文字だけ読んだ。
書かれていたのは、どこかの店の住所と商品名。

「『ブラッドオレンジジャム 2瓶』? 何これ?」

「お買い物メモだよ。ブラッドオレンジジャムはメッシーナの名産品でね。
紅茶に入れると美味しいんだ。ウーティス寮の分と私の分で2つ、ね?」

「僕に買ってこいって言ってるの?」

彼は柔らかく微笑んだ。

「アンリは、おつかいできるかな?」

むかつく。
教師のくせになまいきだ。


fin
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