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■カーディス 側近
ロレート公国。
当代の国王、カーディス1世は現在、自主休憩中。
邸の裏庭でシエスタをしようと目を閉じたところだった。
7月も終わりに近付き、連日、日差しは強い。
邸内ではここ、月桂樹の木陰が比較的涼しいと王は子供の頃から知っていた。
多くの子息を、聖アルフォンソ学院に送り出してきたロレート大公家。
その裏庭に月桂樹の小さな森ができたのは、必然だったのだろう。
島にしかない亜種の月桂樹。それと同じ木ではないけれど、香りは限りなく近い。
月桂樹の青い香りは、常にロレート大公を優しく癒やしてくれた。
人の足音が駆け足で近付いてくる。
自分を呼び戻しに来た側近だろうと思い、王は目を開けずにいた。
「申し訳ありません、陛下」
予想外の台詞を投げ掛けられ、カーディスは目を開けた。
頭を下げていたのは、やはり側近のラルヴィス・レイナだった。夏でも着崩さず、今日も生真面目に軍服を身に付けている。
王は木陰で寝そべったまま尋ねた。
「どうした、ラルヴィス」
「あの、殿下のご生誕日が7月28日なのだそうで」
「ジョシュアの? 来週なのか」
「ええ。先程、アイヴィー様との業務連絡の時に、何気なく『そう言えば、ロレートでは誕生日に何かするの?』と聞かれまして」
「こちらでは別に何もしないだろう」
「お言葉ですが、陛下、それで本当に宜しいのでしょうか?
昨年までは確かに、ロレートでは何もできない状況でしたが、
先日の建国記念式典以降、ジョシュア様は正式な王位継承者です。
第一王子のご生誕日に国が何もしなくて良いのでしょうか?」
「聖アルフォンソ島で過ごせる最後の誕生日に、ジョシュアをロレートまで呼び出すつもりか?
友人達がサプライズパーティでも目論んでいたらどうする」
「あっ、そう、ですね」
「ロレートで祝うなら、来年からでいいだろう。今年は、そうだな。
誕生日の翌日にでも、俺から一言、冷やかしの電話でもしてやるか」
「お祝いのお電話にして下さい」
「それで、ジョシュアは幾つになるんだ?」
「御年、18になられます」
「若いな。俺の半分か」
「そうですね。陛下の半分のお年でも、陛下の倍はしっかりされてますし」
「悪かったな、規格外のポンコツで」
「ご自覚があるのなら、執務室にお戻り下さい、陛下」
「今宵は街のビアガーデンに行きたい。今年も、もう始まっているんだろう?」
「仕方ありませんね。7月分の執務が全て終わったら、特別にお連れします」
王は寝返りを打って、背を向けた。
「では無理だ」
「陛下、諦めるのが早過ぎます」
fin
ロレート公国。
当代の国王、カーディス1世は現在、自主休憩中。
邸の裏庭でシエスタをしようと目を閉じたところだった。
7月も終わりに近付き、連日、日差しは強い。
邸内ではここ、月桂樹の木陰が比較的涼しいと王は子供の頃から知っていた。
多くの子息を、聖アルフォンソ学院に送り出してきたロレート大公家。
その裏庭に月桂樹の小さな森ができたのは、必然だったのだろう。
島にしかない亜種の月桂樹。それと同じ木ではないけれど、香りは限りなく近い。
月桂樹の青い香りは、常にロレート大公を優しく癒やしてくれた。
人の足音が駆け足で近付いてくる。
自分を呼び戻しに来た側近だろうと思い、王は目を開けずにいた。
「申し訳ありません、陛下」
予想外の台詞を投げ掛けられ、カーディスは目を開けた。
頭を下げていたのは、やはり側近のラルヴィス・レイナだった。夏でも着崩さず、今日も生真面目に軍服を身に付けている。
王は木陰で寝そべったまま尋ねた。
「どうした、ラルヴィス」
「あの、殿下のご生誕日が7月28日なのだそうで」
「ジョシュアの? 来週なのか」
「ええ。先程、アイヴィー様との業務連絡の時に、何気なく『そう言えば、ロレートでは誕生日に何かするの?』と聞かれまして」
「こちらでは別に何もしないだろう」
「お言葉ですが、陛下、それで本当に宜しいのでしょうか?
昨年までは確かに、ロレートでは何もできない状況でしたが、
先日の建国記念式典以降、ジョシュア様は正式な王位継承者です。
第一王子のご生誕日に国が何もしなくて良いのでしょうか?」
「聖アルフォンソ島で過ごせる最後の誕生日に、ジョシュアをロレートまで呼び出すつもりか?
友人達がサプライズパーティでも目論んでいたらどうする」
「あっ、そう、ですね」
「ロレートで祝うなら、来年からでいいだろう。今年は、そうだな。
誕生日の翌日にでも、俺から一言、冷やかしの電話でもしてやるか」
「お祝いのお電話にして下さい」
「それで、ジョシュアは幾つになるんだ?」
「御年、18になられます」
「若いな。俺の半分か」
「そうですね。陛下の半分のお年でも、陛下の倍はしっかりされてますし」
「悪かったな、規格外のポンコツで」
「ご自覚があるのなら、執務室にお戻り下さい、陛下」
「今宵は街のビアガーデンに行きたい。今年も、もう始まっているんだろう?」
「仕方ありませんね。7月分の執務が全て終わったら、特別にお連れします」
王は寝返りを打って、背を向けた。
「では無理だ」
「陛下、諦めるのが早過ぎます」
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