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Marginal Prince Short Story
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■テオ×クラウス
共にある奇蹟(2) 続編
シュヌーシア寮サロン。
テオ特注の鳩時計が鳴る。サロンで遊んでいた寮生達が時計を見上げた。
鳩代わりのナイチンゲールが深夜を告げている。
クラウスが居なくなってから、初めての就寝時間が訪れた。

「あ、もう、寝る時間だね」

「だな」

「えー。今、いいとこじゃん。ね、もうちょっとだけ」

「止めとけ止めとけ。そんなことしてたら、クラウスがドイツから飛んできちまう」

「俺達を怒る為だけにー?」

「やりかねないな、クラウスなら」

「だろ? 『コラー! お前達ー!』とか言って!」

皆が笑う。笑いが治まるとサロンは、シンとなった。

「んじゃ、今日は寝てやりますかっ」

「寝てやろう寝てやろう」

「うん。そうだよね」

「おやすみー」


ラビの部屋では、レオンが我が物顔でベッドに寝そべり、マンガを読んでいた。
うつ伏せで、時々、足を振っている。
レオンは度々、ラビが持っているシリーズ物のマンガを読んでいく。
ラビは「全部貸してあげるから、部屋に持っていって良いよ」と前から言っているのだが、
レオンは「借りたら返すのが面倒」らしく、ラビの部屋に居座って読むようになったのだ。
ラビはベッドの前に立って、声を掛けた。

「ねえ、レオン。もう寝なきゃいけない時間だよ?」

すると、レオンはマンガを読みながら、壁際に身体を寄せた。
ラビが眠れるだけのスペースが空く。

「ほい」

「そうじゃなくて。ここは僕のベッド」

レオンは顔を上げず、ページをめくる。

「だから、場所、空けてやっただろ? 寝れば?」

「もー。じゃあ、僕は寝るからね?」

ラビはレオンの隣に入る。ブランケットを引き寄せ、仰向けに寝た。
レオンは相変わらず、うつ伏せのまま読書中だ。
二人は会話しなかった。ページをめくる音だけがする。
一分間ほどの沈黙の後、ラビは天井を見ながら呟いた。

「クラウス、もうドイツに着いたかな?」

「着いただろ」

「クラウス、寂しくないかな? 僕達と離れて」

「寂しくないだろ」

「クラウ」

「だー!」

レオンはマンガを閉じる。

「クラウスクラウス言うな! 卒業しちまったもんはしょーがねーだろ!」

「だって、やっぱり、クラウスが居ないと、寂し……」

「また泣くー! お前、昼間、散々泣いてたじゃん!」

普段から泣き虫なラビは、今日クラウスを見送った後も、ずっとめそめそしていた。
今も目は真っ赤である。明日になったら目元は腫れてしまうだろう。
ラビはブランケットで涙を拭いながら、

「なんでレオンは、一回も泣かないの? 悲しくないの?」

「泣いたら、クラウスが帰ってくんのかよ」

ラビはもう一度涙を拭う。
レオンはマンガをサイドテーブルに置いた。頭の後ろで手を組んで、仰向けになる。
ブランケットからラビが顔を出す。

「テオは大丈夫なのかな? テオが一番、クラウスと仲良かったから」

「大丈夫だろ、テオだし」

「でも、僕がテオだったら、大丈夫じゃないよ。
だって、レオンが僕より先に卒業しちゃうってことでしょ?」

ラビの目から見ても、テオが一番大切にしてる友達はクラウスだった。
テオの親友がクラウスだったように、ラビの親友はレオンなのだ。

「僕、レオンが先に卒業しちゃったら、困る」

「俺達は同じ学年なんだから、あいつらみたいにはならないだろ」

「うん。ねえ、僕達、同じ日に卒業できないかな?」

「同じ日?」

「そしたら、どっちかが先になったりしないでしょ? ね、そうしよ?」

「解んねえよ、そんな先のこと。あと五年も先の話だぜ?」

「五年……あと五年しか、ここに居られないんだ……」

「充分だろ。入学から卒業まで六年間もあるんだぜ?」

「僕はもっとレオンと一緒に」

「俺達は六年だけど、あいつらは三年だったんだ」

テオは中等部一年から学院に入ったが、クラウスが入学したのは高等部一年。
二人が共に過ごした時間は三年間。レオンは呟く。

「六年は充分、長いんだよ」

泣き腫らしたラビの目にまた涙が溜まっていく。

「僕、卒業なんてしたくない。ずっとシュヌーシアに居たい」

レオンは天井を見上げたまま、静かに言った。

「無理だろ」


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