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Marginal Prince Short Story
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■テオ×クラウス
共にある奇蹟(3) 続編
翌日。テオは目を覚ました。
部屋に光が差し込んでいる。太陽が昇っているのだ、いつもと同じように。
明けない夜はない、必ず朝は来る。いつの時代も希望の象徴として謳われる朝。
この学院から生徒が一人居なくなっても、朝は来る。
大好きな朝陽が、こんなにも無情に感じられた日はない。

昨日、生徒代表室で行った任命式が思い浮かぶ。一夜明けても信じられない。
あれが全て夢だったらいいのに。そうだ。悪い夢だったのではないのか。
一縷の望みを秘めて、ダイニングルームに向かった。

「あ、テオやっと起きたー」

「おはよー、テオ」

ダイニングルームの椅子は、昨日より一脚減っていた。


今日のテオは、いつも以上に声を掛けられた。
寮から校舎へ向かう途中も、教室から教室へ移動する時も。

「おはよう、生徒代表!」

「生徒代表就任おめでとう!」

「期待してるぜ、生徒代表!」

テオは「ああ、ありがとう」と応じる。

友人が多いテオは、生徒と擦れ違う度に祝福、激励の言葉が掛けられた。
肩乗りオウムにも声を掛けられた。

「テオー! セイトダイヒョウ!」

「オウム君も祝ってくれるのかい? ありがとう」

「セイトダイヒョウ、クラウス!」

「オウム君……」

「テオ、クラウス、イツモイッショ! クラウス、イナイ! クラウス、ドコ?」

ジャワハルワールはオウムの頬に触れる。テオは呟く。

「クラウスは卒業してしまったのだよ。だから、私が代わりに就任したんだ」

「ソツギョー?」

「オウム君には少し難しいかな。私もまだよく解らないんだ。
クラウスがもうこの学院に居ないなんて、信じられない」

オウムの飼い主がテオの頭に手を置いた。テオは不思議そうに見上げる。

「ジャワハルワール?」

何も言わずに、テオを見つめている。表情からは何も読み取れない。
浅黒い手はテオの左肩にポンと触れ、去っていった。


授業中もテオの生徒代表就任祝いは続いた。各先生方からも励まし、労いの言葉を頂いた。
クラウスからテオへの交代劇は教授陣も関心を惹いたらしい。
帝王学の講義では、教授が彼の名を呼んだ。

「ではクラウス、解りますか?」

返事がない。それで教授は気付いた。

「ああ、クラウスは卒業したのでしたね。すみません。
彼はとても優秀な生徒でしたから、授業をする側としても頼りになる存在だったのですが」

残念です、と教授は言った。彼が授業以外の話をするのは珍しいことだった。

「実は、教師陣の間でも彼は有名人でした。クラウスが居る講義では、
いつも以上に入念な授業準備をしてしまうと。
私も彼が居た間は、毎週身の引き締まる想いで教壇に立っていましたから」

クラウスがいつも座っていた席。テオの隣だ。
今は空席になっている、その場所を教授は見ていた。あっ、と言って顔を上げる。

「クラウスが卒業したからといって、授業の質は下がりませんので安心して下さいね。
そんなことをしたら、クラウスに怒られてしまいます」

視線を隣の席に移した教授は、テオを見て微笑んだ。
テオはビックリする。教授は優しい声でこう話し掛けた。

「クラウスから生徒代表を受け継いだのは、テオだそうですね?」

「あ、はい」

「毎年驚かされるのですが、学院の運営組織は、よくこれほどまでに、
的確な指名ができるものだと思いますよ」

「そうでしょうか?」

「ご自身はまだ実感がないようですね。
でも私も新しい生徒代表には君が最も適任だと思います。
皆さんも納得の結果ではないでしょうか?
テオが生徒代表に選ばれて納得した方は、挙手をお願いできますか?」

帝王学の受講生達が手を挙げていく。

「ほら。見て下さい、テオ。君以外、全員の手が上がっていますよ。
自信を持って、一年間、任務を全うして下さい。
今年は君が聖アルフォンソ島の帝王なのです。帝王学で学んできた知識が、
君のお役に立てるよう願っています。もちろん、テオだけでなく、
のちに帝王となる皆さんもお役立て下さい。
帝王学の知識は、貴方の良き側近となり、貴方を生涯支え続けてくれますよ」

鐘が鳴る。授業終了の合図だ。教授が照れ笑いする。

「すみません。話が横道に逸れたまま終わってしまいました。
こんなことでは、早速クラウスに怒られてしまいますね。
来週からは、また気を引き締めて授業をします。皆さんも協力して下さいね」


授業後、テオは一人で森に来た。
月桂樹の幹に凭れて座っている。目の前には泉がある。
水面に映る雲を、ただ、ぼんやり見つめていた。

どれくらい、そうしていただろう。ふと気が付いた時、辺りは真っ暗だった。
腕時計を身に付けない主義なので、今何時なのかも解らない。

こんなところで何をしているんだろう、私は。
どうして森に来たのだろう。

いくら森に居たって、もう誰も迎えに来ないのに。

遠くに寮の灯りが見える。いい加減、帰らなくては。私の帰る場所はあそこしかないのだから。
テオはゆっくりと立ち上がった。
足元がふらつく。近くの幹に手を付いて、身体を支えた。


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