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■テオ×クラウス
■共にある奇蹟(4) 続編
翌朝。シュヌーシア寮ダイニングルーム。
聖アルフォンソ学院の朝食はどの寮もブッフェ式だ。
壁際には、寮の専属シェフが用意した、様々なメニューが並んでいる。
生徒達は自分の体調に合わせ、好きな料理を取り、テーブルに着く。
焼きたてのパン、薫り高いコーヒーのいい匂いがする。
朝食の時間は、制服の着用は義務付けられていない。シュヌーシアではパジャマ姿の生徒が目立った。朝食を食べながら生徒達が話している。
「テオ来ないねー」
「まだ寝てんじゃねー?」
「生徒代表就任パーティの打ち合わせとかしたいのになー」
テオがまだダイニングルームに顔を出さない。
そろそろ来ないと、朝食抜きで授業の時間になってしまう。丁度、食べ終わったラビが席を立つ。
「じゃあ僕、起こしてくるよ。この前テオに起こして貰ったし」
レオンは目だけでラビを見送り、トーストをかじった。
上級生達の話し声がレオンの耳に入ってくる。
テーブルの角で、食後のコーヒーを飲みながら、ぼそぼそと囁き合っていた。
「生徒代表二日目で寝坊かよ。大丈夫なのかね、テオで」
「何言ってんだよ。テオが一番、合ってるだろ?」
「そりゃ解ってるけどさ」
「あ、お前、実は自分が選ばれるって思ってた?」
「まさか」
「じゃあ、何が不満なわけ?」
「不満だなんて一言も言ってないだろ。テオには荷が重いんじゃないかって話」
「どこが? テオなら楽しい楽しいって言って、何でもできそうじゃん?」
「おとといまでのテオならな」
「おととい?」
「昨日のテオを見なかったのか、お前は。あいつ、一日中、ぼうっとした顔しやがって。ったく、見てらんねえぜ。
あんなんで一年間も務まるのかよ、生徒代表が。代われるもんなら、代わってやりてえよ」
ドアが開く。ダイニングルームにラビが飛び込んできた。
「どうしよう、テオが居ない! テオの部屋、誰も居なかった!」
「トイレかシャワーだろ?」
「ううん。いちお呼んでみたけど、居なかった」
皆がざわつく。
「じゃあ、どこ行ったんだ、テオ」
「まさか脱走?」
「バカ。テオがするかよ」
「つーか、脱走なんてできねえだろ、この学院で。警備が見張ってんのに」
「ウーティスの新入りはしてたじゃん、初日から」
「あれとテオを一緒にすんな」
「じゃあ、その辺を散歩してるのかな? ジョギングとか」
「テオはジョギングなんてしないって。クラウスじゃあるまいし」
レオンは昨夜見た光景を思い出す。夜中、テオは一人で、ドアの前に立っていた。あの部屋は、テオの部屋じゃない。
「まさか、あいつ、まだあそこに」
「どうしたの、レオン?」
「俺、テオの居場所、知ってるかもしんねえ!」
そう言ってダイニングルームを飛び出して行く。皆はレオンの後を追い駆けた。
レオンは廊下を走った。頭の中に口煩い先輩の声が聞こえてくる。
――緊急時以外、廊下は走るな――
レオンは立ち止まらない。今はマジで緊急事態なんだっつの。
「テオ! 居るのか!?」
ドアを開け放つ。テオはそこに居た。
べッドを枕にするように、床に膝を突いて。ベッドに凭れて眠っているようだった。
「お前……マジであれからずっと、ここに居たのかよ?」
レオンを追い掛けてきた生徒達が、続々と部屋に到着する。
「テオ、こんなとこに居たー」
「寝ぼけて、部屋間違えちゃったのかなあ?」
生徒がテオの肩を揺する。
「テーオ、朝だよ。てゆうか、ここテオの部屋じゃないよ。テオ、起きてってば」
「おい、なんか、様子が可笑しくないか?」
「テオ、苦しそうじゃない?」
「もしかして、熱が」
レオンはテオの額に触る。寮生達に振り向いて、叫んだ。
「おい! 誰か博士に連絡!」
「わ、解った!」
テオが目覚めた時、最初に見たのは、真っ白な天井だった。
ここは自分の部屋ではない。周りを見渡す。
「保健室……どうして?」
「目が覚めたんだね」
真後ろから声がした。優しい顔をした白衣の男。保健教師のソクーロフ博士だ。
「おはよう、テオ」
「……おはようございます、博士。あの、私は何故、保健室に?」
「君は今朝、シュヌーシアの空き部屋で倒れていたところを発見されたんだよ」
「空き部屋?」
「以前は、クラウスが使っていた部屋だそうだね」
えっ、とテオは小さく呟いた。
「彼の部屋に入ったことは覚えているのかな?」
テオは目を伏せる。
「……いいえ。自分の部屋に帰ったつもりでした」
「そうか。高熱で意識が朦朧としていたのかもしれないね」
「熱?」
「ああ、発見当時38度7分だったんだよ、君は。今はどうかな。もう一度、検温してみよう」
はい、と答える前に、耳許でピッと電子音が聞こえた。
耳式体温計だったようだ。ものの1秒で検温が終わる。
博士は表示された数値を確認後、テオにも見せた。38度2分。
「まだ高いね。今日は授業に出なくていいから、ここで静養していなさい」
博士は体温計を片付けながら、
「今日は第一回目の警備ミーティングもあったね。メンバーは三人だけだし、中止にしよう」
「えっ?」
「警備担当者には私から連絡しておくから」
「それは駄目です! ミーティングなら出れます!」
「無理だよ。体温計を見せただろう?」
「生徒代表の仕事は、休みたくありません。少しくらい熱が高くたって」
「例え、学院の総帥でも、保健室に居る間は私の患者だ。
患者には私の言うことを聞いて貰うよ」
「でも、生徒代表の任務だけは」
医師の手が上がる。その手はテオの髪を撫でた。
「憔悴した身体では生徒代表の任務も務まらない。テオ、今の君には安静が必要だ」
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■共にある奇蹟(4) 続編
翌朝。シュヌーシア寮ダイニングルーム。
聖アルフォンソ学院の朝食はどの寮もブッフェ式だ。
壁際には、寮の専属シェフが用意した、様々なメニューが並んでいる。
生徒達は自分の体調に合わせ、好きな料理を取り、テーブルに着く。
焼きたてのパン、薫り高いコーヒーのいい匂いがする。
朝食の時間は、制服の着用は義務付けられていない。シュヌーシアではパジャマ姿の生徒が目立った。朝食を食べながら生徒達が話している。
「テオ来ないねー」
「まだ寝てんじゃねー?」
「生徒代表就任パーティの打ち合わせとかしたいのになー」
テオがまだダイニングルームに顔を出さない。
そろそろ来ないと、朝食抜きで授業の時間になってしまう。丁度、食べ終わったラビが席を立つ。
「じゃあ僕、起こしてくるよ。この前テオに起こして貰ったし」
レオンは目だけでラビを見送り、トーストをかじった。
上級生達の話し声がレオンの耳に入ってくる。
テーブルの角で、食後のコーヒーを飲みながら、ぼそぼそと囁き合っていた。
「生徒代表二日目で寝坊かよ。大丈夫なのかね、テオで」
「何言ってんだよ。テオが一番、合ってるだろ?」
「そりゃ解ってるけどさ」
「あ、お前、実は自分が選ばれるって思ってた?」
「まさか」
「じゃあ、何が不満なわけ?」
「不満だなんて一言も言ってないだろ。テオには荷が重いんじゃないかって話」
「どこが? テオなら楽しい楽しいって言って、何でもできそうじゃん?」
「おとといまでのテオならな」
「おととい?」
「昨日のテオを見なかったのか、お前は。あいつ、一日中、ぼうっとした顔しやがって。ったく、見てらんねえぜ。
あんなんで一年間も務まるのかよ、生徒代表が。代われるもんなら、代わってやりてえよ」
ドアが開く。ダイニングルームにラビが飛び込んできた。
「どうしよう、テオが居ない! テオの部屋、誰も居なかった!」
「トイレかシャワーだろ?」
「ううん。いちお呼んでみたけど、居なかった」
皆がざわつく。
「じゃあ、どこ行ったんだ、テオ」
「まさか脱走?」
「バカ。テオがするかよ」
「つーか、脱走なんてできねえだろ、この学院で。警備が見張ってんのに」
「ウーティスの新入りはしてたじゃん、初日から」
「あれとテオを一緒にすんな」
「じゃあ、その辺を散歩してるのかな? ジョギングとか」
「テオはジョギングなんてしないって。クラウスじゃあるまいし」
レオンは昨夜見た光景を思い出す。夜中、テオは一人で、ドアの前に立っていた。あの部屋は、テオの部屋じゃない。
「まさか、あいつ、まだあそこに」
「どうしたの、レオン?」
「俺、テオの居場所、知ってるかもしんねえ!」
そう言ってダイニングルームを飛び出して行く。皆はレオンの後を追い駆けた。
レオンは廊下を走った。頭の中に口煩い先輩の声が聞こえてくる。
――緊急時以外、廊下は走るな――
レオンは立ち止まらない。今はマジで緊急事態なんだっつの。
「テオ! 居るのか!?」
ドアを開け放つ。テオはそこに居た。
べッドを枕にするように、床に膝を突いて。ベッドに凭れて眠っているようだった。
「お前……マジであれからずっと、ここに居たのかよ?」
レオンを追い掛けてきた生徒達が、続々と部屋に到着する。
「テオ、こんなとこに居たー」
「寝ぼけて、部屋間違えちゃったのかなあ?」
生徒がテオの肩を揺する。
「テーオ、朝だよ。てゆうか、ここテオの部屋じゃないよ。テオ、起きてってば」
「おい、なんか、様子が可笑しくないか?」
「テオ、苦しそうじゃない?」
「もしかして、熱が」
レオンはテオの額に触る。寮生達に振り向いて、叫んだ。
「おい! 誰か博士に連絡!」
「わ、解った!」
テオが目覚めた時、最初に見たのは、真っ白な天井だった。
ここは自分の部屋ではない。周りを見渡す。
「保健室……どうして?」
「目が覚めたんだね」
真後ろから声がした。優しい顔をした白衣の男。保健教師のソクーロフ博士だ。
「おはよう、テオ」
「……おはようございます、博士。あの、私は何故、保健室に?」
「君は今朝、シュヌーシアの空き部屋で倒れていたところを発見されたんだよ」
「空き部屋?」
「以前は、クラウスが使っていた部屋だそうだね」
えっ、とテオは小さく呟いた。
「彼の部屋に入ったことは覚えているのかな?」
テオは目を伏せる。
「……いいえ。自分の部屋に帰ったつもりでした」
「そうか。高熱で意識が朦朧としていたのかもしれないね」
「熱?」
「ああ、発見当時38度7分だったんだよ、君は。今はどうかな。もう一度、検温してみよう」
はい、と答える前に、耳許でピッと電子音が聞こえた。
耳式体温計だったようだ。ものの1秒で検温が終わる。
博士は表示された数値を確認後、テオにも見せた。38度2分。
「まだ高いね。今日は授業に出なくていいから、ここで静養していなさい」
博士は体温計を片付けながら、
「今日は第一回目の警備ミーティングもあったね。メンバーは三人だけだし、中止にしよう」
「えっ?」
「警備担当者には私から連絡しておくから」
「それは駄目です! ミーティングなら出れます!」
「無理だよ。体温計を見せただろう?」
「生徒代表の仕事は、休みたくありません。少しくらい熱が高くたって」
「例え、学院の総帥でも、保健室に居る間は私の患者だ。
患者には私の言うことを聞いて貰うよ」
「でも、生徒代表の任務だけは」
医師の手が上がる。その手はテオの髪を撫でた。
「憔悴した身体では生徒代表の任務も務まらない。テオ、今の君には安静が必要だ」
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