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■テオ×クラウス
■共にある奇蹟(5) 続編
「ソクローフ先生」
放課後の保健室。
ソクーロフがカルテを書いていると、シュヌーシアの生徒達、ほぼ全員が、
ぞろぞろと連れ立ってやってきた。保健室の先生は優しい声で応対する。
「おや。お揃いだね」
「あの、先生、テオは大丈夫ですか?」
「皆、テオのことが心配で来てくれたのかい?」
生徒達は一様に頷いた。
「テオ、熱はどのくらいあったんですか?」
「先程、計ったら、38度2分だったよ」
「そんなに……風邪なんですか?」
「風邪、というよりは、疲れが溜まったまま回復することなく悪化したといった状態だね。
大丈夫。身体的には悪いところはなかったよ。ただ」
「ただ?」
「身体に支障はない程度だが、血糖値が低かったのが気になったね。
最近、テオはきちんと食事を取っていたのかな?」
同じ寮で寝食を共にしている生徒達は、昨日の食卓風景を思い出す。
「晩ご飯食べに来てなかったんじゃない? 昨日は」
「あ、そうだよね。でも、昨日は、一人にしておいてあげようってことになって」
「昨日は朝ご飯の時もすぐ居なくなっちゃったよね」
「そう言えば、テオって最近ご飯残したりしてなかった? いつだったかな、
テオってターキーとか好きなのに、他の人にあげたりしてさ。結構前から具合悪かったのかも」
「そーかー? いつもと同じくらいじゃねえの?
前はいっぱい食べてたけど、最近はずっとあんなかんじだったろ」
生徒達のお喋りを医師は軽くメモを取って聞いていた。
赤いボールペンを白衣の胸ポケットにしまう。
「ありがとう、貴重な証言を聞かせてくれて」
「僕達、テオのお見舞いがしたくて来たんですけど、会っちゃダメですか?
ダメなら、これ、テオに渡しておいて貰いたいんですけど」
「会って構わないよ、感染性ではなかったし」
ソクーロフは生徒達の顔を見る。
「どんな抗生物質より、薬になるかもしれないね、君達が」
医師は席を立つ。
「テオのベッドへ案内するよ。付いておいで」
保健室二階、ベッドルーム。
一番窓側のベッドに金髪の生徒が横たわっていた。窓の向こうを見ている。
中等部の生徒がそっと声を掛けた。
「テオ、起きてる?」
金髪の生徒はすぐに振り向いた。
「みんな……」
「あのね。これ、お見舞い。さっきね、みんなで選んできたんだ」
「まず、お花ー!」
テオに大きな花束が押し付けられる。生徒達は次々にプレゼントを渡していく。
「これは俺の好きなマンガ。絶対笑えるぜ!」
「あと、絵本もあるよ。テオ、童話とか昔話好きでしょ?」
「それから、太陽とか星の写真集みたいなヤツもあったから買ってきたぜ!」
「俺からは、ジャーン! ボトルシップー! カッコイイだろー!?」
ドサドサと尋常じゃない数のプレゼントがベッドに置かれていく。
テオは目をぱちくりさせた。
「こんなに、たくさん……」
「これでも本当は全然足りないくらいだよ。
テオ、誰かが保健室に居る時、いつもお見舞いに来てくれたから」
「だよな。僕も、この三倍は貰ってるかも」
「でも、テオは今まで殆ど保健室に運ばれてないから、俺達はお返しができなかったじゃん?」
「だから今日は、ドーンとウルトラスペシャルデラックス・バージョン!
とにかくテオが好きそうなもの、いっぱい選んできたってわけ! 受け取ってくれるよな?」
テオは寮生達を見る。抱えた花束がくしゃりと鳴る。
「ありがとう、みんな」
「テオ、テオー。『早く元気になって、また君の可愛いらしい笑顔を見せておくれ?』
……なーんちゃって。テオのマネー!」
周りの生徒達が笑った。
「はははっ。似てるー!」
「テオ、それ、よく言うよね!」
「あ、そうだ。あのね。テオの生徒代表就任パーティのことなんだけど。
テオには元気になるまで休んでて欲しいから、企画とか準備とか、僕達がやっておいても良いかな?」
「任せてしまっていいのかい?」
「もちろん、就任挨拶はテオにやって貰うぜ! あとのことはドーンと俺達に任せとけ!」
「テオが元気になったら、パーティやっても良いですよね、ソクーロフ先生?」
ベッドルームのドアに凭れて、全員の一挙一動を観察していた医師が、にこやかに頷く。
「ああ。構わないとも」
「じゃあ決まりだな、テオ、カッコイイ挨拶、考えておけよ?」
「それは元気になってからでいいよ。今はゆっくり休んで。早く元気になってね、テオ」
「うん。早くみんなのところに帰りたいな。博士、私はいつ寮に戻れますか?」
「そうだね、君がそう望むのなら、回復は早いと思うよ。調子が良ければ、明日でもね」
生徒達は「やったあ!」と声を上げた。
シュヌーシアの生徒が帰った後。
ウーティスの生徒、そして、アルファルドの生徒までが、テオのお見舞いに訪れた。
「テオ、タオレタンダッテ!? テオ、タイヨウとウミをアイするオトコ!
オレのナマエは、ジャワハルワール!」
お喋りなオウムを肩に乗せている生徒は、見舞いに果物をひとつ持ってきた。
今日のオウムは、随分悲痛そうに鳴いている。
「オレンジ、オミマイ! オレ、オレンジ、スキ! ダイスキ! テオにアゲル!」
オウムの小さな黒目は果物に釘付けだ。必死の「待て」である。
ジャワハルワールからテオに果物が手渡される。オウムは絶叫した。
「ギャー! オレのオヤツー!」
テオはジャワハルワールを見上げながら、
「ほ、本当に私が貰っても良いのかい? オレンジはオウム君の大好物だろう?」
「テオにアゲル! オレンジ、ビタミンCダカラー!」
泣き叫ぶオウムの頭を、飼い主は優しく撫でた。
ジャワハルワールは博士に軽く一礼して、無言のまま退室した。
ベッドの上で、テオは手の中に視線を落とす。
果物を顔を近付けると、爽やかな柑橘の香りがした。
「オウム君……ありがとう」
医師は手を差し出す。
「テオ。それは保健室の冷蔵庫で預かろう」
「あ、はい。ありがとうございます、博士」
「元気になったら、市場へ行って、あのオウムにお返しするオレンジを選んではどうだい? テオ」
「そうですね、そうします」
→
■共にある奇蹟(5) 続編
「ソクローフ先生」
放課後の保健室。
ソクーロフがカルテを書いていると、シュヌーシアの生徒達、ほぼ全員が、
ぞろぞろと連れ立ってやってきた。保健室の先生は優しい声で応対する。
「おや。お揃いだね」
「あの、先生、テオは大丈夫ですか?」
「皆、テオのことが心配で来てくれたのかい?」
生徒達は一様に頷いた。
「テオ、熱はどのくらいあったんですか?」
「先程、計ったら、38度2分だったよ」
「そんなに……風邪なんですか?」
「風邪、というよりは、疲れが溜まったまま回復することなく悪化したといった状態だね。
大丈夫。身体的には悪いところはなかったよ。ただ」
「ただ?」
「身体に支障はない程度だが、血糖値が低かったのが気になったね。
最近、テオはきちんと食事を取っていたのかな?」
同じ寮で寝食を共にしている生徒達は、昨日の食卓風景を思い出す。
「晩ご飯食べに来てなかったんじゃない? 昨日は」
「あ、そうだよね。でも、昨日は、一人にしておいてあげようってことになって」
「昨日は朝ご飯の時もすぐ居なくなっちゃったよね」
「そう言えば、テオって最近ご飯残したりしてなかった? いつだったかな、
テオってターキーとか好きなのに、他の人にあげたりしてさ。結構前から具合悪かったのかも」
「そーかー? いつもと同じくらいじゃねえの?
前はいっぱい食べてたけど、最近はずっとあんなかんじだったろ」
生徒達のお喋りを医師は軽くメモを取って聞いていた。
赤いボールペンを白衣の胸ポケットにしまう。
「ありがとう、貴重な証言を聞かせてくれて」
「僕達、テオのお見舞いがしたくて来たんですけど、会っちゃダメですか?
ダメなら、これ、テオに渡しておいて貰いたいんですけど」
「会って構わないよ、感染性ではなかったし」
ソクーロフは生徒達の顔を見る。
「どんな抗生物質より、薬になるかもしれないね、君達が」
医師は席を立つ。
「テオのベッドへ案内するよ。付いておいで」
保健室二階、ベッドルーム。
一番窓側のベッドに金髪の生徒が横たわっていた。窓の向こうを見ている。
中等部の生徒がそっと声を掛けた。
「テオ、起きてる?」
金髪の生徒はすぐに振り向いた。
「みんな……」
「あのね。これ、お見舞い。さっきね、みんなで選んできたんだ」
「まず、お花ー!」
テオに大きな花束が押し付けられる。生徒達は次々にプレゼントを渡していく。
「これは俺の好きなマンガ。絶対笑えるぜ!」
「あと、絵本もあるよ。テオ、童話とか昔話好きでしょ?」
「それから、太陽とか星の写真集みたいなヤツもあったから買ってきたぜ!」
「俺からは、ジャーン! ボトルシップー! カッコイイだろー!?」
ドサドサと尋常じゃない数のプレゼントがベッドに置かれていく。
テオは目をぱちくりさせた。
「こんなに、たくさん……」
「これでも本当は全然足りないくらいだよ。
テオ、誰かが保健室に居る時、いつもお見舞いに来てくれたから」
「だよな。僕も、この三倍は貰ってるかも」
「でも、テオは今まで殆ど保健室に運ばれてないから、俺達はお返しができなかったじゃん?」
「だから今日は、ドーンとウルトラスペシャルデラックス・バージョン!
とにかくテオが好きそうなもの、いっぱい選んできたってわけ! 受け取ってくれるよな?」
テオは寮生達を見る。抱えた花束がくしゃりと鳴る。
「ありがとう、みんな」
「テオ、テオー。『早く元気になって、また君の可愛いらしい笑顔を見せておくれ?』
……なーんちゃって。テオのマネー!」
周りの生徒達が笑った。
「はははっ。似てるー!」
「テオ、それ、よく言うよね!」
「あ、そうだ。あのね。テオの生徒代表就任パーティのことなんだけど。
テオには元気になるまで休んでて欲しいから、企画とか準備とか、僕達がやっておいても良いかな?」
「任せてしまっていいのかい?」
「もちろん、就任挨拶はテオにやって貰うぜ! あとのことはドーンと俺達に任せとけ!」
「テオが元気になったら、パーティやっても良いですよね、ソクーロフ先生?」
ベッドルームのドアに凭れて、全員の一挙一動を観察していた医師が、にこやかに頷く。
「ああ。構わないとも」
「じゃあ決まりだな、テオ、カッコイイ挨拶、考えておけよ?」
「それは元気になってからでいいよ。今はゆっくり休んで。早く元気になってね、テオ」
「うん。早くみんなのところに帰りたいな。博士、私はいつ寮に戻れますか?」
「そうだね、君がそう望むのなら、回復は早いと思うよ。調子が良ければ、明日でもね」
生徒達は「やったあ!」と声を上げた。
シュヌーシアの生徒が帰った後。
ウーティスの生徒、そして、アルファルドの生徒までが、テオのお見舞いに訪れた。
「テオ、タオレタンダッテ!? テオ、タイヨウとウミをアイするオトコ!
オレのナマエは、ジャワハルワール!」
お喋りなオウムを肩に乗せている生徒は、見舞いに果物をひとつ持ってきた。
今日のオウムは、随分悲痛そうに鳴いている。
「オレンジ、オミマイ! オレ、オレンジ、スキ! ダイスキ! テオにアゲル!」
オウムの小さな黒目は果物に釘付けだ。必死の「待て」である。
ジャワハルワールからテオに果物が手渡される。オウムは絶叫した。
「ギャー! オレのオヤツー!」
テオはジャワハルワールを見上げながら、
「ほ、本当に私が貰っても良いのかい? オレンジはオウム君の大好物だろう?」
「テオにアゲル! オレンジ、ビタミンCダカラー!」
泣き叫ぶオウムの頭を、飼い主は優しく撫でた。
ジャワハルワールは博士に軽く一礼して、無言のまま退室した。
ベッドの上で、テオは手の中に視線を落とす。
果物を顔を近付けると、爽やかな柑橘の香りがした。
「オウム君……ありがとう」
医師は手を差し出す。
「テオ。それは保健室の冷蔵庫で預かろう」
「あ、はい。ありがとうございます、博士」
「元気になったら、市場へ行って、あのオウムにお返しするオレンジを選んではどうだい? テオ」
「そうですね、そうします」
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