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■ジョシュア×アンリ
■Be My Valentine.の後日談
--------------------------
3月14日。
ジョシュアが部屋に戻ると、
窓際に花が飾られていた。
紫のチューリップが1輪、
青い花瓶に生けられている。
見覚えのある青。
バレンタインデーに、花と一緒にプレゼントしたものだ。
「アンリ…」
ジョシュアの胸が温かくなっていく。
バレンタインのお返しが来るとは思っていなかった。
青い花瓶に触れる。
「あれ…?」
花瓶には水が入っていなかった。
アンリが入れ忘れたのだろうか。
そんな小さなミスをするような彼ではないのだが。
アンリはどちらかというと完璧主義だ。
彼の行動には全て意味がある。
全か無か、という考え方を好み、無駄なことには手を出したがらない。
――いつか失うと解っているのに、花を飾る人の気が知れないよ。
バレンタインに花をプレゼントした時も、そう言われた。
アンリが慣れないプレゼントを用意するのに、
ひとつだけミスを犯したのだろうか。
彼に「水が入っていなかったよ」と伝えたら、
どんな表情を見せてくれるだろう。
「あっそう」と言って視線を反らされるか、
「悪かったね」と言って不貞腐れるか。
ジョシュアは、くすくすと笑う。
「花瓶までお返しされるとはね」
こうしてプレゼントを突き返されることさえ微笑ましい。
おそらくは、貰った花瓶の扱いに困った末の結論だろう。
俺があげた花はもう枯れてしまった筈だ。
その後、アンリは自分で花を買って飾る気にはなれなかったのだろう。
花は枯れるから嫌いだと言っていた。
それなのに、俺の為に花を選んでくれた。
こんなこと、いつから考えていたんだろう?
花は何処で見つけたの?
選ぶのに時間は掛かったかい?
これに決めた理由は教えてくれる?
一体どんな顔をして、この花を手に取った?
紫の花。
プレゼントにしては、毒々しい色だけれど。
明るい鮮やかな色は選べなかったのかもしれない。
あるいは自嘲の意味を込めているのか。
どんな香りがするのかと、
ジョシュアは花に顔を近付ける。
香りがしない。
「この花…イミテーション…?」
近くで見なければ生花と見紛う程、
精巧に造られた花だった。
青い花瓶がきらりと光る。
やはり全てに意味があったようだ。
「…イミテーションに水は必要ない、か」
ジョシュアは、アンリの部屋へ向かう。
彼はいつものように、本を読んでいた。
「僕に何の用?」
聞きたいことも言いたいことも山程あった。
言葉では伝え切れない。
何から伝えて良いのか解らない。
最初に零れた言葉は一番シンプルなものだった。
「ありがとう、アンリ」
彼は本から目を離さない。
「借りを作るのが嫌だから、返しただけだよ」
「とても嬉しいよ。こんなに素敵な贈り物を君から貰えるなんて」
「花1本でそんなに喜べるなんて、幸せ者だね」
「紫のチューリップ、花言葉は永遠の愛、だからね」
「へえ。知らなかった」
「では何故、あの花を選んだんだい?」
「別に。意味なんか無いよ。たまたま目に入っただけ」
「永遠に枯れない花だから、だろう?」
「偽りの花、とは受け取らないの?」
「そうだね。自分を偽ることになっても、永遠を望んだ花だ。…君のように」
彼は言葉を返さない。
「アンリ、お返しをさせてくれないか?」
「お返しにお返しは要らないよ」
「では、あと一言だけ、良い?」
「言いたければ、言えば」
「俺の想いも永遠に枯れないよ」
fin
■Be My Valentine.の後日談
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3月14日。
ジョシュアが部屋に戻ると、
窓際に花が飾られていた。
紫のチューリップが1輪、
青い花瓶に生けられている。
見覚えのある青。
バレンタインデーに、花と一緒にプレゼントしたものだ。
「アンリ…」
ジョシュアの胸が温かくなっていく。
バレンタインのお返しが来るとは思っていなかった。
青い花瓶に触れる。
「あれ…?」
花瓶には水が入っていなかった。
アンリが入れ忘れたのだろうか。
そんな小さなミスをするような彼ではないのだが。
アンリはどちらかというと完璧主義だ。
彼の行動には全て意味がある。
全か無か、という考え方を好み、無駄なことには手を出したがらない。
――いつか失うと解っているのに、花を飾る人の気が知れないよ。
バレンタインに花をプレゼントした時も、そう言われた。
アンリが慣れないプレゼントを用意するのに、
ひとつだけミスを犯したのだろうか。
彼に「水が入っていなかったよ」と伝えたら、
どんな表情を見せてくれるだろう。
「あっそう」と言って視線を反らされるか、
「悪かったね」と言って不貞腐れるか。
ジョシュアは、くすくすと笑う。
「花瓶までお返しされるとはね」
こうしてプレゼントを突き返されることさえ微笑ましい。
おそらくは、貰った花瓶の扱いに困った末の結論だろう。
俺があげた花はもう枯れてしまった筈だ。
その後、アンリは自分で花を買って飾る気にはなれなかったのだろう。
花は枯れるから嫌いだと言っていた。
それなのに、俺の為に花を選んでくれた。
こんなこと、いつから考えていたんだろう?
花は何処で見つけたの?
選ぶのに時間は掛かったかい?
これに決めた理由は教えてくれる?
一体どんな顔をして、この花を手に取った?
紫の花。
プレゼントにしては、毒々しい色だけれど。
明るい鮮やかな色は選べなかったのかもしれない。
あるいは自嘲の意味を込めているのか。
どんな香りがするのかと、
ジョシュアは花に顔を近付ける。
香りがしない。
「この花…イミテーション…?」
近くで見なければ生花と見紛う程、
精巧に造られた花だった。
青い花瓶がきらりと光る。
やはり全てに意味があったようだ。
「…イミテーションに水は必要ない、か」
ジョシュアは、アンリの部屋へ向かう。
彼はいつものように、本を読んでいた。
「僕に何の用?」
聞きたいことも言いたいことも山程あった。
言葉では伝え切れない。
何から伝えて良いのか解らない。
最初に零れた言葉は一番シンプルなものだった。
「ありがとう、アンリ」
彼は本から目を離さない。
「借りを作るのが嫌だから、返しただけだよ」
「とても嬉しいよ。こんなに素敵な贈り物を君から貰えるなんて」
「花1本でそんなに喜べるなんて、幸せ者だね」
「紫のチューリップ、花言葉は永遠の愛、だからね」
「へえ。知らなかった」
「では何故、あの花を選んだんだい?」
「別に。意味なんか無いよ。たまたま目に入っただけ」
「永遠に枯れない花だから、だろう?」
「偽りの花、とは受け取らないの?」
「そうだね。自分を偽ることになっても、永遠を望んだ花だ。…君のように」
彼は言葉を返さない。
「アンリ、お返しをさせてくれないか?」
「お返しにお返しは要らないよ」
「では、あと一言だけ、良い?」
「言いたければ、言えば」
「俺の想いも永遠に枯れないよ」
fin
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