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Marginal Prince Short Story
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■ソクーロフ×姉貴(新婚モード)+アイヴィー ※ドリーム機能版はこちら

##NAME1##は新市街まで夕食の買い物に来ていた。
聖アルフォンソ島の新市街には大型のショッピングモールがある。
その一階には食品フロアがあり、品物を見ながら夕食のメニューを決めようと思っていた。
鮮魚コーナーの前を通った時、特売品が目に入った。
今日はエビが安いようだ。それを見て、メニューが決まった。よし。今夜はエビチリ。
「あれ? ##NAME1##ちゃん?」
名を呼ばれて振り返る。
「あっ、やっぱり##NAME1##ちゃんだっ」
そう言って嬉しそうに笑ったのは、金色の長髪をした背の高い男性。
タクシードライバー兼警備司令官のアイヴィーだ。
「##NAME1##ちゃんもお買い物?」
はい、と答える。
「そっか。俺もだよ。週に一度の買い出し。今日休みだから」
ショッピングカートには、一週間分らしい食材が入っていた。
そう言えば、今日の彼はネクタイをしていない。
ラフなシャツにダメージジーンズが似合ってる。
「##NAME1##ちゃん、今日の晩御飯は……エビ?」
はい。今夜エビチリにしようと思って、と言いながら、
まだ手に持ったままだった剥きエビを買い物カゴに入れる。
アイヴィーはポリポリと頬を掻きながら、
「……そっか。ソクちゃん、エビチリ好きだもんね」
独り言のようにポツリと呟く。
「なんか、##NAME1##ちゃんは、ホントにソクちゃんのお嫁さんなんだね」
一か月前、##NAME1##はソクーロフ博士と結婚した。
現在は旧市街にある新居で、ラブラブの新婚生活を送っている。
「あ、ねえ、##NAME1##ちゃん」
アイヴィーに呼ばれて、顔を上げる。
「ここまで何で来たの? バス? 歩き?」
バスです、と答えた。
「良かったら、家まで車で送ろっか?」


買い物を終えた後、アイヴィーと二人で駐車場に来た。
彼の車は、メタリック・ブラックのオープンカー、BMWカブリオレだった。
「##NAME1##ちゃん、荷物、貸して? 後ろに入れるよ」
荷物を受け取ったあとは、タクシードライバーだからか、自然に車のドアを開けてくれた。
シートは黒の本革だ。後ろで荷物を入れているアイヴィーの独り言が微かに聞こえた。
「##NAME1##ちゃんと会えるなら、アストンマーチンで来るんだったかなー」

アイヴィーが運転席に座る。
にこりと笑いながら、タクシードライバーの台詞を口にした。
「じゃーお客さん、どちらまで?」
最近やっとソラで言えるようになった住所を伝えた。
「えっ、##NAME1##ちゃんち、あそこなの!?
あの辺めっちゃ高級住宅街じゃん。スゴイなあ」
そうらしいことは##NAME1##も薄々気がついていた。エンジンがかかる。
「じゃ、出発しまーす」
ショッピングモールの駐車場を出て、街道を走る。
オープンカーだけあって、風を肌で感じる。爽快だ。
青空の下を走るオープンカーが、こんなに気持ち良いものだとは思わなかった。
派手な車が視界に入った。白とピンクの水玉。目立つワゴン車が広場に停まっている。
「ああ、あれはアイスクリームの移動販売車だよ」
丁度、なんだろうと思っている時に、アイヴィーが答えをくれた。
「生徒を乗せてる時に、あの車見かけると、『追いかけろー!』ってよく言われるんだ」
生徒にも人気があるらしい。
「##NAME1##ちゃんも食べてみる? マージナルプリンス御用達のアイスクリーム」


中央に噴水がある広場。
その入口付近にピンクと白の水玉模様のワゴン車が停まっている。
アイスクリームの移動販売車に乗っていたのは、白いキャップを被ったおじいさんだった。
よく日焼けしている。60歳前後だろうか。実年齢より若々しく見えるタイプかもしれない。
「いらっしゃい、ああ、アイヴィー。毎度どうも」
「こんちは、アイスじーさん。えっとー、俺はクッキー&クリーム。##NAME1##ちゃんは?」
アイスクリームは横に10、縦に2列並んでおり、計20種類。
悩む。どれも美味しそうだが、あれにしようか、これにしようか。
「おやおや。アイヴィー、今日はプリンスじゃなくて、
プリンセスを連れてきてくれたのかい?
やっとカノジョができたんだねえ、いやあ、羨ましいもんだ」
「えっ!? ち、違うよ。彼女はソクーロフ博士のおヨメさん」
「そうなのかい? あ、そういやマージナルプリンス達が騒いでたっけ。
俺達のプリンセスが博士に奪われたとか、洗脳されたとかなんとか。
あ、お嫁さん本人の前で失礼なこと言っちゃったかな?
洗脳されて結婚なんてある筈ないよねえ」
##NAME1##は日本人的微笑を見せる。
「ん? 博士は今お仕事中だろ? ってことは、
お二人さん、アレかい? 不倫ってヤツかい?」
「ちょ、ヘンな想像しないでよ! 俺達はさっきたまたま会っただけなんだから!」
「ハハハッ。何、慌ててんだい、アイヴィー。
大丈夫さ。アイヴィーにはいつも世話になってるからね。
今日、お二人さんを見たことは忘れてあげるよ」
おじいさんは八重歯を見せながら笑ってた。

「はいよ」
しわくちゃの手からアイスクリームを受け取る。
シングルで頼んだ筈が、コーンの上には、アイスがダブルで乗っていた。
「##NAME1##ちゃん。それはこの店の名物みたいなモンでね。
じーさんが勝手にもういっこ乗せちゃうんだよ、ほら、俺のもダブルになってるでしょ?」
本当だ。クッキー&クリームの上にエスプレッソのアイスが乗っている。
「俺、マージナルプリンスと何度もここに来てるんだけどさあ、
じーさんが選んだアイスって、あいつらが嫌いな味だったことが一度もないんだよ。
フシギとさ、『それとどっちにしようか迷ってた』って言う奴が多いんだ。
え? ##NAME1##ちゃんも? マジで? もう、じーさん、なんで分かんの?」
「ハハハッ。いつも言ってるだろ? 企業秘密だよ」
「絶対教えてくんないんだもんなー」
「毎度ありー。お嬢さん、今度はダンナさんと一緒においで」
そう言えば、博士とアイスを食べたことは一度もなかった。
「##NAME1##ちゃん、あそこで食べよっか?」
噴水を囲むように配置されているベンチに二人で座った。
外で食べるアイスクリームは格別だ。おじいさんが選んでくれた味も美味しい。
##NAME1##は隣を見る。男の人がアイスクリームを食べている姿はなんだか可愛らしい。
白いアイスクリームを舐める赤い舌先がチラリと見えた。
「そういや俺、久し振りだわ、ここのアイス食べるの。てゆうか、二回目?」
それは意外だ。
「マージナルプリンスがアイス食べてる時は、タバコ吸ってるから」
成程。
「しかも女の子とアイスなんて、この島に来てからは一度もなかったし。
え? まさか。全然モテないよ。同僚もお客さんも野郎ばっかだしねー」
しかし、客観的に見てもアイヴィーはモテる要素を幾つも持っているし、
##NAME1##自身もアイヴィーは非常に魅力的な男性だと思う。
こんなにイケメンで性格も良いし、この若さで役職はトップなのだ。
博士に籠絡されなければ、彼を好きになっていたかもしれないと思うほどだ。
六年の間、島に居て、言い寄ってくる女性は一人も居なかったのだろうか。
彼は老若男女問わず島の人みんなに好かれている。
来るもの拒まず、誰とも親しい関係が築けるタイプだと思う。
けれど、##NAME1##の勘違いかもしれないが、
一定のラインより奥へは、誰も寄せ付けない雰囲気を感じるのだ。
プライベート過ぎる質問は受け付けないかんじがある。特に過去に関するもの。
例えば、島に来る前までは、どこで何をしてたのか、とか。


「うーわ。昔の貴族とか住んでそうなおうちだね」
アイヴィーは三階建ての高級マンションを見上げている。
「こんなとこに住んでたんだねー。ソクちゃんってば教えてくんないんだもん」
歴史ある建築物が並ぶ旧市街。
ここに##NAME1##とソクーロフが暮らす新居があった。
三階までアイヴィーが持ってくれた荷物。部屋の前で手渡された。
「今日は、##NAME1##ちゃんと会えたおかげでイイ休日になったよ。ありがと」
##NAME1##もアイヴィーと会えたことはラッキーだったし、楽しかった。
このままさよならしてしまうのは淋しい、できればもっと一緒に居たいと感じている自分が居た。
「あのさ、##NAME1##ちゃん。もし、また会えたら一緒に……」
アイスでも食べに行こうね、おそらくそう続けたかったのだろう。
けれど、アイヴィーは続く言葉を飲み込んだ。
「いや、ゴメン、何でもない」
彼も##NAME1##と同じ気持ちなのだろうか。
「それじゃあね」
気が付くと、##NAME1##はアイヴィーを呼び止めていた。振り向いた金髪が揺れる。
「えっ? なあに、##NAME1##ちゃん」
なんて言えばいいんだろう。二秒という短い間、##NAME1##は必死に考えた。
苦し紛れにでてきた言葉は、車で送ってくれたお礼にコーヒーでも飲んでいきませんか、だった。
そう言われたアイヴィーは目をぱちくりしていた。数秒の沈黙のあと、彼は口を開いた。
「……イイの?」
##NAME1##は頷く。
「じゃ、じゃあ、一杯だけ、ご馳走して貰っちゃってもイイかな?」
彼も拒まなかった。


「へーえ。中は結構、現代的なんだねー」
とりあえずリビングに案内し、ロングソファに座って貰った。
アイヴィーは興味深げにキョロキョロしている。
##NAME1##は買ってきたものを、手早く冷蔵庫に入れ、コーヒーの準備に取りかかる。
そこで博士が好きなコーヒー豆を買い忘れたことに気が付いた。
##NAME1##はインスタントで十分なのだが、博士はお気に入りの豆があるのだ。
今、家にあるのは##NAME1##用のインスタントコーヒーだけだ。大きなボトルを見せながら、
これしかないんですけど良いですか、とあまり意味のない質問をする。
「うん。あ、そのコーヒー、俺んちにあるのとおんなじだ。それ、安いしウマイよね」
アイヴィーとは感覚が近いようだ。ちょっと嬉しかった。
グラスに入れたコーヒー色の粉を水で溶かす。自分で作る時より氷を二個多く入れた。
テーブルに置こうとした時、派手に水を零した音と派手にガラスが割れた音がした。
グラスを床に落としてしまった。アイヴィーの服を濡らさなかったのは幸いだったが、
アイスコーヒーが一杯分まるまる零れ、フローリングにコーヒー色の平べったい水たまりができた。
##NAME1##はグラスの破片を拾おうとした。
「##NAME1##ちゃん、手で触っちゃダメ!」
人差し指から血が滲んでいた。
「俺が片付けるから、##NAME1##ちゃんは――イタッ」
床に着いた手が跳ねる。
グラスが落ちた位置より距離があるのに、そこにも破片が飛んだらしい。
アイヴィーの右の薬指から赤い雫が見えている。
二人とも指に怪我をしてしまった。顔を見合った二人は、同時に笑っていた。

気を付けて周囲を掃除したあと、指の手当てをした。
##NAME1##は立派な救急箱を開ける。博士が自宅用として用意してくれたものだ。
確か一番上に絆創膏が入っていた筈である。
以前、##NAME1##が包丁で指を少しだけ切ってしまった時、
博士はここから絆創膏を出してくれた。
大した傷ではなかったのに、まるで大怪我のような扱いをされたっけ。
絆創膏はたくさんあった。これなら二枚くらい使っても大丈夫だろう。
##NAME1##は自分の人差し指に巻いたあと、アイヴィーの指にも絆創膏を巻いた。
「……あ、ありがと、##NAME1##ちゃん」
##NAME1##は彼の分のアイスコーヒーを入れ直す為、キッチンに向かった。

アイスコーヒー片手に他愛のない話をした。
アイヴィーが傍に居ると、いつの間にかリラックスしていて、なんだか安心できた。
二人で笑い合っている時間は、平和そのもので、とても心地の良い時間だった。
「ちょ、あれっ? 今何時!?」
気が付くと、窓の外は暗くなり始めていた。
「ヤバ、もうこんな時間か。長居しちゃってゴメン。俺、もう帰るね。
下手するとソクちゃんが帰ってきちゃう時間だし」
それはマズイ。
「##NAME1##ちゃん。あの、相談なんだけど、今日、俺がここに来たこと、
ソクちゃんにはナイショにしない? なんか怒られそうだし」
そうですね、と答えた。旦那様は、##NAME1##のこととなると束縛欲が強い。
次の瞬間、アラームのような音が聞こえた。
アイヴィーはその音で腕時計を見た。
デジタル時計は時刻ではなく地図のようなものを映していた。
「ありゃりゃあ」とアイヴィーが笑う。
続けて、電子音が鳴った。アイヴィーが携帯電話を取り出す。
サブディスプレイに表示された文字を確認してから、
「お呼び出しか。##NAME1##ちゃん、ちょっと電話出ても良いかな?」
はい、と答える。
「ありがと」と笑ったあと、一瞬で彼の顔つきが僅かに変わったように感じた。
普段の表情と変わらないようにも見えるが、
少しだけキリッとした隙のない雰囲気になったというか、
『休日モード』から『仕事モード』にスイッチングした瞬間を見た気がする。
「うん……うん……なら、俺もそっち行くわ。今、旧市街だから。……はーい。じゃ」
##NAME1##に聞こえたのはそれだけだったが、島に侵入者が来たという連絡のようだ。
侵入者を排除するのが警備組織の仕事であり、彼が最高責任者であるとは言え、容赦ない。
聞くまでもないことなのに##NAME1##は思わず、これからお仕事に行くんですか、と尋ねていた。
「ん、まあね」
週に一度のお休みの日なのに、とつい言ってしまう。
「しょうがないよ、そういうお仕事だし。
でも、今日のお客さんは大分空気読めてるほうだと思うよ?」
アイヴィーは立ち上がり、ドアに向かう。
死と背中合わせの仕事に向かう人は、笑顔を見せながら、
「それじゃあね、##NAME1##ちゃん。コーヒー、ごちそうさま」


アイヴィーが帰った後、##NAME1##は晩御飯の支度を始めたが、
彼の安否が気になって、料理の段取りを失敗してしまい、美味しくできるか自信がない。
テレビを付けても、この島のニュース番組は、今週のイベント紹介やグルメ情報など、
のどかな地域ニュースを伝えるばかりで、侵入者情報に関しては一切報じないのだ。
警備組織が島に住む全ての人間を守る為に、日夜働いていても、
何十人、何百人の侵入者から島を守ったとしても、その情報が表に出ることはない。
今こうしている間にも、アイヴィーは血を流しているかもしれないのに。
司令官に選ばれた彼の実力が、並でないのは解っているつもりだが、
さっきまで、ここに居て、笑っていた彼と、二度と会えなくなる可能性は、ゼロではない。


「ただいま」
エビチリが完成する前に旦那様が帰ってきてしまった。
料理を続けながら、「ごめんなさい。まだ晩御飯の用意ができていなくて」と謝った。
「いや、それは構わないんだがね」
博士の顔が見られない。
「脈が早い。緊張している、ね?」
博士に手首を掴まれた。博士の親指が##NAME1##の脈を計っている。
結婚後、何度もやられたことだが、まだ慣れない。
手首を捕らえていた手が人差し指に向かう。絆創膏を巻いた指だ。
「どうしたんだい? この指」
グラスを割ってしまったことだけを話した。その時、誰が来ていたかは伝えずに。
「そうか。これを選んだのは良い判断だったね。
これは主に医療関係者の間で、売買されるもので、一般にはあまり出回っていないものなんだ。
高機能の絆創膏だから、市販品の絆創膏より早く治してくれるよ」
絆創膏にも高機能なものと、そうでないものがあるのかと少し感心する。
「##NAME1##、一度、剥がしても良いかい?」
既に指は、しっかり捕らえられている。
「##NAME1##の綺麗な指に、ガラス片が残っていないか、この目で確かめたいんだ。いいね?」
YESしか選択肢がない雰囲気で、いつのまにか##NAME1##は頷いていた。
「剥がすよ?」
ピリピリと絆創膏が端から剥がされていく。超スローペースだ。
これならひと思いにペリッとやられたほうがマシではないだろうか。
そう思っていると、心を読まれたようなタイミングで、
「ゆっくり、丁寧に剥がさないと、皮膚組織を痛めてしまうからね?」
ただ絆創膏を取られるだけで、どうしてこんなにドキドキしなくてはいけないんだろう。
心臓が壊れそうだ。思わず漏れてしまった声を聞いて、博士が笑っている。
今すごく楽しそうな博士がコワイ。コワイのに。
イヤと言わないどころか、感情が高ぶり過ぎて、
エクスタシーに近いものを感じてしまっている自分は、もうどうしようもない。
絆創膏を剥がされたあとは、物凄い接写で人差し指を観察され、丁寧に丁寧に治療された。
「これでいい。明日また絆創膏を替えてあげるからね?」
##NAME1##には自分で絆創膏を替える権利がないようだ。


固定電話が鳴った。キッチンに居る##NAME1##が向かう前に、
「私が出るよ」
博士が受話器を取った。
「ソクーロフです。……解った。これから伺うよ。……いや、構わないよ今夜で。……うん……では」
それだけ言って博士は電話を切った。
急病の連絡なら症状を聞く。そうではない場合は警備からの要請だ。
##NAME1##は反射的に「アイヴィーさんから?」と尋ねてしまった。
「いいや。副司令官からだったが」
しまった、と##NAME1##は思った。
「##NAME1##? どうして、アイヴィーからだと思ったんだね?」
よく考えればアイヴィー相手にしては話し方が優しい。
先程、アイヴィーに休日出勤の連絡が来ていたから、つい彼からかと思い込んでしまった。
##NAME1##は少々しどろもどろになりながら、
追憶の塔に呼ばれたみたいだったからアイヴィーさんかと思ったと話した。
「成程。確かに、追憶の塔へのお招きの電話だった。さて、ではまた出掛けてくるよ」
意外にもそれ以上、追求されなくて##NAME1##はホッとした。
「帰りは遅くなるかもしれないから、##NAME1##は先に休んでくれて構わないよ。
私の帰りを待っていてくれるのは嬉しいけれど、そのせいで君の身体に悪い影響を及ぼしたくはないから」
ドアに向かう背中を追いかけ、お見送りをする。
「##NAME1##」
ドアを開ける前に、博士は振り向いた。
「すまない。せっかく今宵は私の好物を用意してくれたのに。今夜の分は明日頂くから」
すっと##NAME1##の頬に手を添える。唇に口付けを落とした。
「行ってくるよ」


「了解しました。こちらへご案内して下さい」
副司令官は内線電話の受話器を置いた。
「司令、ソクーロフ博士がお見えになったそうです」
「あ、ホント? 明日でも良かったのに」
「ええ。私もそう申し上げたのですが」
博士が独身でなくなった為、急ぎでなければ夜間の呼び出しは避けるよう配慮するようになっていた。
侵入者を捕らえたので、明日、自白をお願いしたい。
副司令官は電話にてソクーロフにそう伝えたのだが「今日で構わない」と言われたのだ。
まもなく追憶の塔の最上階にソクーロフは姿を現した。
「よっ、ソクーロフ。帰宅後に来て貰っちゃって悪いね。サンキュ」
「ああ」
「でも、明日でも良かったんだよ?」
「解っている。私の都合で来ただけだ。気にするな」
「都合? ま、まさか、##NAME1##ちゃんとケンカでもしたとか?」
「まさか。有り得ん」
「ハイハイ。ごちそーさまでーす」
アイヴィーの片手にソクーロフが注目した。
「どうしたんだ、その指」
「えっ!? うわっ、付けたままだった!」
絆創膏を巻いた薬指。アイヴィーは反射的にその指を隠した。
「絆創膏を付けたままだと、何かまずいのか?」
「い、いやー。全然、大した傷じゃないからさー。
あ、あのー、さっき、お仕事中にちょっと、やっちゃって」
「ほう。珍しいな、実力派の司令官にしては」
「い、いやー、そんなの買い被り過ぎだよー」
「傷口、私が診てやろうか?」
「いやいやいや! もう全然痛くないし、
ソクーロフ先生に診て貰うほどじゃないからホント!
俺なんかより、お客さん達の相手お願いしてもいいかなっ!?」
博士はアイヴィーから視線を外した。
「ああ、そうだったな」


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