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■ソクーロフ×アイヴィー
■原案:蔦様&呉羽
六月中旬の仕事帰り。アイヴィーとソクーロフは夕食をとる為、旧市街に寄った。
この日、二人が入った店はスペインバル。全てソファ席で、黒・赤・黄のソファがあった。
アイヴィー達は黒のソファに通され、飲み物から注文した。
「俺はカーニャ!」
カーニャとはスペイン語でグラスビールのことだ。
「うちでビール頼む時は、カーニャって言ってね!」
初来店した時に、店員のボーイからそう教わった。
以来、アイヴィーはビールを注文する際は毎回「カーニャ」と呼んでいた。
「ソクちゃんはー?」
「私は、このウイスキーを」
「あと、おつまみはー、とりあえずチーズの盛り合わせと、
タコのアヒージョと、トルティージャ(スペイン風オムレツ)で!」
「グラシアス!」
オーダーするごとにスペイン語で「ありがとう」と言ってくれる店だった。
飲み物とチーズが来ると、アイヴィーは早速身を乗り出して話し始めた。
「俺、昨日もサッカー見ちゃってさー、あ、見たのはね、アルゼンチン対」
「韓国、だろう?」
「え? ソクちゃん、なんで知ってんの?」
この前一緒に飲んだ時、ソクーロフはワールドカップに興味がない様子だった。
対するアイヴィーはビールを片手に観戦することが最近の楽しみだった。
「ソクちゃん、もしかして、昨日の試合、見てたの?」
「聞いていた。仕事の資料を作りながら、BGM代わりにな」
「そんなんで、試合の状況とか解んの?」
「解るさ。昨日のMVPを決めるなら、メッシだろうな」
「えー。ハットトリック決めたのはイグアインじゃん?」
両名ともアルゼンチンの選手だ。昨日は4対1で、アルゼンチンの圧勝。
その4点中、3点はイグアイン選手が決めた。残る1点はオウンゴール、
つまり相手チームが誤って味方ゴールに入れてしまった自殺点だった。
「ゴールを決めたのはイグアインだったが、メッシは4点中の3点に関与している。
ゴールに繋がるパスを出したり、オウンゴールを誘ったのも彼だった」
「ちょ、解説員ですか、あんたは! つーか、急に詳しくなり過ぎじゃない?」
酒を飲みながらサッカー談義をしていると、食べ物が来た。
「タコのアヒージョ、お待たせー」
アヒージョとは、スペインでは有名なおつまみ料理で、ガーリック炒めのことを言う。
小さめの黒いフライパンには、ぶつ切りのタコ。
刻んだガーリックがたっぷり入ったオリーブオイルにタコが浸かっていた。
「残ったオイルも、こっちのバゲットに付けて食べてみてね。
ガーリック味になってオイシイよ」
ボーイは薄切りにした小型フランスパンを横に置いていった。
アイヴィーは木のピンで差したタコを口に放る。
そのあとで美味そうにビールを飲んでいた。
「そういや、ソクちゃんは、パウル君って知ってる?」
「誰だ、それは」
「ヒトじゃないよ、タコ」
「タコ?」
「うん。ドイツの水族館に、占いダコのパウル君ってのが居てね?
ワールドカップ・ドイツ代表の試合を勝つか負けるか占ってるんだけど、
この前のドイツ対オーストラリアの試合を、ドイツが勝つって占ってて、
それが当たったってネットでニュースになってたんだ」
「タコがどうやって占うんだ?」
「ええっとねー、エサが入ってる箱を二つ、タコの水槽に入れるんだよ。
で、その箱にはドイツと、相手国の国旗が付いてんの。
パウル君がどっちの国旗が付いた箱を、先に開けるかで占ってるみたいよ?」
「タコが先に選んだ国が勝つというわけか。それで、タコがドイツ国旗を選んだと」
「そうそう」
ソクーロフは小馬鹿にしたように薄く笑った。
「平和なニュースだな。そんなもの偶然だろう」
「なんでさー。ちゃんと当たったんだよ?」
「生物学的に、タコは明度の区別はできても、色は殆ど識別できない筈だ」
「えっ?」
「ドイツの国旗は黒・赤・金の三色旗。他の国旗と比べて、
明度がはっきりした旗を好んだのだろう」
「ちょ、何いきなりタコ占いの謎、解いちゃってんの?」
「タコにサッカーの勝敗が解る筈がないだろう」
「むー。これだからインテリさんはヤだよねー、何でも理詰めでさー」
アイヴィーは頬を膨らませている。
「俺、パウル君はこれからも当ててくれると思う!」
「根拠は?」
「う、占いに根拠なんか要らないもん! 当たるから当たるの!」
「理屈になっていないな」
「パウル君の占いに根拠とか理屈とか要りませんー!」
ソクーロフはロックグラスを傾ける。
「やけにタコの肩を持つじゃないか?」
「だって、当たってんだもん。スゴイじゃん」
「では、賭けてみるか? ドイツの全試合、タコの占いが全て的中すると」
「全試合!? それって、一試合でもパウル君が外したら、賭けはソクちゃんの勝ちってこと?」
「ああ」
「お、俺が不利過ぎませんか、その賭け」
「賭けられないようだな。先程までの勢いはどうした。信じて貰えなくてタコも可哀相に」
「パウル君の実力を信じてないのはあんたでしょ? その賭け、やったろーじゃん!」
ソクーロフは微笑した。
「よし。では何を賭ける?」
「じゃあ、ビール一杯おごり券! 10枚綴りで!」
「乗った」
約一か月後。賭けの結果が出る時がきた。
2010年南アフリカW杯、決勝のカードはオランダ対スペイン。
タコのパウルは、世界中のメディアに見守られながら、優勝国をスペインと予想した。
試合は90分で勝敗が付かず、0対0のまま延長戦にもつれ込んだ。
そして迎えた後半11分、決定的な先制ゴールを決めたのはスペインだった。
翌日、アイヴィーはソクーロフに会うなり、開口一番にこう言った。
「ソクちゃん、試合見た!? スペインだよ、スペインの優勝!」
タコのパウルは、ドイツの全試合に加え、ドイツが出場しなかった決勝戦を含む、
全八試合の勝敗を見事に的中させた。
「ソクちゃん、ソクちゃん、俺との賭け、忘れてないよね?」
「ああ。ビール一杯おごり券、10枚綴りだろう?」
「やったー! ソクちゃんのオゴリでたくさん飲みにいけるー! パウル君ありがとー!」
その夜、アイヴィーはソクーロフを連れて、旧市街に向かった。
行き先は賭けをした日と同じ店。
「スペインが優勝したんだから、やっぱスペインバルでしょ!」
というアイヴィーの意見で、またこの店に来た。決勝戦を肴に酒が進む。
アイヴィーが、また空のグラスを掲げた。
「すみませーん、カーニャ、おかわりー」
スペインの優勝祝いと言って、今日のアイヴィーは最初から飛ばしていた。
しかし、彼の白い頬は既にほんのりとピンク色に染まっている。
「おい」
「んー? なあにー?」
とろんとした目で見上げられた。
「大分酔っているな、もう止めておけ」
ソクーロフは敢えて一度注意した。次にどんな台詞が返ってくるか予想した上で。
「えー。やだー。まだ飲めるー」
予想通りの言葉。ここでソクーロフは仕方ないなといった表情を見せる。
「それで終わりにしろ」
「はーい! ソクちゃんだいすきー!」
使い古された説得術が難なく成功した。
『ドア・イン・ザ・フェイス』などという名前まで付いているテクニックだ。
最初に、相手にとって不可能な要求を突き付け、そのあとでレベルを下げた要求を出す。
例えば一度目は100ユーロ貸して欲しいと頼み、
相手に断られたあとで、じゃあ10ユーロでいいからと提案するのだ。
この時、提案者が、本当に欲しいのは10ユーロである。
それを断られないようにする為に、敢えて事前に不可能な要求を繰り出すのだ。
そうすれば、相手は一回目の要求を断っている罪悪感と、
「自分の為に譲歩してくれた」と感じることで、二回目の要求を呑む確率が高くなる。
アイヴィーは欠伸して、ゴシゴシと目を擦った。
「なんか、ねむたくなってきたなあ」
彼が人前で欠伸をするのは珍しいことだ。普段なら欠伸は噛み殺している。
今の場合は、アルコールのせいかもしれないが。
時折アイヴィーがソクーロフに見せる幼い言動。
ソクーロフの観察によれば、年月を重ねるごとに、その回数は増えていた。
これも『子供返り』の一種だろうか、とソクーロフは考えていた。
身近な存在に必要以上に甘えたり、舌足らずな言葉遣いになるなど、
実年齢より子供の行動を見せること。
原因は、子供の頃に満たされなかった思いを取り戻そうとすること。
問題の多い家庭に生まれたり、親との関係が上手く築けなかった者が、
子供返りの症状を見せる場合があるという。
子供時代に子供らしく振る舞えなかったことで、
大人になっても、その内に子供が住んだままになってしまうのだ。
また、彼等が持つ特徴として、『慢性的に自己肯定感が低い』、『自分の感情を吐露しない』、
『他人と親密な関係が築けない』、『自分を愛せない』などが挙げられる。
今まで奥底に閉じ込められていた『内なる子供』を適度に表に出し、
子供の感情を発散させることは、ひとつのストレス解消になるのではないか。
特に彼は、若くして警備組織の司令官というトップに立ったアイヴィーは、
普段から部下や生徒達に頼りにされることで、
無意識のうちに、よりしっかりした大人であろうと気が張っている可能性がある。
「カーニャ、お待たせー」
「わーい。カーニャきたー」
両手でグラスを持ってグビグビと飲んでいた。
アイヴィーが気が付いた時、そこはスペインバルではなかった。
見慣れた天井。ベッドの上に居た。時計を見ると早朝の時間帯だった。
「あ……れ? 俺んち?」
頭を押さえる。鈍痛が走った。飲み過ぎたようだ。
どのくらい飲んだんだっけ、と昨夜の記憶を思い起こそうとする。
スペイン優勝記念に決勝戦トークで盛り上がったのは覚えてる。それから?
家にいつ、どうやって帰ってきたかが解らない。
海鳥の声が聞こえる。カーテンの隙間から真っ青な空が見えた。
「カーテン、閉めたっけ? 俺」
fin
■原案:蔦様&呉羽
六月中旬の仕事帰り。アイヴィーとソクーロフは夕食をとる為、旧市街に寄った。
この日、二人が入った店はスペインバル。全てソファ席で、黒・赤・黄のソファがあった。
アイヴィー達は黒のソファに通され、飲み物から注文した。
「俺はカーニャ!」
カーニャとはスペイン語でグラスビールのことだ。
「うちでビール頼む時は、カーニャって言ってね!」
初来店した時に、店員のボーイからそう教わった。
以来、アイヴィーはビールを注文する際は毎回「カーニャ」と呼んでいた。
「ソクちゃんはー?」
「私は、このウイスキーを」
「あと、おつまみはー、とりあえずチーズの盛り合わせと、
タコのアヒージョと、トルティージャ(スペイン風オムレツ)で!」
「グラシアス!」
オーダーするごとにスペイン語で「ありがとう」と言ってくれる店だった。
飲み物とチーズが来ると、アイヴィーは早速身を乗り出して話し始めた。
「俺、昨日もサッカー見ちゃってさー、あ、見たのはね、アルゼンチン対」
「韓国、だろう?」
「え? ソクちゃん、なんで知ってんの?」
この前一緒に飲んだ時、ソクーロフはワールドカップに興味がない様子だった。
対するアイヴィーはビールを片手に観戦することが最近の楽しみだった。
「ソクちゃん、もしかして、昨日の試合、見てたの?」
「聞いていた。仕事の資料を作りながら、BGM代わりにな」
「そんなんで、試合の状況とか解んの?」
「解るさ。昨日のMVPを決めるなら、メッシだろうな」
「えー。ハットトリック決めたのはイグアインじゃん?」
両名ともアルゼンチンの選手だ。昨日は4対1で、アルゼンチンの圧勝。
その4点中、3点はイグアイン選手が決めた。残る1点はオウンゴール、
つまり相手チームが誤って味方ゴールに入れてしまった自殺点だった。
「ゴールを決めたのはイグアインだったが、メッシは4点中の3点に関与している。
ゴールに繋がるパスを出したり、オウンゴールを誘ったのも彼だった」
「ちょ、解説員ですか、あんたは! つーか、急に詳しくなり過ぎじゃない?」
酒を飲みながらサッカー談義をしていると、食べ物が来た。
「タコのアヒージョ、お待たせー」
アヒージョとは、スペインでは有名なおつまみ料理で、ガーリック炒めのことを言う。
小さめの黒いフライパンには、ぶつ切りのタコ。
刻んだガーリックがたっぷり入ったオリーブオイルにタコが浸かっていた。
「残ったオイルも、こっちのバゲットに付けて食べてみてね。
ガーリック味になってオイシイよ」
ボーイは薄切りにした小型フランスパンを横に置いていった。
アイヴィーは木のピンで差したタコを口に放る。
そのあとで美味そうにビールを飲んでいた。
「そういや、ソクちゃんは、パウル君って知ってる?」
「誰だ、それは」
「ヒトじゃないよ、タコ」
「タコ?」
「うん。ドイツの水族館に、占いダコのパウル君ってのが居てね?
ワールドカップ・ドイツ代表の試合を勝つか負けるか占ってるんだけど、
この前のドイツ対オーストラリアの試合を、ドイツが勝つって占ってて、
それが当たったってネットでニュースになってたんだ」
「タコがどうやって占うんだ?」
「ええっとねー、エサが入ってる箱を二つ、タコの水槽に入れるんだよ。
で、その箱にはドイツと、相手国の国旗が付いてんの。
パウル君がどっちの国旗が付いた箱を、先に開けるかで占ってるみたいよ?」
「タコが先に選んだ国が勝つというわけか。それで、タコがドイツ国旗を選んだと」
「そうそう」
ソクーロフは小馬鹿にしたように薄く笑った。
「平和なニュースだな。そんなもの偶然だろう」
「なんでさー。ちゃんと当たったんだよ?」
「生物学的に、タコは明度の区別はできても、色は殆ど識別できない筈だ」
「えっ?」
「ドイツの国旗は黒・赤・金の三色旗。他の国旗と比べて、
明度がはっきりした旗を好んだのだろう」
「ちょ、何いきなりタコ占いの謎、解いちゃってんの?」
「タコにサッカーの勝敗が解る筈がないだろう」
「むー。これだからインテリさんはヤだよねー、何でも理詰めでさー」
アイヴィーは頬を膨らませている。
「俺、パウル君はこれからも当ててくれると思う!」
「根拠は?」
「う、占いに根拠なんか要らないもん! 当たるから当たるの!」
「理屈になっていないな」
「パウル君の占いに根拠とか理屈とか要りませんー!」
ソクーロフはロックグラスを傾ける。
「やけにタコの肩を持つじゃないか?」
「だって、当たってんだもん。スゴイじゃん」
「では、賭けてみるか? ドイツの全試合、タコの占いが全て的中すると」
「全試合!? それって、一試合でもパウル君が外したら、賭けはソクちゃんの勝ちってこと?」
「ああ」
「お、俺が不利過ぎませんか、その賭け」
「賭けられないようだな。先程までの勢いはどうした。信じて貰えなくてタコも可哀相に」
「パウル君の実力を信じてないのはあんたでしょ? その賭け、やったろーじゃん!」
ソクーロフは微笑した。
「よし。では何を賭ける?」
「じゃあ、ビール一杯おごり券! 10枚綴りで!」
「乗った」
約一か月後。賭けの結果が出る時がきた。
2010年南アフリカW杯、決勝のカードはオランダ対スペイン。
タコのパウルは、世界中のメディアに見守られながら、優勝国をスペインと予想した。
試合は90分で勝敗が付かず、0対0のまま延長戦にもつれ込んだ。
そして迎えた後半11分、決定的な先制ゴールを決めたのはスペインだった。
翌日、アイヴィーはソクーロフに会うなり、開口一番にこう言った。
「ソクちゃん、試合見た!? スペインだよ、スペインの優勝!」
タコのパウルは、ドイツの全試合に加え、ドイツが出場しなかった決勝戦を含む、
全八試合の勝敗を見事に的中させた。
「ソクちゃん、ソクちゃん、俺との賭け、忘れてないよね?」
「ああ。ビール一杯おごり券、10枚綴りだろう?」
「やったー! ソクちゃんのオゴリでたくさん飲みにいけるー! パウル君ありがとー!」
その夜、アイヴィーはソクーロフを連れて、旧市街に向かった。
行き先は賭けをした日と同じ店。
「スペインが優勝したんだから、やっぱスペインバルでしょ!」
というアイヴィーの意見で、またこの店に来た。決勝戦を肴に酒が進む。
アイヴィーが、また空のグラスを掲げた。
「すみませーん、カーニャ、おかわりー」
スペインの優勝祝いと言って、今日のアイヴィーは最初から飛ばしていた。
しかし、彼の白い頬は既にほんのりとピンク色に染まっている。
「おい」
「んー? なあにー?」
とろんとした目で見上げられた。
「大分酔っているな、もう止めておけ」
ソクーロフは敢えて一度注意した。次にどんな台詞が返ってくるか予想した上で。
「えー。やだー。まだ飲めるー」
予想通りの言葉。ここでソクーロフは仕方ないなといった表情を見せる。
「それで終わりにしろ」
「はーい! ソクちゃんだいすきー!」
使い古された説得術が難なく成功した。
『ドア・イン・ザ・フェイス』などという名前まで付いているテクニックだ。
最初に、相手にとって不可能な要求を突き付け、そのあとでレベルを下げた要求を出す。
例えば一度目は100ユーロ貸して欲しいと頼み、
相手に断られたあとで、じゃあ10ユーロでいいからと提案するのだ。
この時、提案者が、本当に欲しいのは10ユーロである。
それを断られないようにする為に、敢えて事前に不可能な要求を繰り出すのだ。
そうすれば、相手は一回目の要求を断っている罪悪感と、
「自分の為に譲歩してくれた」と感じることで、二回目の要求を呑む確率が高くなる。
アイヴィーは欠伸して、ゴシゴシと目を擦った。
「なんか、ねむたくなってきたなあ」
彼が人前で欠伸をするのは珍しいことだ。普段なら欠伸は噛み殺している。
今の場合は、アルコールのせいかもしれないが。
時折アイヴィーがソクーロフに見せる幼い言動。
ソクーロフの観察によれば、年月を重ねるごとに、その回数は増えていた。
これも『子供返り』の一種だろうか、とソクーロフは考えていた。
身近な存在に必要以上に甘えたり、舌足らずな言葉遣いになるなど、
実年齢より子供の行動を見せること。
原因は、子供の頃に満たされなかった思いを取り戻そうとすること。
問題の多い家庭に生まれたり、親との関係が上手く築けなかった者が、
子供返りの症状を見せる場合があるという。
子供時代に子供らしく振る舞えなかったことで、
大人になっても、その内に子供が住んだままになってしまうのだ。
また、彼等が持つ特徴として、『慢性的に自己肯定感が低い』、『自分の感情を吐露しない』、
『他人と親密な関係が築けない』、『自分を愛せない』などが挙げられる。
今まで奥底に閉じ込められていた『内なる子供』を適度に表に出し、
子供の感情を発散させることは、ひとつのストレス解消になるのではないか。
特に彼は、若くして警備組織の司令官というトップに立ったアイヴィーは、
普段から部下や生徒達に頼りにされることで、
無意識のうちに、よりしっかりした大人であろうと気が張っている可能性がある。
「カーニャ、お待たせー」
「わーい。カーニャきたー」
両手でグラスを持ってグビグビと飲んでいた。
アイヴィーが気が付いた時、そこはスペインバルではなかった。
見慣れた天井。ベッドの上に居た。時計を見ると早朝の時間帯だった。
「あ……れ? 俺んち?」
頭を押さえる。鈍痛が走った。飲み過ぎたようだ。
どのくらい飲んだんだっけ、と昨夜の記憶を思い起こそうとする。
スペイン優勝記念に決勝戦トークで盛り上がったのは覚えてる。それから?
家にいつ、どうやって帰ってきたかが解らない。
海鳥の声が聞こえる。カーテンの隙間から真っ青な空が見えた。
「カーテン、閉めたっけ? 俺」
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