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■ジョシュア×アンリ
ドアをノックしたが返事はなかった。
そろそろ日付が変わる時刻ではあるが、
もう眠っているかもしれない、とは思わなかった。
「ジョシュア、入るよ」
そう声を掛けて、アンリはドアを開けた。
ジョシュアの後ろ姿が目に入った。窓辺に一人で佇んでいる。
ガラスの向こうには夜の森。その上には月が見えた。
今日という日に、月が満ちた姿で輝いているのも、偶然ではないような気がした。
ジョシュア、と名を呼ぶと彼の肩が跳ねた。
「アンリ。いつからそこに」
「今だよ。ノックもしたんだけど?」
「そうだったのか。すまない、気が付かなくて。考えごとをしていたから」
アンリはベッドに腰掛ける。
「何、考えてたの?」
「今日は本当に幸せな誕生日だったなあと思って」
今日は7月28日。
ウーティス寮生はジョシュアのバースデーパーティを開いてくれた。
今年度の生徒代表であり、皆から慕われているジョシュアの誕生日とあって、
他の寮からもお祝いに駆け付けた生徒は多く、日中のパーティは盛大なものとなった。
夕食の時間には、ウーティス寮生のみで、改めてバースデーパーティが開かれた。
「俺、今年の誕生日のことは、一生忘れないと思う」
「そう」
ジョシュアの胸に、ある言葉が自然に浮かんだ。
脈絡がない台詞だと解ってはいるけれど、今伝えたいと感じた。
「ねえ、アンリ」
ジョシュアは、そのまま伝えた。
「ありがとう」
アンリの琥珀色の瞳が瞬く。
「何が」
「俺がアンリと出会ってから全部。君と同じ寮で暮らせて本当に良かった」
アンリは肩を竦めて、冷笑した。
「何それ。別れの台詞には、まだ早いんじゃない?」
「すまない。卒業は8月だからね」
ジョシュアは壁に掛けてあるカレンダーを眺めた。
今日は7月28日。あと3日で7月は終わる。
「だけど、すぐ8月になってしまうんだね」
アンリは、すっとベッドから立ち上がる。
無言でドアに向かうので、ジョシュアは少し慌てて呼び止めた。
「アンリ? そう言えば、どうして俺の部屋に?
何か、用事があったんじゃないのかい?」
アンリが振り向く。
「君に用事なんかない」
ドアを閉める前、アンリはジョシュアを見た。
目が合ったのは一瞬で、アンリの視線は少し上を向いた。
「おやすみ」
それだけ言って、アンリは部屋から出ていった。
勝手に開けられ、勝手に閉められたドアを、ジョシュアは暫し呆然と見ていた。
が、フッと息を洩らすと、一人、微笑んでいた。
ジョシュアは再び窓の外を見上げる。
金色の月光は、月桂樹の森を静かに照らしていた。
fin
ドアをノックしたが返事はなかった。
そろそろ日付が変わる時刻ではあるが、
もう眠っているかもしれない、とは思わなかった。
「ジョシュア、入るよ」
そう声を掛けて、アンリはドアを開けた。
ジョシュアの後ろ姿が目に入った。窓辺に一人で佇んでいる。
ガラスの向こうには夜の森。その上には月が見えた。
今日という日に、月が満ちた姿で輝いているのも、偶然ではないような気がした。
ジョシュア、と名を呼ぶと彼の肩が跳ねた。
「アンリ。いつからそこに」
「今だよ。ノックもしたんだけど?」
「そうだったのか。すまない、気が付かなくて。考えごとをしていたから」
アンリはベッドに腰掛ける。
「何、考えてたの?」
「今日は本当に幸せな誕生日だったなあと思って」
今日は7月28日。
ウーティス寮生はジョシュアのバースデーパーティを開いてくれた。
今年度の生徒代表であり、皆から慕われているジョシュアの誕生日とあって、
他の寮からもお祝いに駆け付けた生徒は多く、日中のパーティは盛大なものとなった。
夕食の時間には、ウーティス寮生のみで、改めてバースデーパーティが開かれた。
「俺、今年の誕生日のことは、一生忘れないと思う」
「そう」
ジョシュアの胸に、ある言葉が自然に浮かんだ。
脈絡がない台詞だと解ってはいるけれど、今伝えたいと感じた。
「ねえ、アンリ」
ジョシュアは、そのまま伝えた。
「ありがとう」
アンリの琥珀色の瞳が瞬く。
「何が」
「俺がアンリと出会ってから全部。君と同じ寮で暮らせて本当に良かった」
アンリは肩を竦めて、冷笑した。
「何それ。別れの台詞には、まだ早いんじゃない?」
「すまない。卒業は8月だからね」
ジョシュアは壁に掛けてあるカレンダーを眺めた。
今日は7月28日。あと3日で7月は終わる。
「だけど、すぐ8月になってしまうんだね」
アンリは、すっとベッドから立ち上がる。
無言でドアに向かうので、ジョシュアは少し慌てて呼び止めた。
「アンリ? そう言えば、どうして俺の部屋に?
何か、用事があったんじゃないのかい?」
アンリが振り向く。
「君に用事なんかない」
ドアを閉める前、アンリはジョシュアを見た。
目が合ったのは一瞬で、アンリの視線は少し上を向いた。
「おやすみ」
それだけ言って、アンリは部屋から出ていった。
勝手に開けられ、勝手に閉められたドアを、ジョシュアは暫し呆然と見ていた。
が、フッと息を洩らすと、一人、微笑んでいた。
ジョシュアは再び窓の外を見上げる。
金色の月光は、月桂樹の森を静かに照らしていた。
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