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Marginal Prince Short Story
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■シュヌーシア寮
ブラッディ・クリスマス01 続編
クラウスとテオが暮らしているのは、シュヌーシアという名前の第三学生寮。
放課後になると、寮生達は寮のサロンに集まってくる。
クラウスとテオも教科書を部屋に置いたあと、サロンにやってきた。
扉を開けると、部屋の中央には、天井まで届きそうな大きさのクリスマスツリー。
11月下旬に寮生みんなで飾り付けをしたツリーだ。
ちなみにツリーの用意、企画をしたのはテオである。

クラウスは邪魔そうにツリーを避けて歩きながら、
一人掛けのソファに着く。その隣の席にテオが座った。
一人の生徒がテレビのリモコンを握っており、
「何か面白いのやってないかなー」とチャンネルを変えていた。

サロンの扉が静かに開く。部屋に入ってきた少年は問題集とペンケースを持っていた。
サラサラの栗毛をした中等部一年生、ラビット・マルセロだ。
誰かを見つけ、サロンの隅にあるテーブルに向かった。
先に席に着いていた少年は、右手に持ったシャーペンを器用にクルクルを回していた。
ラビットが座ると、得意げにシャーペン回しの技を披露して、ラビットを苦笑させていた。

シュヌーシア寮の最高学年であるクラウスは、そんな下級生達の無言劇を遠目に見守ったあと、
ソファの側に置かれている新聞をバサリと広げた。

「アリシアだ! いつ見てもキレーだなー」

赤いロングドレスの女性がテレビに映り、チャンネル変えが止まった。
40歳手前だと感じさせない女性的なボディラインに、美しいブロンドの髪。
クリスマスソングが世界中でヒットした歌姫だ。

「歌手のアリシア・キャリーさんがクリスマスツアー初日当日に公演をキャンセル。
所属事務所は、アリシアさんの体調不良による公演延期と説明」

「へえー」

「アリシアはやっぱイイよなー。俺があと十年早く生まれてたら」

「十年早く生まれてたって、お前なんか見向きもされないって」

「なんだよー。そんなのわかんないだろー」

「けれど、心配だね。クリスマスと言えば彼女の季節だし、せっかくのクリスマスツアーなのに」

寮生達が歌手の話をしている中、
クラウスは手にしている新聞の端から、ある生徒の様子を確かめていた。
サロンのドアが開く。シュヌーシア寮のバトラーだ。
ゆるゆると甘い香りが流れてくる。

「皆様、『天使も惑う悪魔の誘惑』はいかがですか?」

わっと生徒が集まってくる。バトラーが持ってきたのは、
この時期、シュヌーシア寮では毎年大人気のホットチョコレートである。

「ありがとう、バトラー! ああ、その名の通り、なんて魅惑的な香りだ」

寮生達にホットチョコレートを配り終わると、バトラーは生徒代表の側にやってきた。

「クラウス様にはコーヒーをお持ち致しましょうか?」

甘いものが苦手なことを心得ているので、そう申し出たのだが、反応がない。

「クラウス様?」

ある生徒を見ていたクラウスが、やっとバトラーに気付く。

「え? ああ、すまん。どうした?」

バトラーは首を傾げながら、

「ええっと。あの、クラウス様も本日は『天使も惑う悪魔の誘惑』をお飲みになりますか?」

「いや無理だ。俺にはコーヒーを頼む」

「あ、はい。畏まりました」

クラウスは再び新聞に視線を戻す。内容は頭に入ってこない。
新聞の一点を見つめながら、先程見た生徒のこと考えていた。
目の前に広げている宿題が進んでいる様子はなかった。
不機嫌な顔をしながら、奴はシャーペンを回してた。


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