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■シュヌーシア寮
■ブラッディ・クリスマス06 続編
クラウスがレオンを追いかけ、辿り着いた先は海だった。
海辺には小型船が泊まっている。
赤いダウンの男に背を押され、レオンが船に向かって歩き出した。
クラウスは警備に連絡できないまま、ここまで追ってきた。
武器になる物もなく、一人でレオンを奪還できる保証はない。
しかし、今、自分が止めなくては、このまま連れて行かれる。
「おい、レオン」
クラウスは彼等の前に出ていった。
「一人でふらふら出歩くなと言った筈だぞ」
レオンは一瞬驚きの表情を見せたあと、こう言った。
「あんたには一人に見えんのかよ。二人だろ」
「こんな時に、くだらん口答えをするな」
「ん? なんかエラそうなガキが出てきたなあ」
男は胸元に派手なデザインが入ったダークグレイのシャツに、
ノースリーブの赤いダウンを着ている。
近くで見ると、年は三十代前半に見えた。
「このウゼエ学級委員長みたいなヤツ、坊ちゃんのガッコのヤツか?」
「ああ。うちの学校で一番エラそうにしてるヤツだ」
「ふうん。いきなり怒られて、坊ちゃんも可哀想になあ?」
「煩い。黙ってろ」
「おお、怖」
「学院へ戻るぞ、レオン」
クラウスが一歩近付くと、レオンは一歩後ろへ下がった。
「戻らない」
「何?」
レオンはクラウスを見上げて言った。
「俺は今日限りで聖アルフォンソ学院を退学する」
「何だと」
赤いダウンの男は薄く笑っていた。
「そういうことだ。行こうぜ、坊ちゃん」
「待て。誘拐など馬鹿な真似は止めたほうが身の為だぞ」
「誘拐じゃねえよ。聞いただろ?
俺は自主退学する坊ちゃんをお迎えに来ただけさ」
クラウスはレオンを見た。
「レオン。その男に何を言われた」
「何も言われてない」
「では退学する理由を言ってみろ」
「理由なんてない。退学したいから退学するんだ」
「嘘を吐け。理由もなく退学する筈がない」
「ほっときゃ良いだろ、俺のことなんか」
「何を言われたと聞いている」
赤いダウンの男は笑い出した。
「そんなに知りたきゃ、俺が教えてやるよ、学級委員長」
男は不敵な笑みを浮かべて言った。
「坊ちゃんが来ねえなら、学院ごと皆殺しにしてやるって言ったのさ」
クラウスは拳を握り締める。
「馬鹿なことを」
「邪魔をするなら、お前も殺してやる」
銃がクラウスに向けられる。
「尻尾巻いて逃げなよ、学級委員長。そうすればお前は見逃してやるぜ?」
クラウスは一歩も動かず、男を睨んでいた。
「レオンは渡さない」
「じゃあ、死ぬか?」
男が銃の安全装置に指をかけようとした時、
銃口が、突如、左に向き、二発の銃声がした。
男が持っていた銃が地面に落ちる。
と同時に、即座にクラウスが動く。
銃を右側に蹴飛ばしたあと、レオンを抱えるようにして奪い返した。
「ったく。ムチャし過ぎなんじゃないの、クラウスー」
銃を仕舞いながら、右側から歩いてきたのは髪の長い男。
警備組織司令官のアイヴィーだ。
その後方で、先程クラウスが蹴った銃を副司令官が拾った。
「到着が遅れ、申し訳ございません、クラウス様」
拾い上げた銃を持ち主の男に向けた。
「さあ、観念して降伏しなさい」
警備組織の隊員が十数名揃っていた。屈強な男達に周囲を固められ、男は笑った。
「こんなに囲まれちゃー仕方ねえかー。わーった。諦めるよ」
「何?」とクラウス。
「貴方達、何をぼうっとしているんです。身柄を拘束して下さい」
副司令官の号令で、部下達が男を確保した。
「お怪我はございませんか、クラウス様、レオン様」
副司令官がクラウス達に歩み寄る。
「ああ。俺はな。レオン、お前は?」
レオンは無視していた。
「怪我はないようだ。しかし、クロイツ。俺からは連絡できなかったのに、
よく俺達がここに居ると解ったな?」
「はい。監視チームが小型船の侵入を確認しておりましたし、
シュヌーシア寮から、クラウス様とレオン様が居ないとの通報もございました」
「あいつらが」
「ええ。お二人のことをとても心配しておいででした。
誰か、シュヌーシア寮にお二人はご無事だとご連絡差し上げて下さい」
了解しました、と部下の一人が言った。
「クラウス様。我々の到着が遅れたことが原因だと重々承知の上で、申し上げます。
今後、お一人で危険な行動に出ることは、謹んで頂けないでしょうか」
「俺は生徒代表だ。生徒を守る為なら、俺はどうなろうとも構わん」
「貴方にお言葉を返すようなことは本意ではありませんが、
生徒代表も、守られるべき『生徒』の一人。
我々が何の為に存在しているか、どうかお忘れなきようお願い致します」
クラウスは少し黙ったあと、こう言った。
「確かに、仕方ない状況だったとは言え、軽率な行動だったとは思う。
警備の到着が少しでも遅れていた場合、俺もレオンも危なかったな。
すまなかった。以後、気を付ける」
「クラウス様」
副司令官は珍しく微笑した。
「ご理解頂き、ありがとうございます。
私共のほうこそ申し訳ございませんでした。以後も精進して参ります」
「ああ、今後もよろしく頼む」
「んー。違うなー」
一人、首を傾げたのは長髪の司令官だった。
何がです、と副司令官が尋ねる。
「あのお兄さんさ、ソクーロフが言ってた犯人像と、違うんだよねー」
「ドクターは、プロファイリングまで可能なんですか?」
「いや『ただの勘だ』って言ってたけど」
「では、ドクターの勘が外れたということでしょう。
現に彼は、レオン様を誘拐しようとしました。
それなのに彼は『ブラッディ・クリスマス』ではないと?」
「確かめてみようか」
そう言って、アイヴィーは歩いていった。
「ねえ、お兄さんさ」
赤いダウンの男の前で屈む。
「一番好きな歌手、誰?」
男はニヤリと笑った。
「アリシア・キャリー、ではないぜ? 俺は、このガキにも興味ない」
「何ですって」副司令官が言う。「では誰が『ブラッディ・クリスマス』なんです?」
「もう遅いんだよ」
男はクククと肩を震わせた。
「『ブラッディ・クリスマス』は誰かって?
それは、今、学校を爆破しようとしている奴さ!」
「爆破だと?」
「あと5分でドカーンだ! ざまあみろ!」
レオンが男を鋭く睨み付ける。
「俺を騙したのか」
「ああ、そうさ。坊ちゃんが来ても来なくても、学校はブッ飛ばす予定だったんだよ」
「てめえっ」
「あのアリシア・マニアも可哀想になあ!
爆破スイッチ押した瞬間に、自分も吹っ飛ばされるってことを知らされてねーんだからよ!
あれはスイッチを押してから180秒後に爆発する時限式なんかじゃねえ。
ヤツは何も知らないまま、自分の血を浴びて死ぬのさ!」
連絡します、と即座に副司令官が言って、携帯電話で学院付近の警備員に警告を伝える。
男は笑っていた。
「ハハハッ! これであの方も喜んで下さる! 王子もオタクもみんな吹っ飛べ!」
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■ブラッディ・クリスマス06 続編
クラウスがレオンを追いかけ、辿り着いた先は海だった。
海辺には小型船が泊まっている。
赤いダウンの男に背を押され、レオンが船に向かって歩き出した。
クラウスは警備に連絡できないまま、ここまで追ってきた。
武器になる物もなく、一人でレオンを奪還できる保証はない。
しかし、今、自分が止めなくては、このまま連れて行かれる。
「おい、レオン」
クラウスは彼等の前に出ていった。
「一人でふらふら出歩くなと言った筈だぞ」
レオンは一瞬驚きの表情を見せたあと、こう言った。
「あんたには一人に見えんのかよ。二人だろ」
「こんな時に、くだらん口答えをするな」
「ん? なんかエラそうなガキが出てきたなあ」
男は胸元に派手なデザインが入ったダークグレイのシャツに、
ノースリーブの赤いダウンを着ている。
近くで見ると、年は三十代前半に見えた。
「このウゼエ学級委員長みたいなヤツ、坊ちゃんのガッコのヤツか?」
「ああ。うちの学校で一番エラそうにしてるヤツだ」
「ふうん。いきなり怒られて、坊ちゃんも可哀想になあ?」
「煩い。黙ってろ」
「おお、怖」
「学院へ戻るぞ、レオン」
クラウスが一歩近付くと、レオンは一歩後ろへ下がった。
「戻らない」
「何?」
レオンはクラウスを見上げて言った。
「俺は今日限りで聖アルフォンソ学院を退学する」
「何だと」
赤いダウンの男は薄く笑っていた。
「そういうことだ。行こうぜ、坊ちゃん」
「待て。誘拐など馬鹿な真似は止めたほうが身の為だぞ」
「誘拐じゃねえよ。聞いただろ?
俺は自主退学する坊ちゃんをお迎えに来ただけさ」
クラウスはレオンを見た。
「レオン。その男に何を言われた」
「何も言われてない」
「では退学する理由を言ってみろ」
「理由なんてない。退学したいから退学するんだ」
「嘘を吐け。理由もなく退学する筈がない」
「ほっときゃ良いだろ、俺のことなんか」
「何を言われたと聞いている」
赤いダウンの男は笑い出した。
「そんなに知りたきゃ、俺が教えてやるよ、学級委員長」
男は不敵な笑みを浮かべて言った。
「坊ちゃんが来ねえなら、学院ごと皆殺しにしてやるって言ったのさ」
クラウスは拳を握り締める。
「馬鹿なことを」
「邪魔をするなら、お前も殺してやる」
銃がクラウスに向けられる。
「尻尾巻いて逃げなよ、学級委員長。そうすればお前は見逃してやるぜ?」
クラウスは一歩も動かず、男を睨んでいた。
「レオンは渡さない」
「じゃあ、死ぬか?」
男が銃の安全装置に指をかけようとした時、
銃口が、突如、左に向き、二発の銃声がした。
男が持っていた銃が地面に落ちる。
と同時に、即座にクラウスが動く。
銃を右側に蹴飛ばしたあと、レオンを抱えるようにして奪い返した。
「ったく。ムチャし過ぎなんじゃないの、クラウスー」
銃を仕舞いながら、右側から歩いてきたのは髪の長い男。
警備組織司令官のアイヴィーだ。
その後方で、先程クラウスが蹴った銃を副司令官が拾った。
「到着が遅れ、申し訳ございません、クラウス様」
拾い上げた銃を持ち主の男に向けた。
「さあ、観念して降伏しなさい」
警備組織の隊員が十数名揃っていた。屈強な男達に周囲を固められ、男は笑った。
「こんなに囲まれちゃー仕方ねえかー。わーった。諦めるよ」
「何?」とクラウス。
「貴方達、何をぼうっとしているんです。身柄を拘束して下さい」
副司令官の号令で、部下達が男を確保した。
「お怪我はございませんか、クラウス様、レオン様」
副司令官がクラウス達に歩み寄る。
「ああ。俺はな。レオン、お前は?」
レオンは無視していた。
「怪我はないようだ。しかし、クロイツ。俺からは連絡できなかったのに、
よく俺達がここに居ると解ったな?」
「はい。監視チームが小型船の侵入を確認しておりましたし、
シュヌーシア寮から、クラウス様とレオン様が居ないとの通報もございました」
「あいつらが」
「ええ。お二人のことをとても心配しておいででした。
誰か、シュヌーシア寮にお二人はご無事だとご連絡差し上げて下さい」
了解しました、と部下の一人が言った。
「クラウス様。我々の到着が遅れたことが原因だと重々承知の上で、申し上げます。
今後、お一人で危険な行動に出ることは、謹んで頂けないでしょうか」
「俺は生徒代表だ。生徒を守る為なら、俺はどうなろうとも構わん」
「貴方にお言葉を返すようなことは本意ではありませんが、
生徒代表も、守られるべき『生徒』の一人。
我々が何の為に存在しているか、どうかお忘れなきようお願い致します」
クラウスは少し黙ったあと、こう言った。
「確かに、仕方ない状況だったとは言え、軽率な行動だったとは思う。
警備の到着が少しでも遅れていた場合、俺もレオンも危なかったな。
すまなかった。以後、気を付ける」
「クラウス様」
副司令官は珍しく微笑した。
「ご理解頂き、ありがとうございます。
私共のほうこそ申し訳ございませんでした。以後も精進して参ります」
「ああ、今後もよろしく頼む」
「んー。違うなー」
一人、首を傾げたのは長髪の司令官だった。
何がです、と副司令官が尋ねる。
「あのお兄さんさ、ソクーロフが言ってた犯人像と、違うんだよねー」
「ドクターは、プロファイリングまで可能なんですか?」
「いや『ただの勘だ』って言ってたけど」
「では、ドクターの勘が外れたということでしょう。
現に彼は、レオン様を誘拐しようとしました。
それなのに彼は『ブラッディ・クリスマス』ではないと?」
「確かめてみようか」
そう言って、アイヴィーは歩いていった。
「ねえ、お兄さんさ」
赤いダウンの男の前で屈む。
「一番好きな歌手、誰?」
男はニヤリと笑った。
「アリシア・キャリー、ではないぜ? 俺は、このガキにも興味ない」
「何ですって」副司令官が言う。「では誰が『ブラッディ・クリスマス』なんです?」
「もう遅いんだよ」
男はクククと肩を震わせた。
「『ブラッディ・クリスマス』は誰かって?
それは、今、学校を爆破しようとしている奴さ!」
「爆破だと?」
「あと5分でドカーンだ! ざまあみろ!」
レオンが男を鋭く睨み付ける。
「俺を騙したのか」
「ああ、そうさ。坊ちゃんが来ても来なくても、学校はブッ飛ばす予定だったんだよ」
「てめえっ」
「あのアリシア・マニアも可哀想になあ!
爆破スイッチ押した瞬間に、自分も吹っ飛ばされるってことを知らされてねーんだからよ!
あれはスイッチを押してから180秒後に爆発する時限式なんかじゃねえ。
ヤツは何も知らないまま、自分の血を浴びて死ぬのさ!」
連絡します、と即座に副司令官が言って、携帯電話で学院付近の警備員に警告を伝える。
男は笑っていた。
「ハハハッ! これであの方も喜んで下さる! 王子もオタクもみんな吹っ飛べ!」
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