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Marginal Prince Short Story
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■シュヌーシア寮
ブラッディ・クリスマス07 続編
同じ頃、聖アルフォンソ学院。
早朝のこの時間、キャンパス内を歩いている生徒は居ない。
グレイのハンチング帽に同色の作業着を身に付けた男が居るくらいだ。
彼は一人で、月桂樹のクリスマスツリーを見上げていた。

足音が聞こえ、彼はそちらを振り向く。
森のほうから一人の男がキョロキョロしながら歩いてくる。
酷く落ち着きがない様子で、黒のキャリーバッグを引いていた。
おそらく二十代後半、学院の生徒ではない。
作業着の男はハンチング帽を被り直し、彼に話しかけた。

「おはようございます」

相手の肩がビクリと跳ねた。

「もしや、本日ご到着予定のお客様でしょうか?」

「ああ、はい。そ、そうです」

「遠いところ、ようこそいらっしゃいました」

ハンチング帽を取り、さっと挨拶する。

「私は森番のバロウズと申します。
よろしければ、校舎までご案内致しましょう。お手荷物をお持ち致します」

手を差し出したが、相手は黒のキャリーバッグを渡さなかった。

「い、いえ。結構です」

「左様でございましたか。失礼致しました」

「では、さようなら」

客人が森番の前から立ち去ろうとする。

「ああ、申し訳ございません」

森番が言った。

「お客様がいらっしゃるのは来週でございました」

「な、何だと、貴様」

「誠に恐れ入りますが、聖アルフォンソ学院は、
ゲスト登録のない方は立ち入り禁止とさせて頂いております。
お客様は、どのようなご用件で学院にいらしたのでしょう」

男は奥歯を噛み締め、絞り出すような声で言った。

「王子だっていうガキを殺しに来たんだよ。頼まれたんだ。
そうすれば、アリシアの子供を殺してくれるって」

「何故、交換殺人など」

「アリシアの力になりたいからに決まってんだろ!
アリシアから悲しみを取り除いてやりたいんだ!」

「悲しみ?」

「アリシアは子供が居るから悲しんでるんだ。
だから、悲しい歌しか歌えなくなったんだ。会えないガキが居るから」

男は少し上擦った声で、叫ぶように言った。

「僕が彼女の悲しみを取り除いてやるんだ!
彼女には、いつも幸せでいて貰いたいんだよ!」

「成程」

バロウズは頷いた。

「お子様が亡くなった時、一番悲しむのは誰なのか、
貴方にはお解りにはならないのですね」

「お前に彼女の何が解る? 僕はずっと彼女を見てきた。
僕が一番彼女のことを理解してるんだ! どけえええー!」

男は荷物を置いて、森番に向かって襲いかかってきた。
右手の先が銀色に光る。ナイフだ。

向かってくる右手を、森番は両手で捕らえ、そのまま背負い投げた。
男の身体は空中で弧を描き、ナイフと共に地面に叩き付けられた。

男が気を失ったことを確認したあと、森番は黒いキャリーバッグを開けた。
そこには、白い粘土のような物と円筒状の部品で組み立てられてた物体。
それに四角い機械が取り付けられていた。森番が呟く。

「C-4、ですか」

すると、月桂樹の陰から、森に棲む動物が一匹ぴょんぴょんと近付いてきた。
綺麗な薄茶色の毛をした垂れ耳ウサギだ。

「エリザベス? 来てはいけません!」

大きな声にウサギの動きが止まる。
森番は慎重にキャリーバッグの中を調べながら、

「これはコンポジション4。軍などで使用される爆薬です。
もし起爆したら、貴女はウサギの丸焼きになってしまいますよ」

ウサギは丸い目をパチパチしている。

「エリザベス。私が上手く起爆を解除できたら」

森番はウサギを見つめ、そっと尋ねた。

「今年も一緒に、クリスマスを過ごして頂けますか?」

ウサギは森番を見上げ、鼻をひくひく動かしていた。
森番は優しい顔になる。

そして、爆薬に手を伸ばし、円筒状の部品を引き抜いた。


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