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Marginal Prince Short Story
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■アイヴィー×シルヴァン シルヴァン×ハルヤ
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「てゆうか、デッド・プリンスの合宿って、なんなの?」

「楽しいじゃないですか、ハルヤ」

「でも…アイヴィー、ごめんね。いきなり押し掛けて、泊まらせて貰って」

「いいって。どうせレッドが企画したんだろ?」

「うん。今朝、突然ね」

明日の日曜日はデッド・プリンスのライブがある。
今日は一日練習して、何故かアイヴィーの家に泊まり、
明日また本番まで練習する、という合宿をレッドが企画した。
シルヴァンとハルヤは否応無しに強制参加となった。

「企画者はもう寝てますけどね」

「歌い過ぎなんだよ、この人。なんで声枯れないの?」

「役者ですからね、声量もかなりありますし」

アイヴィーの携帯が鳴る。
ハルヤの知っている、有名な時代劇のテーマ曲だ。
普通に電話に出るアイヴィーをハルヤが見上げている。

「なんで、ソレをアイヴィーが?」

「あ。僕が入れてあげたんです♪」とシルヴァン。

「そうなんだ」

アイヴィーは「ハイハイ、すぐ行くよ」と言って電話を切った。

「え? アイヴィー、どっか行くの?」

「ああ。みたいだな。お前達は好きにしてな」

「こんな時間に誰に呼ばれるのさ?」

「野暮なことは聞くんじゃないの。ま。しいて言うなら髪の長い人、かな?」

「な、なんだよ、それ…」

「んじゃあなー」

アイヴィーが出て行くと、
シルヴァンは椅子に掛けてあったブルーのジャケットを手に取る。

「全く…僕、コレ、ちょっと渡して来ますね」

「あ、うん」

シルヴァンは外へ出る。
さっきの着メロは、島の警備本部のものだ。

アイヴィーは車の前で腕時計を見ていた。

「やれやれ。せっかくアイツらが来てんのに」

それは、時を刻む為だけのものではない。
ポイントが点滅して動いている。
島への侵入者を示すサインだ。

シルヴァンは、アイヴィーに目配せをする。

「相変わらずモテるようですね、アイヴィー?」

「まあな。モテる男はツライぜ」

「ジャケット、要ります?」

「ああ、サンキュ」

ジャケットを着せてやりながら、シルヴァンは声を潜める。

「本業のお電話ですね? …お気を付けて」

「何言ってんだよ。俺の本業はタクシードライバー、だぜ?」

「これほど腹筋の割れてるタクシードライバーが何処に居るんです」

「ココに♪ じゃあな。俺の部屋でオカシナことすんなよー」

「…しませんよ、貴方じゃあるまいし」

「どうだか。イイ子で待ってろよ?」

車が小さくなっていく。

「…まあ。あの様子なら平気、ですかね」

シルヴァンが部屋に戻ると、
ハルヤは、眠っているレッドの頬をつまんでいた。

「…あの。ハルヤ?」

「あ、おかえり」

「…何やってるんですか?」

「レッド、何しても起きないから、ちょっと遊んでた」

ハルヤはレッドから手を離す。

「ねえ、シルヴァン」

「はい?」

「…アイヴィー、どこ行ったのかな?」

「さあ。お友達に飲みに行こうとでも言われたんじゃないですか?」

「でも、野暮なことって…お、女の人と会うのかな?」

「まさか。あの人が女性にモテたことなど見たことがありませんよ。
女装された方になら、よく絡まれますけどね」

「じょ、女装?」

「あ、見て下さい、ハルヤ。ココに良いワインがありますよ? 開けちゃいましょうか♪」

「ええ? でもそれ、アイヴィーのじゃん。勝手に開けて良いの?」

「構いませんよ。せっかくの合宿なんですから、楽しい夜にしましょう?」

「俺、そんな飲めないよ?」

「知ってます♪ グラス持って来ますね~」

シルヴァンは軽やかにキッチンに向かい、すぐに戻ってくる。
手には2つのワイングラスとワインオープナー。
とくとくと注ぐ様子をハルヤはぼうっと見ていた。

「じゃ、ハルヤ。乾杯しましょ?」

「うん。何に乾杯すんの?」

「そうですねえ…では企画者のレッドに」

「寝てるけどね」

レッドの顔の上で、二つのグラスが口付けを交わした。


「シルヴァンさ、アイヴィーんち慣れてるんだね」

「あ、ええ。まあ」

「この島に来て、初めて出来た友達がアイヴィーなんだっけ?」

「はい。タクシーに乗った時に」

「…いいなあ」

ハルヤがグラスをテーブルに置く。
その手元が狂い、グラスが転がる。

「大丈夫ですか、ハルヤ?」

「ん。ごめん…あっ」

グラスが、派手な音を立てて床に落ちた。
ハルヤが拾おうと手を伸ばす。

「ハルヤ、いけません!」



アイヴィーが戻ったのは明け方だった。
レッドとハルヤは眠っていた。
シルヴァンが出迎える。

「おかえりなさい、アイヴィー」

「起こしちまったか、悪いな」

「朝帰りですね?」

「ああ。なかなか帰してくれなくってな」

「ご無事で良かったです。お怪我は?」

「背中に爪痕、くらいかな?」

「ご冗談を。では見せてもらえます?」

「おいおい、こんな子供が二人も居る前でか?」

「んん…あ、アイヴィー? 帰って来たの…おかえり」

「ああ、ただいま、ハルヤ。こんな奴と一緒に居て、無事だったか?」

「アイヴィー。野暮なことは聞くものではありませんよ?」


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