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■ソクーロフに看病されちゃった6 続編
窓の向こうは真っ暗だ。辺りではここだけ明かりが付いている。
真夜中の保健室で、医師は司令官の診察を終えた。
ちなみに耳式体温計で計ったところ、司令官の熱は38.6度。
先程、医師が宣言した数値と全く同じだった。
医師は聴診器を外し、患者に合った薬を選び始める。
「ねー、俺、ホントに保健室でお泊まりするのー?」
診察用の椅子に座っている患者が問いかける。
「ああ。何か問題でも?」
「やだよー。だって夜は時々お化け出るんでしょ、このガッコ」
「それがどうした?」
「否定しないのかよ!」
「今宵は私も保健室に泊まる。何が不服だ?」
「ソクちゃんとお泊まりなんて余計コワイよー」
「私はお化け以上か」
「うちに帰してよー。ちゃんと大人しく寝るからー」
患者はいつのまにか医師の背後に立っていた。
「そのお薬だけちょーだい?」
背後から手を伸ばし、医師の手から薬を抜き取ろうとした。
それに気付いた医師は、薬を持った手を握り、ひらりとかわす。
「ちぇー」
「二階のベッドルームに行くぞ」
「えー。一階で良いよ、いつものベッドで」
医師はフッと笑う。
「な、何よ」
「私の姿が見えないと不安、か?」
「そ、そーゆーわけじゃ……わざわざ移動するのが、
ヤなだけで……じ、自信過剰なんじゃないの!?」
「仕方あるまい。今夜はそのベッドで眠ることを許そう」
「いつも以上に高圧的だな……」
「煩い」
ドン、と右手で押され、ベッドに倒れ込んだ。
「イッタ。もう乱暴だなあ。病人を扱うなら、もっと優しくしてよ、お医者さん!」
「病人らしく振る舞っていなかったのは、お前だろう」
病人は言葉に詰まる。
「あれだけの熱があって、よくあの大勢との立ち回りを演じられたものだな」
「そーだよ。俺はいつもと同じだったし、他の皆にはバレなかったのに」
はあ、と吐いた息は、やっと病人らしい熱い息だった。
「どーして、ソクちゃんにはバレちゃったのかなあ」
医師は窓のほうを見ながら、
「数日前、ミハイルをタクシーに乗せただろう?」
「え、うん」
「その後、ミハイルは風邪を引いて、熱を出した」
「えっ!? そーだったの!?」
「おそらくその時から、お前の身体にはウイルスが潜伏していたんだろう。
しかし、抵抗力が高ければ、ここまで悪化しなかった筈だ。
お前、睡眠と栄養に気は配っていたのか?」
「ギクッ」
「手洗いもしていなかったな?」
「ギクギクッ」
「私の忠告を無視し、抵抗力が弱っていたお前は、
まんまと体調を崩したというわけだ。
だから言っただろう。手洗いは風邪予防の基本だと」
「だってー」
「だってじゃない」
ピシャリと言われて、アイヴィーは叱られた子供のようにしゅんとする。
「警備組織の司令官であるという前に、
一人の社会人として、体調管理は必要不可欠だ」
「ハイハイ。俺が悪かったですよ。スミマセンでした!」
「ああ。そうだ。お前が悪い。薬を飲んで、さっさと寝ろ。この役立たずが」
「ちょ、そこまで言う? なんなの今日は? なんでそんな機嫌悪いの?」
「聞こえなかったのか。早く寝ろ」
「わ、解ったよ。寝れば良いんでしょ、寝れば!」
アイヴィーは薬を水で流し込む。ベッドに入り、ぼそりと呟いた。
「……こんな時くらいは優しくしてくれてもいーのに……ソクちゃんのばかっ」
「何か言ったか?」
「言ってませんっ! おやすみっ!」
ガバッとブランケットを被った。
部屋がしんとなる。それから二人は一言も交わさなかった。
数分後には、静かな寝息がベッドのほうから聞こえてきた。
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窓の向こうは真っ暗だ。辺りではここだけ明かりが付いている。
真夜中の保健室で、医師は司令官の診察を終えた。
ちなみに耳式体温計で計ったところ、司令官の熱は38.6度。
先程、医師が宣言した数値と全く同じだった。
医師は聴診器を外し、患者に合った薬を選び始める。
「ねー、俺、ホントに保健室でお泊まりするのー?」
診察用の椅子に座っている患者が問いかける。
「ああ。何か問題でも?」
「やだよー。だって夜は時々お化け出るんでしょ、このガッコ」
「それがどうした?」
「否定しないのかよ!」
「今宵は私も保健室に泊まる。何が不服だ?」
「ソクちゃんとお泊まりなんて余計コワイよー」
「私はお化け以上か」
「うちに帰してよー。ちゃんと大人しく寝るからー」
患者はいつのまにか医師の背後に立っていた。
「そのお薬だけちょーだい?」
背後から手を伸ばし、医師の手から薬を抜き取ろうとした。
それに気付いた医師は、薬を持った手を握り、ひらりとかわす。
「ちぇー」
「二階のベッドルームに行くぞ」
「えー。一階で良いよ、いつものベッドで」
医師はフッと笑う。
「な、何よ」
「私の姿が見えないと不安、か?」
「そ、そーゆーわけじゃ……わざわざ移動するのが、
ヤなだけで……じ、自信過剰なんじゃないの!?」
「仕方あるまい。今夜はそのベッドで眠ることを許そう」
「いつも以上に高圧的だな……」
「煩い」
ドン、と右手で押され、ベッドに倒れ込んだ。
「イッタ。もう乱暴だなあ。病人を扱うなら、もっと優しくしてよ、お医者さん!」
「病人らしく振る舞っていなかったのは、お前だろう」
病人は言葉に詰まる。
「あれだけの熱があって、よくあの大勢との立ち回りを演じられたものだな」
「そーだよ。俺はいつもと同じだったし、他の皆にはバレなかったのに」
はあ、と吐いた息は、やっと病人らしい熱い息だった。
「どーして、ソクちゃんにはバレちゃったのかなあ」
医師は窓のほうを見ながら、
「数日前、ミハイルをタクシーに乗せただろう?」
「え、うん」
「その後、ミハイルは風邪を引いて、熱を出した」
「えっ!? そーだったの!?」
「おそらくその時から、お前の身体にはウイルスが潜伏していたんだろう。
しかし、抵抗力が高ければ、ここまで悪化しなかった筈だ。
お前、睡眠と栄養に気は配っていたのか?」
「ギクッ」
「手洗いもしていなかったな?」
「ギクギクッ」
「私の忠告を無視し、抵抗力が弱っていたお前は、
まんまと体調を崩したというわけだ。
だから言っただろう。手洗いは風邪予防の基本だと」
「だってー」
「だってじゃない」
ピシャリと言われて、アイヴィーは叱られた子供のようにしゅんとする。
「警備組織の司令官であるという前に、
一人の社会人として、体調管理は必要不可欠だ」
「ハイハイ。俺が悪かったですよ。スミマセンでした!」
「ああ。そうだ。お前が悪い。薬を飲んで、さっさと寝ろ。この役立たずが」
「ちょ、そこまで言う? なんなの今日は? なんでそんな機嫌悪いの?」
「聞こえなかったのか。早く寝ろ」
「わ、解ったよ。寝れば良いんでしょ、寝れば!」
アイヴィーは薬を水で流し込む。ベッドに入り、ぼそりと呟いた。
「……こんな時くらいは優しくしてくれてもいーのに……ソクちゃんのばかっ」
「何か言ったか?」
「言ってませんっ! おやすみっ!」
ガバッとブランケットを被った。
部屋がしんとなる。それから二人は一言も交わさなかった。
数分後には、静かな寝息がベッドのほうから聞こえてきた。
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