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Marginal Prince Short Story
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シルヴァンVSアイヴィー1 続編
新市街ショッピングモールは、品揃えが豊富だ。
何故こんなものまで、と不思議に思うレベルである。
お菓子売り場の前に背の高い青年。シルヴァンはひときわ目立っていた。

「あーん! クロックマンチョコ『天使VS悪魔』編、今日もありましたー!」

自然と身体をクネクネさせている。喜びに比例して高速である。
母親と買い物中の子供が人差し指を指している。

「ママー、あのお兄ちゃん、今日も居るー」

「気にしないの。ほら、もう行くよ」

親子がお菓子売り場を離れる。その様子はシルヴァンの目に入っていない。

「今日は、どれを買おうかなー。一番手前? 一番奥?
それとも真ん中辺りから? うーん。迷っちゃいますー!」

クネクネの速度が上がる。

「本当に、そのお菓子がお好きなのですね、貴方は」

背後で声がした。クネクネが止まる。
シルヴァンはゆっくりと振り向いた。

「そんなに美味しいのですか? そのお菓子は」

上品で優しそうな微笑み。30代半ばくらいの男。
長く下ろした髪は錆び付いた金色をしていた。

「お楽しみのところ、お声をかけてすみません。
お話しするのは初めてですね。初めまして、シルヴァン・クラークさん」

柔らかな話し方。彼が一言発する度にシルヴァンは身が震えるような恐怖を感じる。
他愛ない世間話と変わらないような口振りで、彼はこう言った。

「けれど、貴方の、その俊敏な身体には、以前のお名前のほうが合っていたと思いますが」

ちらりと彼の首筋が見えた。長い横髪で隠しているかように首の右側に傷跡があった。

「本当はご自分でもそうお思いでしょう?
代々、優秀な軍人を輩出してきた名家のご出身なのですから」

「人違いじゃないですか?」

「おや。お認めにはなりませんか。まあ、それも良いでしょう。
実は、貴方に頼みごとがございまして。お声をかけさせて頂きました」

「頼みごと?」

「今日は良い天気でしたね」

「え?」

「せっかくの晴天ですし、よろしければ、近くのオープンカフェへ移動しませんか?」

「早速、僕を消すつもりですか?」

「まさか。誤解があるようですが、私は貴方の命などに興味はございません」

「では一体」

「お飲み物くらいご馳走させて下さい。座って、ゆっくりお話ししましょう?」

「解りました」



その日の夕食後。ダイニングルームから部屋へ戻る途中、
シルヴァンは廊下でアルフレッドに呼び止められた。
何かをくれ、と言うように彼は手の平を見せて来た。

「えっと。何ですか? レッド」

「キーだよ、バイクのキー。まだ返して貰ってないぜ?
まさか無くしたとか言わないよな?」

「ああっ! すみません!」

「無くしたのか!?」

「いえ。キーはここにあります」

ポケットから出した鍵を見せる。

「でも、バイクを忘れてきちゃいました。ショッピングモールの駐輪場に」

「バイクを忘れたあ!?」

「はい。行きはバイクだったんですけど、帰りは歩いてきちゃいました。つい、うっかり」

「いやいや、うっかりし過ぎだっつの。
街から学校まで遠いんだし、幾ら何でも途中で気付くだろ」

「ですよね。すみません。僕、今から取りに行ってきますね」

「明日でいいって! もう夜なんだし、
この島でバイク盗む奴なんて居ないだろ。それより、何考えてたんだ?」

「えっ?」

「お前、何か考える時、歩きながら考えるって言ってたろ。
街に行った時、何かあったのか?
バイクのこと忘れちまうくらい、何か考えながら歩いてきたんだろ?」

「いえ……」

ふうん、と言いながら、アルフレッドはシルヴァンを見ている。

「まあ、いいや。キーは預けとく。明日、バイクと一緒に返してくれよ?」

「ありがとうございます。バイクは明日必ず返しますね」

「おう」

アルフレッドの背中を見送って、シルヴァンは自分の部屋に戻った。


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