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Marginal Prince Short Story
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シルヴァンVSアイヴィー5 続編
ちょっと遅めの夕食をとる為、アイヴィーは街まで来ていた。
メキシカンな雰囲気のカフェバー。
サルサバーガーとアイスコーヒーを頼んだ。

「あー! アイヴィーじゃないですかー」

丁度、半分くらい食べたところだった。
派手な声に呼ばれ、振り向けばシルヴァンが居た。
制服ではなく、アジアンテイストな私服だった。髪は後ろで一つに束ねていた。

「こんばんは、アイヴィー。今、ディナーですか?」

「ああ。お前さん、外出届は出してから来てんだろうな?」

「あっ、また忘れちゃいましたっ。てへっ」

ちょろっと舌を出して、自分の頭を叩いてみせる。

「そのでかい図体で、可愛いこぶってんじゃねえよ」

「えー。これ、ジャパニメーションでは、必殺の胸キュンポーズなんですよー?
キュンキュンしないですかー? キュンキュン」

「しねえよ」

アイスコーヒーに口を付ける。

「あ、そうだ! ねえ、アイヴィー。今夜、僕を『お持ち帰り』してくれません?」

俺はアイスコーヒーを吹きそうになった。
今日のシルヴァンはテンションが可笑しい。

「お持ち帰り言うな」

「お持ち帰りして貰えたらー、明日は学院まで車で帰れますし、
ちゃんと正門から入れますし」

「まるで正門以外から出入りしてるみたいなこと言うなよ、俺の前で」

「てへっ」

「だから、可愛くねえっつの」

シルヴァンのデコを軽くノックしてやった。


結局、その夜は、シルヴァンの希望通り、うちにお持ち帰りすることになった。
正門はとっくに閉まってる時間だったから、仕方ない。
ウーティス寮に電話して、バトラーとジョシュアに連絡した。
二人ともシルヴァンの外泊には慣れっこで「解りました」とあっさり許してくれた。

「上がりましたー」

シャワーを終えたシルヴァンが、髪を拭きながらリビングに入ってくる。
今シルヴァンが着ているのは、全て俺の服だが、
今ではすっかり、シルヴァンのお泊まり用パジャマと化した。
いつかの俺が、気の迷いで買ったロンTだ。

淡いピンク地のシャツで、胸にはドーンと、
赤と黄色でグラデーションされたハイビスカスが咲いている。
ちょい派手アロハデザインでも、シルヴァンなら着こなしてしまう。
スラリと高い背に、見栄えのする顔立ち。
普段はあまり思ったことはないが、モデルにも向いているのかもしれない。

シルヴァンがソファに座る。ふわりとシャワー上がりの匂いがした。

「そういや、久し振りだな」

「何がです?」

「いや、お前さんがうち来るの、随分久し振りだなと思ってさ。
入学した頃はしょっちゅう来てたけど、最近はとんとご無沙汰だっただろ?」

「なーんだ。僕が来なくて淋しかったんですかー?
言って下さいよー。それなら、僕、もっと遊びに来たのにー」

「淋しがってなんかねーよ」

その後は少しテレビを見たくらいで、大した話もないまま、寝ることになった。
シルヴァンはソファで寝ると言った。もう互いに気を遣う仲でもないので、
シルヴァンをリビングに残し、俺はベッドルームに引き上げた。

時計を見ると、深夜1時を過ぎていた。
俺もそろそろ寝ようと思って、電気を消し、ベッドに転がった。
リビングのほうからは僅かにテレビの音がした。
普段はベッドに入れば割とすぐ眠れるのだが、今夜はあまり眠たくなかった。

それから30分くらい経った頃だろうか。
人が近付いてくる気配を感じた。
足音を立てず、極めて慎重な動き。
相手が俺みたいな人間じゃなかったら、気付かれることはなかっただろう。

俺はドアに背を向け、壁側に身を寄せた。
人の気配は、ドアの傍にぴったりとくっついている。
まるで、部屋の中の様子を伺っているかのようだった。
俺はベッドの中で、相手には背を向けたまま、目を閉じた。

やがて、ゆっくりとドアが開いた。
気配が近付いてくる。一歩、一歩、俺に向かって。
奴は俺のすぐ傍に立っていた。
何もせず、何も言わず、ただ黙って、俺を見下ろしていた。
俺はベッドの中から、軽い調子で言った。

「どーした?」

そう声をかけると、奴は殺していた息をほうっと吐いた。

「おや」

それは間違いなく、シルヴァンの声だった。

「すみません。起こしてしまいましたか?」

「いんや。まだ起きてたよ」

「そうですか」

「夜中、ベッドルームにこっそり忍んでくるなんて」

俺は寝返りを打って、シルヴァンに顔を見せる。

「夜這いか?」

俺のつまらない冗談に合わせて、シルヴァンは微笑んだ。

「いいえ。貴方の寝顔を見に来ただけですよ。
そう言えば、暫く見てないなーと思いまして」

「へえ。そいつは残念だったな」

「お休み前にすみません。それじゃ」

「シルヴァン」

「はい」

「良いんだぜ? 別に」

「えっ?」

「いや」

俺は返答に困った。
我ながら、何が「良いんだぜ」なんだか。

「悪ぃ。気にしないでくれ。おやすみ」

「はい。おやすみなさい、アイヴィー」

ドアが閉まる。俺は天井を見上げた。
暗くて、ぼんやりとした世界。やっと、少し眠たくなってきた。


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