忍者ブログ
Marginal Prince Short Story
Admin  +   Write
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

悪魔の神秘05 続編
社長の息子は、次々に話しかけてきた。

「アンリ君はフランス人なんだよね?」

「そうだけれど?」

カッコイイ、と少年は言った。

「アンリ君、フランス人なのに英語上手だね!」

「まあ、英語は必要だったから。でも、それは君もじゃない?
イタリア人なのに、英語が話せるんだね」

「うん。ママがイギリスの人なの。もう死んじゃったけど」

僕は、そう、とだけ言った。

「アンリ君、イタリア語は?」

「日常会話レベルかな。まだ足りないね。今、勉強中だから」

「そうなんだー!」

前回パレルモに行った時、思ったより、解らないイタリア語が多かった。
あれからずっとイタリア語の勉強をしていたと言う必要はない。

「イタリア語で解らないことがあったら、僕が教えてあげるよ!
代わりに僕にはフランス語教えてね! 僕、フランス語は全然知らないから」

人懐っこい子供だ。純粋な瞳で僕を見上げてくる。人を疑うことを知らないのか。
僕もこんな子供だったら、と一瞬思う。
いや、僕が純粋な子供時代を過ごせていたら、僕はここに居なかっただろう。
この歳から事業経営なんてしていなかっただろうから。

「あ、神父様!」

社長の息子が大きな声を出した。神父様と呼ばれた人物は、それらしい格好はしていなかった。
ごく普通の黒っぽいスーツを身に付けた眼鏡の男。
年は40歳後半くらいだろうか。眼鏡の紳士は目尻に皺を寄せながら、

「こんばんは、アミィ君」

「神父様、こっちこっち!」

少年は神父の手を引いて、こちらの、父親が居るテーブルにやってくる。

「こんばんは、カイムさん。今宵はお招きありがとうございます」

神父が丁寧に挨拶をすると、カイム社長は神父の手を握りながら、

「いえいえ。お忙しい中、お越し下さり、ありがとうございます。
今日はゆっくりしていって下さい」

「悪魔祓い師の神父……」

僕の呟きは本人の耳にも聞こえたようで、

「はい。バラムと申します」と挨拶された。

眼鏡レンズ越しに濃緑の瞳が僕を観察した。

「エクソシストは珍しいですか?」

「ええ、まあ」

「神父様は」カイム氏は子息の肩を抱き寄せ「この子の恩人なのですよ」

カイム社長が語ったところによると要はこういうことだ。

半年程前、子供の体調不良が続くようになったらしい。
最初は社長も子供も、風邪が長引いているのだと考えていた。
その頃、社長が仕事で付き合いのある友人から、知り合いが悪魔憑きになった話を聞いたそうだ。
風邪の治りが悪いのか、ずっと熱っぽい状態で、更には左腕に痛みがあったらしい。
医師に処方された薬でも治らないので、神父に悪魔祓いをして貰ったところ、すぐに完治。
社長も信じ難い話ではあったが、もしかしたらうちの息子も助かるかもと思い、
知り合いの神父に息子を診せたところ悪魔憑きだと言われた、らしい。

社長は最初、僕に向かって話をしていたのだが、気が付くと周りに人が集まっていた。
来客の殆どがこのテーブルを囲むようにして、社長が語る悪魔の話を聞いていた。

「カイム社長、人間が悪魔に憑かれると、具体的にはどうなるのですか?」

一人の客人が尋ねた。先程から熱心に頷きながら聞いている痩せた男だ。
社長のご機嫌取りがしたいのだろう。社長が質問に答える。

「私は悪魔祓いの儀式に立ち会わせて頂いたことがあるのですが、
本当に悪魔が憑いているとしか考えられない状況でした。
悪魔に憑依されている時のアミィは、12歳の子供とは思えない程、低い声で喋るのです。
かと思えば、少女のような声で泣き出したり、突然叫び出したり。
神父様が「汝、名を名乗りなさい」とお尋ねになった時、
アミィは「セーレ」と名乗りました。神父様曰く、セーレというのは、
美しい少年の姿をしており、翼の生えた馬に乗っている悪魔の名だそうで。
悪魔祓いが終わったあと、アミィにその話をしたら、以前、夢で見たことがあると言うじゃありませんか」

ご機嫌取りが目を見開いて驚く。

「夢で見た? その、悪魔をですか?」

「ええ。そうだろう、アミィ?」

「うん。男の子でね、僕と同じくらいの年みたいだった。
青い目で、綺麗な銀色の髪ので、真っ白のペガサスを連れてた。
僕は森の中に居て、一人で遊んでて、そしたら、その男の子が後ろに立ってて、
『淋しそうだね』『一緒に遊ぼう?』って言われたんだよ。
僕は嬉しくって、それで森の中で一緒に遊んだんだ。
いっぱい遊んだら、暗くなってきて、僕が「もうおうちに帰らなきゃ」って言ったら、
その男の子が『もう帰っちゃうの? もっと遊ぼうよ』って。
でも僕が『あんまり遅くなるとパパが心配するから。また明日遊ぼう?
ねえ、君はどこに住んでるの? 僕のうちの近くかな?』って聞いたら、
男の子は空を指差した。僕は意味が解らなくて、もう一回『どこに住んでるの?』って言ったんだ。
そしたら、『今はあの辺に住んでるよ。本当はもっともっと高いところに居たんだけどね。
僕達は、あの方に嫌われちゃって、下界に堕とされちゃったから』って」

神父が口を開く。

「物や人を棲み家としている悪魔もおりますが、悪魔の多くは空気中に潜んでおりますから」

「あの方に嫌われたというのは?」とご機嫌取り。

「神のことです。神の意に反した天使は地に堕とされます。その堕天使こそが悪魔なのです」

「では、悪魔というのは、元は天使?」

「ええ。その通りです」

白髪混じりのご婦人が生徒のように手を挙げた。

「あの、神父様? ちょっとお尋ねしてもよろしいですか?」

「はい。何でしょう?」

「悪魔憑きというのは、よくあることなのでしょうか?
悪魔祓いの依頼を受けても、その全ての人に悪魔が憑いているわけではないんでしょう?」

「ええ、そうですね。悪魔憑きの判断は一般の方には難しいものですから。
悪魔の仕業ではなく、お身体やお心のご病気の場合が殆どですので、
その際はお医者様と連携を取りながら、医療機関への受診をお勧めしております」

「では、本当に悪魔が憑いている場合もあるということですね?」

答えは「はい」だった。

「そんなに心配なさらなくとも大丈夫ですよ、奥様。私が祓ってきた悪魔は、
今までご相談頂いた件数の0.1パーセントにも満たない数ですから」

成程。あの神父は、あくまで『悪魔は居る』と言い張るわけか。
ギャラリーは静かにざわめいている。感想でも言い合っているのだろう。
カイム社長は次にこんなことを言い出した。

「それから、家で呪いの道具が見つかったこともありまして」

「呪いの、道具ですか?」

「はい。ある日、アミィが足が痛いと言い出したことがあって。
病院に連れて行ったのですが、お医者様にはどこも悪くないと言われました。
確かに、傷口もないし、赤く腫れているわけでもに、真っ白な足なのです。
それでも、アミィはこのところずっと痛くて、
毎日だんだん痛みが強くなっていると言うものですから、
また悪魔が悪さをしているのかと思って、神父様にご相談したんです。

神父様にアミィを診て頂いたら、『足の痛い部分に触れてみても良いですか』と仰ったので、
アミィに靴と靴下を脱がせました。神父様に青い小瓶に入った透明な液体を手に付け、
その手でアミィの足に触れたのです。すると、アミィは『痛い!』と叫びました。
消毒薬でも塗ったのかと思いましたが、傷口もないのに痛がる筈がありません。
一体何を塗ったのですか、と私はお尋ねしました」

神父は厳かに語る。

「アミィ君の足に付けたのは、聖水でした。悪魔祓いの儀式でも使用するものです。
悪魔は概して、聖なるもの、清らかなるものを嫌がります。
アミィ君の足は、悪魔から何らかの影響を受けているのだと思いました」

「神父様は仰いました。アミィの部屋、それもフローリングのほうに、
何か良くないものがあるようです。一度、調べて貰えませんか、と。
それで、カーペットをめくってみたところ」

「何があったのですか」

「黒い紙が一枚ありました」とカイム氏。

「紙? それが一枚だけですか?」

「はい。黒い紙に赤い絵の具で棒人間のような絵と、
何語か解らない文字の羅列が描かれていました。
私に読めたのは、『アミィ』という文字だけでした。それを神父様に見て頂いたんです」

神父は言う。

「その黒い紙に記されていたのは呪いの一種でした。
呪文を書いた紙に、呪いたい人物の名を書き、悪魔の力を借りて相手を痛めつける。
その呪いの紙を用意したのは悪魔ではなく人間です。
どなたか、悪魔を崇拝する者、サタニストが用意したものだと思われます」

とエクソシストが言った。


PR
カレンダー
06 2026/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
キャラ名、CP名などで作品検索可
アーカイブ
カウンター
バーコード
material by bee  /  web*citron
忍者ブログ [PR]