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Marginal Prince Short Story
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■ソクーロフ×アイヴィー
「あーちー。常春じゃなかったのかあ、この島は」

真夏の太陽が降り注ぐ中、濃い顔の男は服の胸元をパタパタする。
向かいに座っている美しい少年は気だるげに、

「聖アルフォンソ島でも、夏になれば気温は上がるよ。
だから、オープンカフェは嫌だと言ったのに」

「海で泳ぎてえー。水着持ってくれば良かったなあ」

濃い顔の男の隣では、柔らかな雰囲気の男がにこやかに笑っていた。

「そう言えば、兄貴は今年最新の水着、買ったばかりですもんね」

「おうよ。パパに買って貰ったアレ、おめーにも見せてやりたかったぜ」

「持ってきてくれてなくて、ありがとう」

「あっ、今度来る時によ、おめーのヤワ肌に似合いそうなビキニ、
買ってきてやろうか? パレオ付きの」

「男の水着に、パレオは付かないと思ったけれど」

「あ、パレオはスケスケでエロめのヤツな?」

美しい少年が冷たく微笑む。

「聞かなかったことにしてあげるから、
バカなこと言ってないで、さっさと帰って?」

「で、パレオはちょい長めな。脚がチラチラ見えるやつ。色は……ん?」

濃い顔の男が目をこらす。
向こうの通りを歩いている男に見覚えがあった。

「あれ、キリルじゃねえか?」

えっ、と弟分が真顔になる。

「あ、兄貴。キリルって、あのキリルですかい?」

「ああ。間違いねえ。左腕に薔薇の刺青(いれずみ)もしてやがった。
何だって奴がこんなところに。あいつ、ムショから出たばっかだろ?」

「ええ。確か三か月程前に」

美しい少年は首を傾げていた。

「知り合いでも居た?」

「いえ。知り合いと言いやすか」

弟分は言葉を濁した。話して良いのか、というように兄貴分を見る。

「マフィアさ。ロシアのな」

教えてやれ、というように兄貴分は顎で許可した。弟分が頷く。

「キリル・イヴァニコフ。奴が所属するイヴァニコフ・ファミリーは、
ロシアンマフィアの中でも、なんというか……クレイジーなことで有名でして」

「クレイジー?」

「ええ、ちょっと。いや、かなり。それで、キリルはボスの次男坊なんですが、
長男より頭が切れるもので、次のボスは彼だろうと言われています。
名目上ではまだ長男の参謀役のようですが」

「ふうん。ロシア系か。で、君達との関係は? 対立でもしてるの?」

「いえ。特には」

「そう。利害関係もないのに、国外のマフィアにも詳しいんだね?」

「そうですね。同業者については、多少知っておかないと、まあ、色々ありますので」

「つーか、キリルの奴、こんな小せぇ島に何しに来たんだか」

「刑務所上がりのバカンスには持って来いかもしれませんが、どうでしょうねえ」

外部の人間が、この辺境の島に来る理由は、大体決まっている。
それは、この島に、あの特殊な学院がある以上、避けられない。
それ故に学院は、プライベートミリタリーなんてものを抱えているのだから。

「ま。地下組織と繋がりのある、ロシアの生徒でも居れば、ビンゴだろ」

少年が黙り込むのを見て、濃い顔の男は愉快そうに目を細くした。

「へえ。居るみてえだぜ?」


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