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Marginal Prince Short Story
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テオとハルヤと夏祭り1 続編
「おや? そう言えば、レッド達が居ないですねえ」

シルヴァンがキョロキョロしている。

「ああ、うん。はぐれちゃったみたいだね、俺達、勝手に離れちゃったし」

ハルヤとシルヴァンがりんご飴を手にした時には、
ジョシュア、アンリ、レッドの姿が見えなくなっていた。

「まあ、そのうちに会えますよ。わあ、甘酸っぱくて美味しいですー」

シルヴァンは早速りんご飴にかぶりついていた。
かじられたところは白い実が見えている。

ハルヤのりんご飴はまだ真っ赤だった。
すぐに食べてしまうのが勿体無くて、表面の飴をペロペロ舐めていた。

「おお、ハルヤ様ー! シルヴァン様ー!」

屋台のほうから名前を呼ばれた。
誰かと思えば、ウーティス寮のシェフ、カミーユ・ルブランだった。

「あ、カミーユもお店やってたんだ」

「はい。シェフ達にもお祭りで、その腕を振るって欲しい、とテオ様の仰せで。
微力ながら、私も参加させて頂いております」

「ちなみに、カミーユは何屋さんなの?」

「ムールフリット屋でございます」

「え?」

「極上の白ワインで蒸した、最高品種のムール貝に、
貴重な岩塩で味付けたフライドポテトを添えたものでございます」

「あ、あはは……何て言うか、カミーユらしいお店だね、他のお店と雰囲気違って……」

「おひとつ、いかがですか! ハルヤ様、シルヴァン様」

「えっ? えっと、あの」

「すみません、カミーユ。僕達、今は、コレがありますので」

シルヴァンはりんご飴を盾にした。

「ああ、他の物をお召上がり中だったのですね。それは残念」

「本当、残念ですー。じゃあ、カミーユもお祭り楽しんで下さいねー」

二人はそそくさとカミーユの屋台を離れた。
そこから少し行った先では、アルファルド寮シェフが、黙々と焼き鳥を焼いていた。

屋台の列の端まで来た二人は、一度そこで立ち止まった。

「大体、これで一周できましたかね?」

「うん。思ったより、たくさんお店あったね」

「どこから攻めましょうかー。ん? どうしました、ハルヤ」

「いや、アイヴィーは来てないのかなあと思って」

「ああー、あの人は多分、絶賛お仕事中じゃないですかね?」

「そっか。タクシードライバーさんも大変だなあ。
アイヴィーも一緒にお祭り来られたら良かったのにね」

「まあ、それより! 僕、シャテキがやってみたいですー!」

「射的かあ。シルヴァン、そういうの上手そうだもんね」

露店を見ながら、「あれは日本語で何ですか」と聞かれて、
さっき教えたばかりの日本語を、シルヴァンは正確に記憶しているようだった。

「あとあと! ヨーヨーツリとスーパーボールスクイもやりたいですー!」

「はいはい。じゃあ、射的から行こっか。俺も、その近くにあった、たこ焼き食べたいし」

「はーい!」

来た道を戻ろうとした時、道の脇にゴミ箱を見つけた。
その頃には二人ともりんご飴を食べ終わり、
りんごに刺さっていた割り箸を握っているだけだった。
ハルヤが割り箸を捨てに行こうとした時、シルヴァンに手を差し出された。

「僕が捨ててきますよ」

「あ、ありがと」

お団子頭の友達がゴミ箱まで行って、タタタと帰ってくる。

「じゃあ、シャテキに、行きましょー!」

「おや。お綺麗なお嬢さんが二人も居ると思ったら、
シルヴァンと東洋の黒い真珠じゃないか」

前方から優雅で陽気な声がした。
にこやかな笑顔でやってきたのは、やはりこの夏祭りの主催者。
生徒代表のテオ・メネシスだった。シルヴァンが駆け寄る。

「テオー! 今夜は、ニッポンの夏祭りをプレゼントしてくれて、
本当にどうもありがとうございます! 僕、カンゲキしちゃいました!」

「喜んで貰えて良かったよ、シルヴァン。こちらこそ、ありがとう。
二人とも、私が用意したユカタで来てくれたのだね?
ああ、本当に良く似合っている。特に」

ハルヤの手を、テオが両手でガシと握り締める。

「東洋の黒い真珠! やはりユカタには君の黒い瞳が一番だ!」

真夏のスコールのような勢いで、テオによる褒め殺し攻撃が始まった。
隣でシルヴァンも頷いている。テオは握った手をブンブンと振りながら、

「ああ、なんという美しさだ。この衣装が、これほどまでに、
君を美しく、ミステリアスに輝かせるなんて。やはり君は美そのものだ!」

褒められているようなので、ハルヤは一応お礼を言いながら、
無意識にオリエンタル・スマイルを浮かべる。
それがまた褒め殺しスコールの降水量を増大させたのは言うまでもない。
ハルヤがテオに絶賛されるのは、これが初めてではないが、
日本にはこういうタイプの友達が居なかったので未だに慣れなかった。

「あー! 居た、居たー! おーい、シルヴァン、ハルヤー!」

レッドの大きな声がした。彼の後ろにはジョシュアとアンリも居る。
三人がハルヤ達の元へ来る。はぐれていたウーティス寮生が合流した。

「こんばんは、テオ。貴方が開くパーティはいつも本格的ですね」

ジョシュアは最上級生に挨拶したが、
隣のアンリは目も合わせず不機嫌な顔をしている。
レッドは頭の右側にひょっとこのお面を付けている。三人も浴衣姿で参加していた。

「よっ、テオ! テオが騒いでる声が聞こえたから、
傍にハルヤが居るんじゃないかと思って来てみたら、ビンゴだったぜ!」

「おや。私、騒いでいたかい?」

「東洋の黒い真珠がどうのこうのってな」

「ああ。そうなのだよ。東洋の美に魅入られていたんだ。――おや?
アンリ! 君もユカタで! ああ、君が着ると、何やら妖艶だねえ、まるで」

「僕のことはいいから。貴方は東洋の黒い真珠を構ってなよ」

「アンリ、テオに噛み付くなよ」

ジョシュアに注意され、アンリはツンとそっぽを向く。
それを見て、テオは楽しそうに笑っていた。

突然、夏祭り会場に音楽が流れ始めた。
何だろう、と思った生徒達がざわざわする中、テオが「そうだった!」と声を上げた。

「いけない、いけない。時間がないんだった!」

テオが腕時計を見る。

「ああ、まだ大丈夫だった。危ない、危ない。君達の美しさに魅入られたあまり、
東洋の黒い真珠に会いに来た目的を忘れるところだった。
さあ、海がもっと良く見えるところに行こう!」

「えっ?」

「ほら、早く」

質問する間も与えず、テオは皆を連れて走り出す。

「おーい! みんなも、私に付いて来ておくれー!」

訳が解らないまま、他の生徒達もテオのあとに付いて行った。


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