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Marginal Prince Short Story
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テオとハルヤと夏祭り2 続編
屋台の列を抜けて、海が見渡せる場所に出た。
涼しい風が、浴衣の袖から入り、すっとハルヤの素肌を撫でる。
熱気があった場所から離れた為、辺りは少し涼しく感じられた。
テオはもう一度、腕時計を確かめていた。

「みんなー! 海を見ていておくれー!」

生徒達が海のほうを見る。夜空は満天の星で飾られているが、
海は真っ暗なままだ。テオと同じ寮の生徒達が言う。

「テオー。海がどうしたんだよ?」

「何もないよー?」

楽しそうにテオがウインクした。

「これから起こるのだよ」

シュヌーシア寮の生徒達は首を傾げていた。テオは笑顔で言った。

「愛するマージナルプリンス諸君に、日本の美しい花を贈るよ」

テオが掲げた右手。その先には夜の海と空が広がっている。
すると、海上から一筋の光が昇った。ヒューという音と共に。
オレンジ色の光は天に向かって、弾けた。
ハルヤは呆然と見上げている。夜空には大輪の花が次々と咲いた。

「美しい花って……花火?」

「うん。日本で一番美しい花、だろう?」

花火はとても大きく見えた。
こんなに近くで、花火を見るのは初めてかもしれない、とハルヤは思う。
空を震わせる大きな振動が、空気を伝って、こちらにまで響いてくるようだ。
ドン、と鳴る度に、自分の胸にまで振動が伝わってくる。

ドッカンドッカン上がっている花火を、ハルヤは信じられない気持ちで見ていた。
テオの家が、海運王と呼ばれるくらい、ギリシャでも有数の資産家なのは知ってる。
でも、ああいう花火って個人で上げられるものなのかな。
五百円玉を二枚貰って、大金だと思ってた頃の自分がなんだか恥ずかしく思えてくる。

レッドは、シルヴァンと肩を組んで花火を見ている。
アンリは呆れているようだ。その様子を見て、ジョシュアは苦笑していた。
他の生徒達も、歓声を上げたりしながら、夜空に咲く花を眺めていた。

「ますます美しいねえ。花火を背景にした君は」

ハルヤの隣にテオが来た。

「今宵は、美しい花火と美しい真珠が愛でられて、とても贅沢だよ。
今日は本当に来てくれてありがとう、東洋の黒い真珠」

「えっと、こっちのほうこそ、ありがと。日本の夏祭りに、日本の花火まで」

「いいや。お礼を言うのは私のほうなのだよ。今日という日に、皆が傍に居てくれて」

テオの横顔は花火でオレンジに照らされ、ふっと暗くなった。
そしてまた、次の花火が上がっていく。

「美しいね。どうして、日本の花火は、あんなにも美しいのだろう」

キレイだねー、と誰かの声がする。ハルヤは少し考えて、こう答えた。

「すぐに消えちゃうから、かな。多分」

ピンクと白の小さな花火が連続で昇った。

「成程。きっとそれが正解だね」

青と白の花火が上がる。次は赤と黄色だった。
最後には、続けて黄金の大きな花火が咲き乱れ、花火大会は幕を閉じた。

「おしまいか。物悲しく感じてしまうものだね、花火が終わってしまった空は」

「うん。終わっちゃうと、もっと見たかったな、と思うよね」

「では、最後にもう一度、花火を共に見ようか?」

「え?」

「生徒代表の任期満了パーティにも、花火を打ち上げようかなと思ってね?」

「ま、また?」

「うん。私ももう一度見たいから」

海運王の子息は、にこやかに笑っていた。

「テーオー! 一緒にお店見に行こー!」

中等部の生徒達がテオを呼んでいた。シュヌーシア寮の面々だ。

「おや。私をお呼びかな。ではね、東洋の黒い真珠。
今宵は美味しい物もたくさん用意しているから、
このあともナツマツリを楽しんでおくれ」

テオはシュヌーシアの寮生達に囲まれて、屋台のほうへ戻っていった。

「なあ、シルヴァン! 俺と勝負しねえか?」

レッドは銃を構えるポーズをとっていた。

「さっきさ、シューティングゲームみたいなヤツがあったんだよ」

「シャテキのことですね! 僕もやりたいと思ってたところなんですよー!
その勝負、受けて立ちましょう!」

「おっしゃ! じゃあ、行こうぜ。おい、お前らも付いて来いよ。
勝負にギャラリーは必要だからな」

ギャラリー扱いされたのは、ジョシュア、アンリ、ハルヤである。
琥珀色の瞳がきらりと光った。

「ただ見てるだけじゃ、つまらないから、どちらが勝つか、賭けでもする?」

アンリの提案に、ジョシュアとハルヤは顔を見合わせる。

「僕はシルヴァンに賭けるけれど。ハルヤは?」

「え? えっとー、俺もシルヴァン、かな」

「おいおいおいー! ジョシュアは俺に賭けてくれるんだろーなー?」

「え? あ、うん」

「もちろん、賭けに負けた人と勝負に負けた人は、罰ゲーム、ね?」

「わ、解ったよ、アンリ」

「大丈夫だ、ジョシュア! 俺様を信じろ!」

「面白くなってきましたね! じゃあ、行きましょう!」


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