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Marginal Prince Short Story
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■ソクーロフ×アイヴィー
その朝、アイヴィーは自宅のベッドで目を覚ました。
腕を伸ばして、スマートフォンを手に取る。
もう家を出る時間だ、と思い、一瞬焦ったが、今日の日付を見て落ち着いた。
今日は1月1日。
タクシードライバーも司令官のお仕事も、今日ばかりはお休みだ。

ほっとすると、シャワーの音が耳に入った。
シャワールームのほうから、微かに水音が聞こえる。
それと、ほぼ同時に肩が寒いのを感じた。
ブランケットから出ていた肩は素肌だった。

向こうのテーブルの上には、昨夜、飲み散らかした痕が残っていた。
年越しのカウントダウンだから、と少し調子に乗って、空けた瓶や缶が、
そのまま転がっているのが見えた。

確認するまでもないのに、アイヴィーは僅かな期待を込めて、
ブランケットをめくって、そっと中を覗いてみた。
すぐさま、期待は打ち砕かれる。自分の生足などが見えて、気が重くなった。
昨夜の記憶がおぼろげに蘇ってくる。
久し振りに飲み過ぎた。酒の勢いで、昨日は……全部、酒のせいだ。

アイヴィーは右手でブランケットを引き寄せる。
うつ伏せになり、首許までブランケットで覆った。
布の柔らかさを、直接、肌で感じて、更にツライ気持ちになる。

――年の始めからナニやってんだか……

重い溜め息と共に、両腕の中に顔を埋めた。

ガラッとシャワールームが開く音がした。
そんなことで、想像しなくて良い姿を想像してしまい、
ついでに、昨夜のモロモロまで思い出した自分がイヤになる。

「あー、もう……」

ブランケットを頭まですっぽり被った。

次に聞こえてきたのは足音だった。
こちらに近付いてくる。ベッドの前で足音は止まった。
アイヴィーはブランケットを全身に被ったまま、息を止めていた。

「何故、寝たフリをしている?」

ブランケットを剥ぎ取られた。
冷たい眼差しでアイヴィーを見下ろしているのは、シャワー上がりのオトコ。
濡れた長い髪を白いバスタオルで拭きながら、昨夜の格好をラフに着ている。
下は黒いズボン、上は白いワイシャツを羽織っただけ。
ボタンは一つも留められていない。素肌の胸板には水滴が伝っていた。

普段は一つに結わえられている長い髪は、
真っ直ぐ下ろされていた。濡れた髪が光って見える。
眼鏡をかけてない目で、上から見下ろされていた。

「何をそんなにジロジロ見ている?」

「ソ、ソクちゃん、眼鏡かけてないと、ダレだか解んないんだもん」

シャワー上がりのヒトは首を横に傾ける。

「お前は私を眼鏡で識別してるのか?」

「い、いや、別にそーゆーワケじゃないですけど……」

「お前、眼鏡フェチか?」

「チガイマスッ!」

「年明けからバカなこと言ってないで、いい加減、起きろ」

自分ちのボディシャンプーの香りが相手からする。
シャワー上がりのヒトは身を屈め、アイヴィーの赤い耳に向かって囁く。

「お前こそ、早くシャワーを浴びてきたほうが良いと思うが?」

一瞬で身体に熱が走った気がした。

「……わ、解ってるよっ!」

そう言うと、軽く笑われた。

サイアクの年明け。
今年も、このヒトに振り回される、ダメな年になりそうだ。


fin
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