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Marginal Prince Short Story
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■レッド×アンリ 総受アンリ
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アンリの部屋。
診察を終えたソクーロフ博士が聴診器を鞄に仕舞う。

「風邪だね。アンリ、今日は一日安静にしていなさい」

患者はベッドに横たわったまま、医師を睨み付ける。

「言われなくても、そうするよ」

「アンリ、博士に失礼だよ」

「構わないよ、ジョシュア。
私は、アンリとの会話がとても楽しいからね」

黒い鞄の中から錠剤が入った瓶を取り出す。

「この薬で効くだろう。これはジョシュアに渡しておこうか。
必ず1日3回、服用させるように。どんな手段を用いてもね。頼むよ、ジョシュア」

「はい、解りました、博士」

「これで、夜には熱も引くだろう。
万一、悪化するようなことがあれば、また呼びなさい。
すぐに会いに来るよ、アンリ」

「ご心配無く。もう二度と呼ばないから」

「アンリ…すみません、博士」

「ジョシュア。君はまるで、アンリの兄のようだね?」

「兄、ですか?」

「我侭な弟に手を焼きながら、そんな弟が愛おしくて堪らない兄のようだ」

「そうですか…俺、一人っ子だからよく解らないけれど、アンリが弟だったら嬉しいです」

「では、アンリのこと任せるよ、ジョシュア。お大事に、アンリ」

「ふん」

「ありがとうございました、博士」


ソクーロフ博士が退室する。
部屋の中が、アンリとジョシュアの二人になると、
アンリの表情から敵意や緊張感が消えていった。
深い溜め息を漏らす。

「…もう風邪なんか引かない」

「そうだね。薬を飲んで早く治そう?」

「やだ」

「アンリ。矛盾しているよ?」

「ソクーロフの薬なんて、誰が」

「俺に、無理矢理飲ませて欲しいのかい?」

「……自分で飲むよ」

奪うように薬を取って、口の中に流し込む。
ベッドに戻り、毛布を引っ張る。
ジョシュアは彼の髪を撫でた。

「良い子だね、アンリ」

「…薬が飲めたくらいで、褒めないで」

「すまない」

「いちいち謝るな」

「そうだね」

どんなに棘のある言葉も微笑に包まれ、
温かい手はアンリの頭を優しく撫で続ける。

「ジョシュア…さっき、言ったことは本当なの?」

「さっき?」

「…僕が弟だったら嬉しい、って。
君のことだから、ただソクーロフに同意しただけかな?」

「そうだね。あまり正確じゃなかったかもしれないな。
俺にとってアンリは、家族以上の存在だから」

「僕には家族すら解らないのに…家族以上って何…」

「何だろうね。俺もよく解らないな。でも…」


バン、とドアが勢い良く開いた。

「なあ! 今ソクーロフ博士が此処から出て来なかったかっ!?」

「やあレッド。アンリを診て貰ったんだよ、風邪で熱があるんだ」

「マジで!? 大丈夫かよ、アンリ!」

「…大丈夫じゃないから、ベッドに居るんだよ」

「あっ、お前! 今日の毒舌、冴えてないぞ! マジで熱あんのか!?」

「だから、あると言っているでしょう」

「んー。今の毒舌は30点だな」

「…勝手に点数を付けないで。大体、基準が解らない」

「『それって、褒め言葉だよね、レッド?』が300点!」

「…100点満点じゃなかったの?」


開け放たれたドアから、ユウタとハルヤが顔を出した。

「あのー。今、レッドの声が…あ、居たー」

「あれ、どうしたの、アンリ?」

「コイツ風邪なんだってさ。そういや、お前、今日何か食べたか?」

「何も。別に要らないよ」

「風邪引いてんのに、栄養取らなきゃダメだろ? 何か食べたいもんねーのか?」

「天使の顎」

「ええー? ケーキはどうかなあ?
やっぱりおかゆだよ、風邪引いた時は! ね、ハルヤ?」

「うん。まあ、俺達はね」

「おい、なんだ!? 『おかゆ』って!」

「うーんっと。まあ、スープのようなものかな。
お米を煮たものだから、栄養あって、消化も良いんだ」

「じゃあそれ作ろうぜ、ユウタ、ハルヤ!」

「うわっ面白そー! やるやるー! でもお米ってあるの?」

「どっかにあんだろ! よーっし。今日の宝物はコメだな! 」

「お米を探す所から始めるの? めんどくさ…」

「じゃ、アンリ。楽しみに待ってろよ?」

「…期待しないでおくよ」

「期待してろって♪ じゃ、アンリ、ジョシュア、後でなっ」


レッド、ユウタ、ハルヤが、がやがやと出て行く。
部屋に久し振りの静寂が訪れる。

「やっと騒がしいのが居なくなった」

「楽しみだね。おかゆってどんなものだろう?」

「じゃあ、ジョシュアにあげるから、君が食べれば?」

「駄目だよ。みんな、君の為に用意しているのだから。少し眠るかい、アンリ?」

「そうするよ」


アンリが次に目覚めた時、まだジョシュアが居て、
シルヴァンと静かに談笑していた。

「あ、すみません、アンリ。起こしちゃいました?」

「…今度はシルヴァンなの? 君はジョシュアに用?」

「アンリ! 物憂げでハスキーな声じゃないですか!?
もう一度聞かせてくれません?」

「…シルヴァン。君、どっか行ってくれない?」

「熱っぽいバニラボイスだなんて、僕が溶けてしまいそうです…」

「…落ち着いて、シルヴァン。アンリに伝えることがあるんだろう?」

「ああ、そうでした。先程、レッド探検隊に会いましてね、
アンリに伝言を預かってきたんです」

「探検隊? ああ、あの3バカ?」

「ええ。学院内で宝物が見付からないから、街中まで行って来るそうです」

「愛されているね、アンリ?」

「…彼等が楽しいから、やっているだけでしょ…」

「解っていて、そういう言い方は良くないよ」

「バカなんだよ…僕一人の為に、そんなに時間掛けて…」

「本当ですね。それで、僕がお使いを頼まれましてね?」

「お使い?」

「ええ。『おかゆの完成が、いつになるか分からないので、
こちらを食べて待っているように』とのことです。レッドからですよ、アンリ」

シルヴァンは持っていた箱の中を見せる。
綺麗なイエロー。
パッションフルーツのケーキ。

「あのバカ…」

「天使の顎か。良かったね、アンリ。食べたかったんだろう?」

「…食べたくない」

「アンリ。もしかして…照れてます?」

「違う。僕はそんなに食欲が無いの。それは君達で食べて」

「照れることないじゃないですかー、此処にレッドは居ないんですから♪」

「違うと言っているでしょ」

「では、紅茶を用意したら食べてくれるかい?」

「煩いな。今そんなもの食べたら、おかゆなんか食べられないんだよ」


fin
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