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Marginal Prince Short Story
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闇の家系06 続編
ランベール館の長い廊下を歩いていく。
先頭が執事。続いて、ラルヴィス、ジョシュア、アイヴィーの順だ。

「旦那様、ジョシュア様とお付きの方をお連れ致しました」

どうぞ、と声がした。執事がドアを開ける。
三人は当主が待つ部屋の中へ入っていく。
執事は部屋の中には入らず、静かにドアを閉めた。

アイヴィーは護衛として、部屋の中を注意深く観察する。
そこは本で囲まれた書斎のような部屋だった。
椅子から立ち上がり、こちらを向いた男性は、
まさに英国紳士と呼ぶに相応しい人だった。

年は40歳後半に差し掛かったくらいか。上品なグレイのスーツ。
髪はジョシュアより少し短く、整った口髭もよく似合っている。
そして、こちらを見た瞳は、ジョシュアと同じ、赤い色をしていた。

「お待たせしてすみませんでした。丁度、取引先から電話が来てしまって」

ジョシュアが大人になって、立派なジェントルマンになったら、
こういうかんじになるのかも、とアイヴィーは感じた。
甥の顔を見た伯父は、穏やかに微笑した。

「来てくれてありがとう、ジョシュア。おかえり」

「……ただいま、伯父さん」

アイヴィーから見て、ジョシュアの返事は、なんとなくぎこちなかった。

「あの、伯父さん、怪我の具合は?」

「ああ、もうすっかり良くなったよ。大丈夫」

「そうですか。良かった……」

ジョシュアは本当に安堵した様子だった。
いい子過ぎて、アイヴィーは泣けてくる想いだった。

「ニュースでは大袈裟に報道されてしまったから、心配させてすまなかったね。
私は、野球のバットのような物で一度殴られただけで、
頭に少し痣ができた程度なんだ。ヘンリーが守ってくれたから」

当主が見上げたのは、当主の後方に立っていた男。
高そうなグリーンのスーツも、尖った鷲顎も、プライドの高そうなキツイ視線も、
いかにもデキル男といった顔だ。部屋に入った瞬間から観察されていた。
アイヴィーは初めて見る顔だったが、それはジョシュアも同じだったらしく。

「じゃあ、そちらの方が、怪我をされた秘書さんですか?」

「そうだよ。ああ、ジョシュアもヘンリーと会うのは今日が初めてかい?
では紹介するよ。彼はグラントの新規事業に必要な人でね、
最近入って貰った、私の新しい秘書なんだ。今日は彼も同席させて下さい」

眼鏡の男が一歩前に出て、挨拶をした。

「グラントの秘書を務めております、ヘンリー・トルーマンと申します。
どうぞ宜しくお願い致します、皆様。
本日は、お目にかかれて光栄です、ジョシュア殿下」

「殿下なんて、そんな……」

ジョシュアは、ロレートの人間以外に「殿下」と呼ばれたことに驚いたらしい。

「あ、いえ、すみません。宜しくお願いします……」

殿下と呼ばれても可笑しくない身分に、既になっていることに、自分で気が付いたようだ。
自分の新しい身分に慣れていない、ジョシュアのたどたどしさは場を少し和ませた。
当主はパチンと両手を合わせながら、

「ああ、皆さんを立たせたままですみません。どうぞお掛け下さい」

当主が皆に席を勧める。眼鏡の秘書は座らず、当主の後方に控えていた。
ジョシュアとアイヴィーは、当主の正面に座ったが、
ラルヴィスは座ることを固辞した。その様子を見て、当主は微笑んだ。

「レイナさんは以前から変わりませんね。しかし今日、
側近のレイナさんがジョシュアの護衛で来て下さるとは」

「伯父さん、レイナさんと知り合いだったんですか?」

「もちろん。入学前の詳しい話はジョシュアには話していなかったけれどね。
お前の保証人がカーディス国王陛下であることは、もう聞いているね?」

「はい」

「ジョシュアを聖アルフォンソ学院に入れてはどうか、と提案して下さったのは、
カーディス国王陛下だった。レイナさんは、お前が入学できるまでの間、
ロレートとグラントの連絡係を務め、両家の間を上手く取り持って下さった。
お前がスムーズに聖アルフォンソ学院に入学できたのも、
レイナさんが架け橋となってくれたからだ。
お前は入学前からずっと、レイナさんにお世話になっていたんだよ?」

「そうだったんですか……すみません、レイナさん。俺、知らなくて」

「ご存知なかったのは当然です。殿下ご本人にはお伝えしないよう、
グラント様にお願いしていたのは、ロレートなのですから。
こちらこそグラント様には、殿下の王位継承権復帰の折には、
お世話になり、ありがとうございました」

「いえ、こちらこそ。ところで、陛下はお変わりありませんか?」

「ええ。お元気でいらっしゃいます。陛下もグラント様を心配されておりました。
お怪我が良くなったとのこと、陛下にもお伝えさせて頂きます」

「ええ。ピンピンしていたとお伝え下さい。
陛下にもご心配をおかけして申し訳ありませんね」

グラント家とロレート大公家の挨拶が終わると、
当主の視線はアイヴィーに向けられた。その時になってアイヴィーは、
自分だけが両家の関係者ではない異分子だと、気付かされたような気がした。

「ではジョシュア? そちらの方が学院直属の、
警備組織からおいで頂いた方だね?」

「はい。アイヴィーは警備組織の司令官です。
俺達生徒は、いつもお世話になっています」

「司令官、ですか。トップの方に護衛して頂き、大変恐縮です。
司令官さんとは、今日が初めてになりますね」

当主はアイヴィーに手を差し出した。

「初めまして。私がジョシュアの伯父の、ネイサン・グラントです」


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