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■闇の家系08 続編
グラント当主との対面を終えたアイヴィー達三人は、
今夜宿泊する、ランベール館の一室に居た。
この部屋はゲスト用の部屋だそうで、ベッドも三つ用意されていた。
今夜はこの広い部屋で、ジョシュア、アイヴィー、ラルヴィスが一緒に泊まる。
「てゆうか、ちょっと広過ぎないかなー、この部屋。
ベッドもでかいし、ソファもクッションもフッカフカだし」
アイヴィーはクッションを抱きながら、ソファの座り心地を確かめている。
「ねえ。ラルちゃんも、そんな端っこに立ってないでさ、
コッチ来て座ったら? この部屋は俺達三人しか居ないんだしさ」
「いえ。わたくしにはどうぞお構いなく」
「じゃあ、ジョシュアー」
「はい?」
「お前さんからラルちゃんに『座って』って言ってあげて?」
「あ、はい。すみません。あの、良かったら、レイナさんも座って下さい」
「……殿下にまでお気遣い頂き、申し訳ございません。
畏まりました。それでは失礼させて頂きます」
「よっし。みんな座ったところで、やっと落ち着いたね。
今日はみんなお疲れ。伯父さんとのご対面も無事に終わって良かったな?」
「ええ。でも、驚きました。伯父さんが俺を次の当主にしたいと思っていたなんて」
「俺もそんな話が出てくるとは思ってなかったけどさ。
グラントの家訓上は男系の子孫が受け継ぐってルールなんだろ?
突然自分が死んだあとも、ちゃんとそのルールが守られるように、
ジョシュアにも、一応、話しておいたってかんじなんじゃないかなあ?」
「そうですね。そうかもしれません」
ジョシュアには同意を得ながらも、アイヴィーの胸にはモヤモヤが残る。
父エドワードの没後、突然グラント家に舞い込んだ後継者候補第一位。
おそらくジョシュアは『自分はグラント家にとって邪魔な存在』だと、
そう思ってきた筈だ。長い間ずっと。
ところが、今日、ご当主から聞いた話では、
ジョシュアのことを邪魔な存在と思うどころか、
本当に次期当主にしたいと思っていた、というのである。
ならば、これまで肩身の狭い想いをしてきたジョシュアは、何だったのだろう。
それとも、ご当主がジョシュアに好意的だったからこそ、
周囲の目が厳しく、それがジョシュアに突き刺さっていたのだろうか。
幼い頃のジョシュアは、この家に居た時、
誰に、どういう目で、見られていたんだろう。
アイヴィーは、少し想像するだけで、背筋が寒くなるようだった。
「ねえ。ラルちゃんはさ、今日の話、やっぱり王様にご報告するんだよね?」
「ええ。お伝え致します」
「だよねー」
アイヴィーはソファに身体を預け、喉仏を天井に向ける。
「なんかコッチに来て、ますます解んなくなってきちゃったなー。
グラントのご当主は、思ってたよりイイ人だったしー」
「アイヴィー。伯父さんのこと、悪い人だと思っていたんですか?」
「あ。いやー、グラントは悪く言われることもあるからさー。
でも、実際に会ってみると、めっちゃ紳士で、ステキなオジサマじゃん?
お前さんとも血が繋がってるだけあって、イケメンだったしな?」
「そう、ですか?」
「ああ。見た目だけじゃなくて、話し方とかも落ち着いてたし、
ウソ吐いてるようにも見えなかったし。
ジョシュアのことも、色々考えてくれてたみたいだしな?」
「ええ。伯父さんは昔からそうです。俺にも母にも優しくて、
俺がここに住んでいた時も、本当に良くして頂きました」
「そっか。ま。あとは明日、アルフォンソ島まで無事に帰るだけだな」
「そうですね」
「心配しなさんな。お前さんのことは俺が、死んでも守るから。
今日はラルちゃんも一緒に居てくれるし。ね?」
「アイヴィー様の仰る通りです。今宵はわたくし達がずっとお側におります。
殿下は何もご心配なさらず、ごゆるりとお休み下さい」
「そうそう。ってコトで今日はもう寝な? 疲れたろ? んじゃ、おやすみー」
「……駄目です。アイヴィーも俺と同じこと言っています」
「何が?」
「死んでも守るなんて言わないで下さい。
アイヴィーが犠牲になって、俺が助かっても駄目なんです。
アイヴィーも一緒に帰りましょう、アルフォンソ島へ。
レイナさんもです。怪我をせずに、ロレートに帰ると約束して下さい」
「殿下……畏まりました。殿下の仰せのままに」
「ムチャクチャ言うねえ、護衛の人間に向かって」
「でも、みんなが無事に帰らないと、きっと博士に叱られます」
「ハハッ。まーね。怒りんぼだからなー、ソクちゃんは。
わーったよ。俺もちゃんと帰るから。今日はもう寝な?
あ、俺達はしばらく、オトナのポーカーして遊んでるけど、
お前さんは気にしないで寝るんだぞ?」
ジョシュアが眠っている間も、二人は護衛を続けなくてはいけない。
それが二人の仕事で、その為に同じ部屋に泊まるのだと、
ジョシュアは理解してくれたようだった。
「……解りました。では、すみませんが、先に休みます。
おやすみなさい、アイヴィー、レイナさん」
「おう。おやすみー」
アイヴィーは片手を挙げ、ラルヴィスは頭を下げた。
「おやすみなさいませ、殿下」
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グラント当主との対面を終えたアイヴィー達三人は、
今夜宿泊する、ランベール館の一室に居た。
この部屋はゲスト用の部屋だそうで、ベッドも三つ用意されていた。
今夜はこの広い部屋で、ジョシュア、アイヴィー、ラルヴィスが一緒に泊まる。
「てゆうか、ちょっと広過ぎないかなー、この部屋。
ベッドもでかいし、ソファもクッションもフッカフカだし」
アイヴィーはクッションを抱きながら、ソファの座り心地を確かめている。
「ねえ。ラルちゃんも、そんな端っこに立ってないでさ、
コッチ来て座ったら? この部屋は俺達三人しか居ないんだしさ」
「いえ。わたくしにはどうぞお構いなく」
「じゃあ、ジョシュアー」
「はい?」
「お前さんからラルちゃんに『座って』って言ってあげて?」
「あ、はい。すみません。あの、良かったら、レイナさんも座って下さい」
「……殿下にまでお気遣い頂き、申し訳ございません。
畏まりました。それでは失礼させて頂きます」
「よっし。みんな座ったところで、やっと落ち着いたね。
今日はみんなお疲れ。伯父さんとのご対面も無事に終わって良かったな?」
「ええ。でも、驚きました。伯父さんが俺を次の当主にしたいと思っていたなんて」
「俺もそんな話が出てくるとは思ってなかったけどさ。
グラントの家訓上は男系の子孫が受け継ぐってルールなんだろ?
突然自分が死んだあとも、ちゃんとそのルールが守られるように、
ジョシュアにも、一応、話しておいたってかんじなんじゃないかなあ?」
「そうですね。そうかもしれません」
ジョシュアには同意を得ながらも、アイヴィーの胸にはモヤモヤが残る。
父エドワードの没後、突然グラント家に舞い込んだ後継者候補第一位。
おそらくジョシュアは『自分はグラント家にとって邪魔な存在』だと、
そう思ってきた筈だ。長い間ずっと。
ところが、今日、ご当主から聞いた話では、
ジョシュアのことを邪魔な存在と思うどころか、
本当に次期当主にしたいと思っていた、というのである。
ならば、これまで肩身の狭い想いをしてきたジョシュアは、何だったのだろう。
それとも、ご当主がジョシュアに好意的だったからこそ、
周囲の目が厳しく、それがジョシュアに突き刺さっていたのだろうか。
幼い頃のジョシュアは、この家に居た時、
誰に、どういう目で、見られていたんだろう。
アイヴィーは、少し想像するだけで、背筋が寒くなるようだった。
「ねえ。ラルちゃんはさ、今日の話、やっぱり王様にご報告するんだよね?」
「ええ。お伝え致します」
「だよねー」
アイヴィーはソファに身体を預け、喉仏を天井に向ける。
「なんかコッチに来て、ますます解んなくなってきちゃったなー。
グラントのご当主は、思ってたよりイイ人だったしー」
「アイヴィー。伯父さんのこと、悪い人だと思っていたんですか?」
「あ。いやー、グラントは悪く言われることもあるからさー。
でも、実際に会ってみると、めっちゃ紳士で、ステキなオジサマじゃん?
お前さんとも血が繋がってるだけあって、イケメンだったしな?」
「そう、ですか?」
「ああ。見た目だけじゃなくて、話し方とかも落ち着いてたし、
ウソ吐いてるようにも見えなかったし。
ジョシュアのことも、色々考えてくれてたみたいだしな?」
「ええ。伯父さんは昔からそうです。俺にも母にも優しくて、
俺がここに住んでいた時も、本当に良くして頂きました」
「そっか。ま。あとは明日、アルフォンソ島まで無事に帰るだけだな」
「そうですね」
「心配しなさんな。お前さんのことは俺が、死んでも守るから。
今日はラルちゃんも一緒に居てくれるし。ね?」
「アイヴィー様の仰る通りです。今宵はわたくし達がずっとお側におります。
殿下は何もご心配なさらず、ごゆるりとお休み下さい」
「そうそう。ってコトで今日はもう寝な? 疲れたろ? んじゃ、おやすみー」
「……駄目です。アイヴィーも俺と同じこと言っています」
「何が?」
「死んでも守るなんて言わないで下さい。
アイヴィーが犠牲になって、俺が助かっても駄目なんです。
アイヴィーも一緒に帰りましょう、アルフォンソ島へ。
レイナさんもです。怪我をせずに、ロレートに帰ると約束して下さい」
「殿下……畏まりました。殿下の仰せのままに」
「ムチャクチャ言うねえ、護衛の人間に向かって」
「でも、みんなが無事に帰らないと、きっと博士に叱られます」
「ハハッ。まーね。怒りんぼだからなー、ソクちゃんは。
わーったよ。俺もちゃんと帰るから。今日はもう寝な?
あ、俺達はしばらく、オトナのポーカーして遊んでるけど、
お前さんは気にしないで寝るんだぞ?」
ジョシュアが眠っている間も、二人は護衛を続けなくてはいけない。
それが二人の仕事で、その為に同じ部屋に泊まるのだと、
ジョシュアは理解してくれたようだった。
「……解りました。では、すみませんが、先に休みます。
おやすみなさい、アイヴィー、レイナさん」
「おう。おやすみー」
アイヴィーは片手を挙げ、ラルヴィスは頭を下げた。
「おやすみなさいませ、殿下」
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