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Marginal Prince Short Story
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■ハルヤ×レッド
■シルヴァン→ハルヤ→レッド×ユウタ
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デッドプリンスのバンド練習。
街にある地下のスタジオを借りて、今日は2時間練習する予定だった。
シルヴァンは早くから来ていたが、
開始時間を過ぎても、残りの二人が現れなかった。

やっと静かな足音が降りて来る。
それは明らかにレッドのものではない。
ドラマーのシルヴァンは、ステックを上げる。

「珍しいですね、ハルヤが遅刻ギリギリだなんて。レッドもまだなんですよ?
僕一人で寂しくて死んでしまうかと思いました♪」

「ごめん。…レッド、今日遅れて来るって」

「遅刻魔さんですね、レッドは」

「ユウタと、どっか行くみたいだった」

「そうですか。最近、仲良いですね、あの二人」

「うん…レッド。最近、ユウタとばっか遊んでるよねー。
まあ、解るけどさ。
レッド、今まで芝居の話とかしてなかったじゃん?」

「ええ。バンド活動に熱を上げていましたからね」

「元々、レッドのファンだったユウタが来てさ、
ユウタがあの映画が良かったよとかって話するとレッド喜ぶし、
ユウタもレッドが映画の裏話とかすると喜ぶから。
お互いにファンとスターに出会えて嬉しいんだよね」

「そうですねえ。二人とも会えたことがラッキーだったと思っているでしょうね」

「だけど、こんなふうにバンドの練習サボられるの困るよ。
もうすぐライブなのに。レッド、ぶっつけ本番で大丈夫とか言い出しそうだし。
レッドのアドリブに振り回されるの俺達じゃん」

珍しく拗ねたような言い回しが可笑しくて、
シルヴァンは、少しからかってみたくなる。

「ハルヤが困るのは、レッドがユウタに取られてしまうことなんじゃないですか?」

すぐに否定されると思って言った冗談は、
ハルヤを硬直させてしまった。

「…あの、ハルヤ?」

彼の足が一歩後ずさる。
搾り出すような声で、謝罪の言葉を口にする。

「…ごめん。俺…」

「え、ちょっと、ハルヤ!?」

走って階段を上がっていく。
シルヴァンはまた地下室に一人取り残された。

「…僕、寂しくて死んじゃうかもしれませんよ?」


ハルヤは走り続けて、広場の噴水に来ていた。
走るなんて慣れてなくて、息がかなり上がっている。

噴水の縁に腰掛ける。
乱れた呼吸が静まるにつれ、冷静さを取り戻す。
今の自分の行動を再確認する。

「…練習、抜けて来ちゃって…バカだ、俺」

シルヴァンの台詞が頭の中でリピートされる。
びっくりした。
思ってもみなかったことを言われた。

「ユウタに、レッドが取られるなんて…そんな子供みたいなことあるわけ…」

自分の気持ちが解らない。
なんでこんなにイライラしてんだろ。
ユウタが悪いわけじゃないのに。
ユウタはこれっぽっちも悪くないのに。
だけど今、レッドが此処に居なくて。
ユウタの傍にはレッドが居るんだ。
それだけのことが、どうして、こんなに。

「ハルヤ! お前、何サボってんだよ!」

「レッド!?」

「ほら戻るぞ、ハルヤ。ライブ、来週なんだぜ?」

「レッドだって…遅れて来たくせに」

「しょーがないだろ? これ、買って来たんだから」

レッドはポケットから小さな袋を見せる。
ギターの弦だ。

「一気に2本も切れてさー。参ったぜ」

「それ、ユウタと、買って来たの?」

「ああ。ユウタ、そういう店、行ったことないから、って付いて来たけど?」

「そう…」

「なんだ、お前。ユウタのこと、また気にしてんのかよ…」

「また?」

「だってお前…俺が日本語解らねーの良いことに、
ユウタと日本語で話したりしてんじゃん!」

「それは…ユウタが英語ばっかじゃ疲れるから、
偶には日本語で話したいって言うからで…」

「俺があれだけ、日本語禁止って言ってんのに!
そんなに日本語でユウタと話すの楽しいのかよ!
俺を、のけもんにしてんじゃねえ!」

「ユ、ユウタと話してばっかのは、レッドじゃん。
俺が解らない映画の話、いつも楽しそうにして」

「だって、あいつが映画の話教えてって言ってくるからっ!」

ハルヤが、くすりと笑う。
ほぼ同時に、レッドも笑い出した。

「ほら、ハルヤ。戻るぞ! スタジオ借りられんの後1時間しかねーじゃん!」

「はいはい」

「あっ、そうだ、コレ」

レッドはポケットから、小さな三角の板を取り出した。
ギターを弾くピックだ。
赤いピックが2枚ある。

「弦買った店にあったんだ!
見ろよ、コレ! すっげーカッコイイだろ!?」

「レッドは赤いものは何でも格好良く見えるんでしょ」

「人を闘牛みたいに言ってんじゃねーよ!」

「幾ら赤が好きだからって、おんなじピック2枚も買う?」

「俺のじゃねーよ。1個はお前にやろーと思ったのに!」

「俺に?」

「ハルヤには、このピックの魅力が解んねーみたいだから、あげんのやーめた!」

「やっ、いるよ!」

ハルヤは慌てて1枚奪う。

「勝手に取んなよ、ハルヤ!」

「俺にくれる為だったんでしょ」

「そーだけど…」

「ありがと。今度のライブ、これで弾くよ」


二人がスタジオに戻ると、
部屋の隅で、しくしく泣いている人が居た。


fin
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