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■シルヴァン ハルヤ テオ
■シハル姉さん、リクエストありがとうございました!
天気の良い放課後。
ハルヤはシルヴァンと一緒に校舎から寮へ帰るところだった。
今は夕方と言える時刻だが、空はまだ明るく、肌寒くもない。
春になって、明るい時間は徐々に増えていた。
「ハルヤ。ウーティスへ帰る前に、シュヌーシアに寄っても良いですか?」
ウーティスというのは自分達が暮らしている第一学生寮。
シュヌーシアは第三学生寮で、一番新しい寮だと前に聞いた。
「良いけど、なんか用事?」
「はい! テオがカブキのビデオを貸してくれるんです。
良かったら、あとで、ハルヤも一緒に見ませんか?
さっきみたいに、色々教えて欲しいですー」
「歌舞伎か。見たことある演目じゃないと解んないと思うけど」
「ハルヤはカブキを生で見たことあるんですか!?」
「小さい時に、じいさまに連れられて、ちょっとね。勉強になるからって」
歌舞伎の話をさせられながら、シュヌーシア寮に着いた。
シルヴァンはテオの部屋には向かわず、サロンのドアを開けた。
ハルヤがシルヴァンの背中から、少し顔を出すと、
サロンには寮生がいつも以上に集まっていた。
テーブルの上や周りには、何かカラフルな物が散乱している。
窓際の花瓶には、白いユリの花が飾られていた。
「こんにちはー! テオ、居ますかー?」
「おや、シルヴァン」
天然の緩やかな波がある金髪がすぐに振り向いた。
この人がシュヌーシアの最上級生で、今年の生徒代表テオ・メネシス。
ハルヤは反射的に、シルヴァンの背中に半身を隠す。
「と、東洋の黒い真珠じゃないか!」
当然すぐに見つかってしまった。
テオは、右手に黄色くて丸い何かを持ったまま、
抱きつかんばかりの勢いで、こちらに近付いてくる。
「君達お揃いで、私に会いに来てくれたのかい!?」
「この前約束していた、カブキのビデオを借りに来たんですよ」
「ああ、あのカブキの!」
「良かったら、今、お借りできますか?」
「もちろん! 部屋へ取りに行ってくるから、ここで待っていてくれるかい?」
「はい! ありがとうございますー!」
手に持っていた黄色くて丸い物をテーブルに置いて、テオはサロンを出て行った。
テオの姿が見えなくなると、ハルヤはシルヴァンの後ろから前に出てきた。
テオがテーブルの上に置いた物は、黄色くて薄いプラスチックのケースだった。
卵のような形をしていて、真ん中が割れるようになっている。
他の生徒達の周りにも、それがたくさん転がっており、
色は黄色だけでなく、青や緑に虹色など、何種類もあるようだった。
「これは何だろう、って顔してるね?」
ハルヤの心を読んだのは、シュヌーシアの生徒で、シルフェという人だ。
学年はハルヤと同じ高等部一年なのだが、同い年とは思えないくらい、
妙に大人っぽい雰囲気のある人だった。
シルフェはピンク色の卵型ケースを見せながら、
「東洋の黒い真珠は、したことないのかな? コレ」
「うん」
ハルヤが頷くと、周りの生徒達は純粋に驚いたようで、
珍しいものを見るような目で、一斉に見られて、ハルヤはビクリとする。
「明後日の準備ですか」
シルヴァンはテーブルの上から、青い星柄の卵型ケースをひとつ手に取りながら、
「これはエッグハント用のエッグですよ、ハルヤ」
「えっぐはんと?」
「この卵を隠して、たくさん見つけた人が勝ち、
というゲームなんですが、聞いたことありません?
イースターのイベントのひとつなんですが」
「イースターって、キリスト教の復活祭だよね?
ゆで卵に絵の具を塗ったりするだけじゃないんだ?」
「ああ、そこまではご存知なんですね? そうですよ。
ゆで卵を綺麗に飾るエッグペイントもありますが、
エッグハントでは、プラスチックのエッグを使ったりするんです、最近は。
このケースの中にお菓子やオモチャを入れることができますから」
ハルヤのブレザーが下から引っ張られる。
ブレザーの裾を持っていたのは、シュヌーシアの小さい子。
確か、中等部二年生のラビという子だ。ラビはハルヤを見上げながら、
「じゃあ、東洋の黒い真珠は、エッグロールもやったことないの?」
「う、うん。エッグロールって?」
「イースターエッグを転がすんだよ、割らないように」
「そんなのもあるんだ。イースターって、意外と忙しいんだね」
笑いが起きたところで、テオが帰ってきた。
「おやおや、みんな楽しそうだね。
あ、シルヴァン、これがお約束のカブキビデオだよ」
「ありがとうございますー!」
「ねえ、テオ、聞いてー」
「ん? なんだい、ラビ」
「今、みんなで話してたんだけどね、東洋の黒い真珠は、
エッグハントもエッグロールもやったことないんだってー」
余計なことを言われた、とハルヤが思った時にはもう遅い。
恐る恐るテオのほうを見ると、キラキラと輝いた眼差しが向けられていた。
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■シハル姉さん、リクエストありがとうございました!
天気の良い放課後。
ハルヤはシルヴァンと一緒に校舎から寮へ帰るところだった。
今は夕方と言える時刻だが、空はまだ明るく、肌寒くもない。
春になって、明るい時間は徐々に増えていた。
「ハルヤ。ウーティスへ帰る前に、シュヌーシアに寄っても良いですか?」
ウーティスというのは自分達が暮らしている第一学生寮。
シュヌーシアは第三学生寮で、一番新しい寮だと前に聞いた。
「良いけど、なんか用事?」
「はい! テオがカブキのビデオを貸してくれるんです。
良かったら、あとで、ハルヤも一緒に見ませんか?
さっきみたいに、色々教えて欲しいですー」
「歌舞伎か。見たことある演目じゃないと解んないと思うけど」
「ハルヤはカブキを生で見たことあるんですか!?」
「小さい時に、じいさまに連れられて、ちょっとね。勉強になるからって」
歌舞伎の話をさせられながら、シュヌーシア寮に着いた。
シルヴァンはテオの部屋には向かわず、サロンのドアを開けた。
ハルヤがシルヴァンの背中から、少し顔を出すと、
サロンには寮生がいつも以上に集まっていた。
テーブルの上や周りには、何かカラフルな物が散乱している。
窓際の花瓶には、白いユリの花が飾られていた。
「こんにちはー! テオ、居ますかー?」
「おや、シルヴァン」
天然の緩やかな波がある金髪がすぐに振り向いた。
この人がシュヌーシアの最上級生で、今年の生徒代表テオ・メネシス。
ハルヤは反射的に、シルヴァンの背中に半身を隠す。
「と、東洋の黒い真珠じゃないか!」
当然すぐに見つかってしまった。
テオは、右手に黄色くて丸い何かを持ったまま、
抱きつかんばかりの勢いで、こちらに近付いてくる。
「君達お揃いで、私に会いに来てくれたのかい!?」
「この前約束していた、カブキのビデオを借りに来たんですよ」
「ああ、あのカブキの!」
「良かったら、今、お借りできますか?」
「もちろん! 部屋へ取りに行ってくるから、ここで待っていてくれるかい?」
「はい! ありがとうございますー!」
手に持っていた黄色くて丸い物をテーブルに置いて、テオはサロンを出て行った。
テオの姿が見えなくなると、ハルヤはシルヴァンの後ろから前に出てきた。
テオがテーブルの上に置いた物は、黄色くて薄いプラスチックのケースだった。
卵のような形をしていて、真ん中が割れるようになっている。
他の生徒達の周りにも、それがたくさん転がっており、
色は黄色だけでなく、青や緑に虹色など、何種類もあるようだった。
「これは何だろう、って顔してるね?」
ハルヤの心を読んだのは、シュヌーシアの生徒で、シルフェという人だ。
学年はハルヤと同じ高等部一年なのだが、同い年とは思えないくらい、
妙に大人っぽい雰囲気のある人だった。
シルフェはピンク色の卵型ケースを見せながら、
「東洋の黒い真珠は、したことないのかな? コレ」
「うん」
ハルヤが頷くと、周りの生徒達は純粋に驚いたようで、
珍しいものを見るような目で、一斉に見られて、ハルヤはビクリとする。
「明後日の準備ですか」
シルヴァンはテーブルの上から、青い星柄の卵型ケースをひとつ手に取りながら、
「これはエッグハント用のエッグですよ、ハルヤ」
「えっぐはんと?」
「この卵を隠して、たくさん見つけた人が勝ち、
というゲームなんですが、聞いたことありません?
イースターのイベントのひとつなんですが」
「イースターって、キリスト教の復活祭だよね?
ゆで卵に絵の具を塗ったりするだけじゃないんだ?」
「ああ、そこまではご存知なんですね? そうですよ。
ゆで卵を綺麗に飾るエッグペイントもありますが、
エッグハントでは、プラスチックのエッグを使ったりするんです、最近は。
このケースの中にお菓子やオモチャを入れることができますから」
ハルヤのブレザーが下から引っ張られる。
ブレザーの裾を持っていたのは、シュヌーシアの小さい子。
確か、中等部二年生のラビという子だ。ラビはハルヤを見上げながら、
「じゃあ、東洋の黒い真珠は、エッグロールもやったことないの?」
「う、うん。エッグロールって?」
「イースターエッグを転がすんだよ、割らないように」
「そんなのもあるんだ。イースターって、意外と忙しいんだね」
笑いが起きたところで、テオが帰ってきた。
「おやおや、みんな楽しそうだね。
あ、シルヴァン、これがお約束のカブキビデオだよ」
「ありがとうございますー!」
「ねえ、テオ、聞いてー」
「ん? なんだい、ラビ」
「今、みんなで話してたんだけどね、東洋の黒い真珠は、
エッグハントもエッグロールもやったことないんだってー」
余計なことを言われた、とハルヤが思った時にはもう遅い。
恐る恐るテオのほうを見ると、キラキラと輝いた眼差しが向けられていた。
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