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Marginal Prince Short Story
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Song for Me2 続編
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楽屋が俺とシルヴァンの二人だけになる。俺は掛け時計を見上げた。

「あと十分後に俺達も出なきゃね」

「ハルヤー」

「ん?」

「ハルヤのスマフォ、ちょっと貸してくれます?」

「え? うん、良いけど? どうしたの?」

俺のスマートフォンを渡した途端、肩を引き寄せられて、
カシャ、と写真を撮った音がした。

「ハイッ! 僕とハルヤのツーショット撮れましたー!」

「また、撮るよ、って言わないで撮るし……」

「これ、ファンメに載せて送って下さいね!」

「やだよ、恥ずかしい……」

「それは、僕とのラブラブショットは、誰にも見せないで、
二人だけのものにしたい、という意味ですか?」

「ち、違うよ……」

「じゃー、載せてくれますよねー?
宜しければ、僕が代わりにファンメ書いてあげましょうか?」

「だ、ダメだよっ! もう、解ったよ。ちゃんと書くから、返して」

「はーい。お返ししまーす」

仕方なくシルヴァンが勝手に撮った写真を添付して、
ファンメールを書くことにした。シルヴァンに見られながら。

メールの本文は、こう書いた。

生放送終わりました。見てくれた人ありがと。
シルヴァンが俺のスマートフォンで、勝手に写真を撮ってしまいました。
どうしてもファンメールに載せて欲しいそうなので、載せます。
良い子の皆さんは人のスマートフォンで勝手に写真を撮らないように。
って当たり前だよね。じゃあ、おやすみなさい。

そう書いて俺はメールを送信した。
このメールは最初に、マネージャーの##NAME1##さんと社長のアンリに届く。
二人のうちどちらかが内容をチェックし、問題がなければ、
俺のファンメールに登録しているファンのみんなへ、
一斉に送信されるシステムになっている。

##NAME1##さんかアンリは、すぐにメールをチェックしてくれたようで、
間もなく、俺とシルヴァンのスマートフォンはメールを受信した。
シルヴァンは嬉しそうに、スマートフォンを見た。
わざわざこちらに画面を見せてくる。

「わーい! 僕とのツーショットが映ったファンメ、
届きましたー! ありがとうございます、ハルヤ!」

「なんで、そんなに喜んでんだよ……。
シルヴァンは俺のファンじゃないでしょ?」

「何言ってるんですか。僕はハルヤの大ファンですよー!」

ファンメールはメンバーの三人も互いに登録しあっている。社長命令で。
だから俺達は、自分以外のメンバーが、
どんなファンメールを送っているのかも解るようになっていた。

メンバーも互いのファンメールを読んでいることを、
ファンのみんなも知っている。
この前なんか、レッドが「ハルヤに業務連絡ー」とか言って、
ファンメールに俺宛のメッセージを書いてきたりもした。

でも、その内容は、業務連絡でも何でもなくて、
「この前貸したマンガ、今日こそちゃんと持ってくるように!」だった。
恥ずかしい。そんなことファンメールに書かなくても良いのに。

「おや? ハルヤ、またメールが来たみたいですよ?」

「え?」

俺のスマートフォンがまたメールを受信したようだ。
誰からだろう、と思って、画面を見てみると。

「あ……兄様からメールだ」

「ハルヤのお兄様から? 良かったじゃないですか!
お兄様、何て書いて下さったんです?」

俺は兄様からのメールに目を通したあと、
スマートフォンごと、シルヴァンに手渡した。
シルヴァンは声に出して、メールを読んだ。

『今やってた番組、見たよ。面白かった。うちも今度、
アボカドとしめさば、やってみよかて、父さんも笑うてたわ。
春也はすっかり、あの大御所に気に入られてるみたいやな。凄いわ。
忙しいと思うけど、身体は大事に。おやすみ』

メールを読んだシルヴァンは、自分のことみたいに喜んでた。

「スゴイ! 今の生放送、お兄様とお父様も見ていてくれたんですね!」

「うん……そうみたいだね……」

「お父様にも楽しんで貰えて良かったですね、ハルヤ!」

「うん……」

兄様がくれるメールは、いつも俺をじんわり温めてくれる。
兄様がこうしてメールをくれるようになったのは、
兄様と俺の跡取り争いが終わってからだと思う。

俺達兄弟は、進む道が変わってから、距離が近付いたのかもしれない。
父様とも、前より肩の力を抜いて話せるようになった気がする。
兄様と父様が俺を見ていてくれた。俺はそれだけで本当に嬉しかった。

「あっ、そう言えば、レッドが出発してから、
そろそろ、十分、過ぎちゃってません?」

「えっ? 本当? 俺達も早く出なきゃ」

慌てて荷物を持ち、俺達は楽屋から出発した。

テレビ局の出口には、ファンに囲まれてるレッドの姿があった。
レッドに夢中で、ファンの子達は、シルヴァンと俺が、
ドアから出てきたことに、全然気が付いていないみたいだった。
おかげで俺達は、誰にも声を掛けられず、テレビ局を出ていくことができた。

「はーい。おうちに着きましたー」

シルヴァンの運転で、俺達が住んでいるマンションの駐車場に着いた。
俺は助手席から、窓の向こうに誰かの姿がないか確認した。

「おや。どうしたんですか、ハルヤ。キョロキョロして」

「いや、誰かに付けられてないかなと思って」

シルヴァンはシートベルトを外しながら、

「大丈夫ですよ、もう巻きましたから」

「えっ?」

「さ、早く帰りましょう、僕達のおうちに。
僕、おなか空いちゃいましたー」

「ああ、うん。そうだね」

都内にあるマンションの一室が、今の俺達の家。
景色が素敵なところ、というシルヴァンの希望で、高層階の部屋になった。
窓の向こうには、背の高いタワーが見える。

シルヴァンがドアの鍵を開けてくれて、俺達は部屋に入った。
真っ暗な部屋に、シルヴァンが明かりを付けていく。

俺はリビングのロングソファに座った。
シルヴァンはキッチンに行った。冷蔵庫を開ける音が聞こえる。
とりあえず俺は、テレビを付けた。

グラスに口付けながら、シルヴァンがリビングに来る。
グラスの中は淡いイエロー。シルヴァンが好きなレモネードだろう。
シルヴァンは俺の隣に座った。向かいのソファが空いているのに。

「それにしても、不思議ですよねえ」

「何が?」

「だって、僕達が同棲していると生放送でバラしているのに、
僕達はスキャンダルにもならないんですから」

「ど、同棲だなんて言わないでよ。
俺達のはメンバー同士のルームシェアでしょ?」

「ルームシェアなどではないでしょう?
僕達は既にあーんなことや、こーんなことまでしている関係なのですから」

「そ、それは……でも、シルヴァン、本当は今でも、##NAME1##さんのことが」

「あっ。もしかして、先程、楽屋で話していたことが原因なんですか?
##NAME1##の話をしている時に、
僕が『大好きな皆さんと一緒に居られて嬉しい』と言ったから」

「いや、あの……」

「すみません、誤解させてしまうような言い方をして。
この機会に、ちゃんとお話ししますね。
僕、##NAME1##のことは大好きですよ。彼女が僕達のマネージャーで、
いつも彼女の傍に居られることは、本当に幸せなことだと思っています。
でも、僕にとって##NAME1##は、丁度、芸能人のような存在なんです。
大好きな、憧れの人ですけど、雲の上の存在というか、
僕にはもう手が届かない気がして。強力なライバルも居ますし。
ハルヤも##NAME1##のこと、僕と同じように思っているんじゃないですか?」

「そう、だね……」

学生時代から、##NAME1##さんは憧れの人だった。
男子ばかりの学校で、突然現れた、素敵な女の人。
あの時から、みんながみんな##NAME1##さんのことが好きだった。
特にレッドやアンリは今でもずっと、好きなんだと思う。

シルヴァンも、##NAME1##さんが好きなんだと俺は思ってた。
だって、信じられないんだ。
シルヴァンが、俺のことを好きだなんて。

「そろそろ解って下さいね、ハルヤ。
僕が今、一番大切な人が、誰なのか」

あっ、と思った時にはもう、俺の顔はシルヴァンの胸の中にあった。

「僕を疑わないで下さい、ハルヤ」

頭から包み込むように、優しく抱き締められていた。

「僕が一番大好きな人は誰なのか、貴方は知っている筈ですよ?
もし、まだ解らないと言うのなら、
僕は喜んで、今夜も愛を囁き続けますよ。朝まで、ね?」

俺はシルヴァンから離れる。

「い、いいよ……」

「それは、『OK』という意味ですよね?」

「『NO』って意味だよ!」

「えー? ニホンゴ、ムズカシクテ、ワッカリマセーン!」

「何言って、うわっ」

肩を押されて、俺はロングソファに倒れ込んだ。
ロングソファの上で、俺の上にシルヴァンが乗っかってる。
シルヴァンは俺のことを無言で見つめた。
すぐ近くにシルヴァンのカッコイイ顔がある。
俺は恥ずかしくて目を反らす。そしたら、少し笑われた。

「好きですよ、ハルヤ」

俺の唇がシルヴァンの唇で塞がれる。
温かくて、柔らかい。
少し甘酸っぱく感じたのは、きっとレモネードの味だ。

俺から一度離れたシルヴァンは、凄く優しい顔をしてた。
思わず俺は顔を背ける。

「あ、あの、シルヴァンもおなか空いたんでしょ? 晩ご飯にしようよ……」

「ええ。僕はおなかペコペコですよ? だから、食べさせて下さい、ハルヤを」

「な、なんだよ、それ……」

「僕としては、貴方と二人きりの楽屋で、
何もせずに我慢していた僕を褒めて欲しいくらいなんですけど?」

「そ、そんなこと考えてたの?」

「はい。僕はいつだって飢えているんですよ、貴方に。
貴方を愛しているから。解って下さい、ハルヤ」

駄目だと思うのに、シルヴァンに触られると抵抗できず、
俺は今夜も流されてしまった。


何度も「好き」だと言われる時間が終わった後。
シルヴァンは俺をぎゅっと抱き締めてくれた。

恥ずかしくて、シルヴァンには言えないけど、
俺は、さっきまでの時間より、この時間のほうが好き。
途中で、ロングソファからシルヴァンのベッドへ移動してきたし、
もうこのまま眠ってしまいたい。

「ねえ、ハルヤ?」

俺を抱き締めたまま、シルヴァンは囁くように言った。

「ん?」

「今度のアルバム、僕の為に、曲を書いてくれませんか?」

「え?」

「##NAME1##が言っていたでしょう?
次のアルバムではソロを二曲、作詞して欲しいって」

楽屋でマネージャーの##NAME1##さんに言われたことだ。
新しいアルバムにはソロ曲が二曲ずつ入り、
その作詞をして欲しいと頼まれた。

「二曲のうちの一曲は、僕に向けて、書いて欲しいんです。
もちろんファンの皆さんには、相手が僕だと解らないように」

「そ、そんなこと……」

「できませんか?」

「いや、あの、でも……」

「僕も書きます、ハルヤのことを想って」

「え……」

「きっと良い曲が書けると思います。だって、本当に、
この世で一番愛しい人のことを想って書いた歌なんですから。
今まで僕が書いた中で、一番のラブソングになると思います」

「そんなことして、大丈夫、なのかな……」

「大丈夫ですよ。僕とハルヤにしか解らないように、
書けば良いんですから。絶対に良い曲を書きますから、
楽しみにしていて下さいね、ハルヤ」

「う、うん……」

「それじゃ、そろそろ寝ましょうか。明日もありますし」

「うん。そうだね。おやすみ、シルヴァン」

「おやすみなさい、ハルヤ。大好きですよ」

頬にそっとキスをされて、俺には罪悪感が残った。
シルヴァンにどんなに好きだと言われても、
俺は未だに、その言葉を信じることができないでいる。

きっとシルヴァンは、自分では気が付いていないんだ、本当の気持ちに。
本当は、今でも##NAME1##さんが好きなのに、
##NAME1##さんに好きだと言うことができないから、
俺を身代わりにしてるんじゃないかって。俺にはそうとしか思えない。

シルヴァンが俺の為に曲を書いてくれる。
俺のことを好きだった証が残る。それは嬉しい。
いつかシルヴァンが、本当の自分の気持ちに気が付いて、
俺達の関係が終わっても、その歌は俺の手元に残るから。


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