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Marginal Prince Short Story
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■アイヴィー×ソクーロフ

ソクーロフの朝は一杯のコーヒーから始まる。

選び抜いた産地の豆を挽き、こだわりの淹れ方で、
丁寧に抽出された一杯は、至高の芸術品のようだ。
この一杯があるから、目が覚めた時、朝を嫌がらずに起きられるし、
今日一日を生きる活力となっている。

朝食後、自分の部屋で一杯のコーヒーを飲むことは、
日課と言うより、今日を始める為の儀式に近かった。

そろそろ出勤時刻だ。
カップに残ったコーヒーを名残惜しく飲み干す。

目を通していた新聞を折り畳み、朝のニュース番組を消す。
鞄を持ち、ドアへ向かう。
外へ出る前に、部屋を振り返り、
何か忘れていることはないか、自分に問い掛ける。

耳の奥で、女性の声が聞こえる。

そんな気がするだけだ。幻聴を打ち消すように、
行くか、と自分にGOを出し、ソクーロフはドアを開けた。

出勤と言っても、通勤時間はそう長くない。
学院の教職員用宿舎『ランベール館』に住んでいるからだ。

ランベール館の外に出ると、眩しい朝陽を浴びた。
空は今日も真っ青で、月桂樹の葉も嬉しそうに揺れている。

出勤と言うには短い時間で、勤務先が見えて来た。

と同時に、第三学生寮から生徒達が出てくる。
彼等も寮から校舎への通学時間なのだ。
ソクーロフの顔を見た良い子達は、元気良く朝の挨拶をしてくれた。

「あ、博士だ! おはようございます」

「おはよう、ラビ」

生徒に挨拶を返す時の自分は、『学校の先生』らしい自分になっている。
この島に来るまでの自分とは違う自分。
学校の先生になる日が来るとは思っていなかったが、
六年ここに居る間に、先生として自然に振る舞えるようになっていた。

私に学校の先生が務まっているか、疑問に感じながら、
生徒に声を掛けられれば、先生としての自分が、
自動的に笑顔になり、生徒達へ優しい言葉を掛けている。
それは自分でも不思議なことだった。

職場のドアを開ける。
誰も居ない保健室。特有の芳しい香りが迎えてくれた。
白衣に袖を通し、机の前に座る。

今日も一日の始まりだ。


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