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■迷い の続編
ジン、ホワイト・キュラソー、レモンジュース。
その3つから成る白いショートカクテル。
さっぱりとした甘さと芯の強いジンが良くマッチしている。
後味は柑橘系の香りがして、どこか切ない気がするのは、誰のせいか。
「どうしたんです、先生?」
マスターはグラスを磨きながら、カクテルグラスとソクーロフを交互に見る。
「そんなにまじまじと『ホワイト・レディ』を見て」
そんな目をしていただろうか。
ソクーロフは一口飲み終わったあとに、こう答えた。
「どうして、このカクテルに、その名が付いたのかと思っていたのですが、
マスターならご存知ですか?」
マスターの視線が右上を向く。
「確か……生まれは1919年でしたか。親はロンドンの名バーテンダーです。
しかし当時は、ジンベースではなく、ペパーミントリキュールがベースでした。
ジンベースに変わったのは1925年とも言われていますが、諸説ありましてね。
このカクテルには謎が多く、名の由来も不明のようです」
「謎のカクテル、ですか?」
「ええ。でも、私はそれで良いと思うんです、この子は」
マスターの目は白いカクテルを我が子のように見つめていた。
「それに、謎の『白い貴婦人』なんてミステリアスで魅力的じゃないですか」
成程、そうですね、とソクーロフは相槌を打った。
キュ、キュッとグラス磨きの音がする。
「あと、私が知っていることと言えば、『ホワイト・レディ』のジンを、
ブランデーに変えると『サイドカー』に、ウォッカなら『バラライカ』、
ラムだと『X-Y-Z』というカクテルになることくらいです。
名の由来が知りたいというご期待に添えず、申し訳ありません」
「ああ、いえ。少し気になっただけですから」
「でも、珍しいですね。先生がそういったご質問をされるなんて。
もしや『ホワイト・レディ』には、何か思い出があるのですか?
それとも、ご友人から何か『ホワイト・レディ』に、
まつわるお話を聞いたことがあるとか?」
「……まあ、そうですね」
「もし宜しければ、お伺いしても宜しいですか?」
「話すとしても、かなり曖昧な物言いしかできませんよ?
登場人物の名前は全て、仮の名前になるでしょうし、
彼等の業務内容についてもある組織の機密に関わる為、
具体的な名称は全て伏せた表現になりますが、それでも構いませんか?」
「ええ。もちろん」
「ではお話ししましょう。私の友人——仮にSとしておきましょうか?」
マスターは優しく微笑んで頷いた。
「Sですか。良いですね、先生のご友人ですから」
ソクーロフは少し苦笑しつつ、
「これは、友人Sから聞いた話なのですが——」
ぽつりとぽつりと語り始めた。
→
ジン、ホワイト・キュラソー、レモンジュース。
その3つから成る白いショートカクテル。
さっぱりとした甘さと芯の強いジンが良くマッチしている。
後味は柑橘系の香りがして、どこか切ない気がするのは、誰のせいか。
「どうしたんです、先生?」
マスターはグラスを磨きながら、カクテルグラスとソクーロフを交互に見る。
「そんなにまじまじと『ホワイト・レディ』を見て」
そんな目をしていただろうか。
ソクーロフは一口飲み終わったあとに、こう答えた。
「どうして、このカクテルに、その名が付いたのかと思っていたのですが、
マスターならご存知ですか?」
マスターの視線が右上を向く。
「確か……生まれは1919年でしたか。親はロンドンの名バーテンダーです。
しかし当時は、ジンベースではなく、ペパーミントリキュールがベースでした。
ジンベースに変わったのは1925年とも言われていますが、諸説ありましてね。
このカクテルには謎が多く、名の由来も不明のようです」
「謎のカクテル、ですか?」
「ええ。でも、私はそれで良いと思うんです、この子は」
マスターの目は白いカクテルを我が子のように見つめていた。
「それに、謎の『白い貴婦人』なんてミステリアスで魅力的じゃないですか」
成程、そうですね、とソクーロフは相槌を打った。
キュ、キュッとグラス磨きの音がする。
「あと、私が知っていることと言えば、『ホワイト・レディ』のジンを、
ブランデーに変えると『サイドカー』に、ウォッカなら『バラライカ』、
ラムだと『X-Y-Z』というカクテルになることくらいです。
名の由来が知りたいというご期待に添えず、申し訳ありません」
「ああ、いえ。少し気になっただけですから」
「でも、珍しいですね。先生がそういったご質問をされるなんて。
もしや『ホワイト・レディ』には、何か思い出があるのですか?
それとも、ご友人から何か『ホワイト・レディ』に、
まつわるお話を聞いたことがあるとか?」
「……まあ、そうですね」
「もし宜しければ、お伺いしても宜しいですか?」
「話すとしても、かなり曖昧な物言いしかできませんよ?
登場人物の名前は全て、仮の名前になるでしょうし、
彼等の業務内容についてもある組織の機密に関わる為、
具体的な名称は全て伏せた表現になりますが、それでも構いませんか?」
「ええ。もちろん」
「ではお話ししましょう。私の友人——仮にSとしておきましょうか?」
マスターは優しく微笑んで頷いた。
「Sですか。良いですね、先生のご友人ですから」
ソクーロフは少し苦笑しつつ、
「これは、友人Sから聞いた話なのですが——」
ぽつりとぽつりと語り始めた。
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