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Marginal Prince Short Story
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迷い の続編
ジン、ホワイト・キュラソー、レモンジュース。

その3つから成る白いショートカクテル。
さっぱりとした甘さと芯の強いジンが良くマッチしている。
後味は柑橘系の香りがして、どこか切ない気がするのは、誰のせいか。

「どうしたんです、先生?」

マスターはグラスを磨きながら、カクテルグラスとソクーロフを交互に見る。

「そんなにまじまじと『ホワイト・レディ』を見て」

そんな目をしていただろうか。
ソクーロフは一口飲み終わったあとに、こう答えた。

「どうして、このカクテルに、その名が付いたのかと思っていたのですが、
マスターならご存知ですか?」

マスターの視線が右上を向く。

「確か……生まれは1919年でしたか。親はロンドンの名バーテンダーです。
しかし当時は、ジンベースではなく、ペパーミントリキュールがベースでした。
ジンベースに変わったのは1925年とも言われていますが、諸説ありましてね。
このカクテルには謎が多く、名の由来も不明のようです」

「謎のカクテル、ですか?」

「ええ。でも、私はそれで良いと思うんです、この子は」

マスターの目は白いカクテルを我が子のように見つめていた。

「それに、謎の『白い貴婦人』なんてミステリアスで魅力的じゃないですか」

成程、そうですね、とソクーロフは相槌を打った。
キュ、キュッとグラス磨きの音がする。

「あと、私が知っていることと言えば、『ホワイト・レディ』のジンを、
ブランデーに変えると『サイドカー』に、ウォッカなら『バラライカ』、
ラムだと『X-Y-Z』というカクテルになることくらいです。
名の由来が知りたいというご期待に添えず、申し訳ありません」

「ああ、いえ。少し気になっただけですから」

「でも、珍しいですね。先生がそういったご質問をされるなんて。
もしや『ホワイト・レディ』には、何か思い出があるのですか?
それとも、ご友人から何か『ホワイト・レディ』に、
まつわるお話を聞いたことがあるとか?」

「……まあ、そうですね」

「もし宜しければ、お伺いしても宜しいですか?」

「話すとしても、かなり曖昧な物言いしかできませんよ?
登場人物の名前は全て、仮の名前になるでしょうし、
彼等の業務内容についてもある組織の機密に関わる為、
具体的な名称は全て伏せた表現になりますが、それでも構いませんか?」

「ええ。もちろん」

「ではお話ししましょう。私の友人——仮にSとしておきましょうか?」

マスターは優しく微笑んで頷いた。

「Sですか。良いですね、先生のご友人ですから」

ソクーロフは少し苦笑しつつ、

「これは、友人Sから聞いた話なのですが——」

ぽつりとぽつりと語り始めた。


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