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Marginal Prince Short Story
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ホワイト・レディ10 の続編
※蔦様、大変遅くなりましたが、お誕生日おめでとうございました!!
「ちなみに、Sは結局、謎の女には会いに行きませんでした。
あの女が、次にどれほど高飛車な発言をするかについては、
多少、興味はあっても、彼女の犬になりたいという気持ちは微塵もなく、
それなら彼女と会っても時間の無駄になってしまいますし。

それ以上に、あの女に近付いてはいけない、あの女は危険だ、
と脳が警告されたような気がしたそうです。

後日。幹部が一人 、組織を辞めたとの話をSはL博士から聞きました。
幹部がその後、どうなったか、Sは知りません。
けれどSは頭の隅でちらりとこう思ったそうです。
まさか、彼は彼女に飼われてしまったのではないかと」

話し終えたソクーロフは、カクテルグラスに手を伸ばした。
逆三角形の底に残っていた白いカクテルを飲み干す。
ホワイトキュラソーの甘味とレモンの酸味が、
すうっと身体に沁みていった。

最初、マスターはグラスを磨いていた筈だが、
いつのまにか、その手を止めて、話を聞くことに集中していた。
マスターは心配そうに尋ねる。

「あの、AさんとBさんは、そのあと、どうなったんですか?」

「Aが犯人だったこと、それを知りながらBが黙秘していたことについて、
SはL博士に全て報告しました。が、L博士はそれをC博士には伝えませんでした。
それからL博士は、AとBが二人きりで話し合える場を設けたそうです。
その後、データやラットが消失する事態は、ぴたりと止まり、
C博士のチームは、無事に論文を発表することができたそうです」

「論文が発表できたということは、その後、Aさんは当初の予定通り、
組織を辞めて、お付き合いされていた男性の方とご結婚を?」

「さあ。詳しいことは聞いていませんが。
その後もSは組織内で見かけたそうですよ?
AとBが並んで歩いているところを」

「ああ、そうでしたか。それは良かった」

マスターが胸を撫で下ろしたのを見て、ソクーロフは呟いた。

「そうでしょうか?」

「えっ?」

「Sは思い悩んだそうですよ。自分とL博士が行ったことは、
本当に、AとBの為になったことなのか、と」

マスターは口を開き、何か言おうとした。
その時、店のドアが開いた。マスターがドアのほうを見る。

「こんばんはーっと」

髪の長い男が入ってきて、カウンター席にやってくる。
男は、マスターの前に居る人物を見て、大きな声を出した。

「あー、ソクちゃんだー!」

それは聖アルフォンソ学院専属ドライバー兼、警備担当のアイヴィーだった。

「ソクちゃん、なんで居んのー?」

「……それはこちらのセリフだ」

「ここ来るんなら、俺も誘ってくれればヨカッタのにー!
あ、そうだ! 今日は偶然会えた記念に、
ソクちゃんのオゴリってコトにしない?
最近ドタキャン多かったお詫びにー」

「勝手なことを。お前は煩いから帰れ」

「ヤーダー! 今来たトコなんですー!」

「まあ、まあ、二人とも。アイヴィーはとにかく座ったらどうだい?」

「うん! んじゃね、俺、コロナー!」

「畏まりました。先生、おかわりは何にします?」

「いえ、今夜はもう帰ります」

「えー!? ソクちゃん、オゴってくんないのー!?」

「先生、もう一杯良いじゃないですか?
お話の続きも、お伺いしたいですし」

「えっ? 二人で何のハナシしてたの?」

「お前には関係ない。マスター、先程の話に続きはありませんよ」

「おや。そうなんですか?」

「ね、マスター。さっきの話ってなあに?」

「あ、いや。先生がお話にならないなら、私の口からは言えないなあ」

「えー。そんなー、気になるよー」

「マスター、お会計を」

マスターは肩をすくめた。

「――仕方ありませんね。畏まりました」

「ソクちゃん! なんで俺だけノケモノにすんのさっ」

「ごちそうさまでした、マスター」

「ありがとうございました。お気をつけて」

「マジで帰ろうとしてるし。もー!
マスター、ゴメン! また今度来るから!」

アイヴィーはカウンター席から降りて、ドアに向かう。

「ソクちゃーん! ねえ! オゴってってばー!」


fin
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