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Marginal Prince Short Story
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ストリートバスケ3 続編
「わ、入ったー!」

立って応援していたテオが、
ベンチで座っているアイヴィーを振り向く。

「クラウスの勝ちだよね!? クラウスが勝ったのだよね?!」

「ん? ああ」

「やったあ! クラウスー!」

テオはコート内へ駆け出し、
そのままの勢いでクラウスを抱き締めた。

「おめでとうクラウス! おめでとう!
貴方がこの激戦の勝者なのだよ!
ああ、なんて格好良い男なんだろう、貴方という人は!」

「わ、解ったから、離せっ! 抱き着くなっ」

「おや。身体が勝手に」

パッとクラウスから離れたかと思うと、
今度はシルヴァンの両手を覆うように握り締め、ブンブンと縦に振った。

「それから、シルヴァンも! 素晴らしい試合をありがとう!
聖アルフォンソ学院の中でもトップクラスのスポーツマン相手に、
あれほど感動的な試合ができるとは!
君も相当な運動神経の持ち主なのだね!」

「シルヴァン」

クラウスは、真っ直ぐに相手の目を見て言った。

「俺の勝ちだ。約束は守って貰うぞ。ーーアイヴィー」

突然クラウスに呼ばれたアイヴィーは、
ビクリと肩を跳ねさせながら、返事をする。

「は、ハイッ?」

「お前が責任を持って、こいつを連れ帰ってくれ。
いいか? 帰る場所はお前の家じゃない。学、院、だからな」

「イエッサー」

アイヴィーは肩をすくめて見せながら、

「悪ィなあ、シルヴァン。
生徒代表直々に言われたんじゃあ、俺、逆らえないわ」

「はい。勝負に負けたのは僕ですからね。
今日は大人しく寮に帰りますよ。
でも、僕が負けてしまったせいで、
今夜は一人で寂しい思いをさせてしまって、
すみませんね、アイヴィー」

「サビシクなんかねーよっ」

敗者は清々しい笑顔を見せた。

「ああ、そうだ!」

指を鳴らしたのは、テオだった。

「私、とても良いことを思いついたよ!
ねえ、シルヴァン! 今宵のディナー、
是非、シュヌーシア寮に来てくれないかな!?」

「シュヌーシア? えっと、お二人が居る寮、でしたっけ?」

「そう! 今宵のスペシャルゲストとして、
君をシュヌーシアのディナーにお招きしたいのだよ!」

「お前はまた、何を言い出しているんだ、テオ」とクラウス。

「だって、今日のディナーでは、
二人の勇姿を、皆に語り尽くさなきゃならないだろう?
それには、主役の二人が必要不可欠じゃないか!」

「いや、何故語り尽くす必要が」

「ところでシルヴァン、今宵は別の用事があったかい?」

「いえ、特には。今夜はアイヴィーの家に泊まる予定も、
なくなっちゃいましたし、暇にしてますよ」

「良かった! では決まりだね!
ディナーの時間になったら、私が君の寮まで迎えに行くから、
シルヴァンは、ウーティスで待っていておくれ。
さあ、そうと決まれば、早く寮に帰って、
ドニにゲストが一人増えることを伝えなくては!
ああ、ドニというのはね? うちのシェフのことなんだ。
シュヌーシア寮専属シェフ、ドニ・ドーム。
世界の家庭料理を愛する、とても腕の良いシェフなんだよ。
得意料理だけでなく、何でも作れるプロフェッショナルなのだが、
中でもドニの作るお菓子が、また絶品でねえ。この前も」

クラウスとシルヴァンを褒めたかと思えば、
今度は自分の寮のシェフを褒め称え始めた。
次から次へと話し続けるテオを見て、
シルヴァンは目をぱちくりさせていた。
それに気付いたらしいクラウスが、
まるで目覚まし時計を止めるかのように、テオの頭に手を置いた。

「テオ。お前は、口から生まれて来たのか?」

「え?」

「お前は喋り過ぎだ。早く寮に帰るんじゃなかったのか?」

「ああ、いけない! そうだった! 帰ろう帰ろう!」

「じゃあ、皆さん」

シルヴァンは子供達に声をかける。

「僕達、今日はもう帰りますね。
今日は、お騒がせしちゃって、すみませんでした。
あの、僕、またここに遊びに来ても良いですか?」

「ああ。今度はクラウスに負けないように特訓しなきゃな!」

「テオとクラウスも、また遊びに来てね!」

「私達も良いのかい? ありがとう! では今度来る時は、
うちのシェフ特製の絶品クッキーをお土産に持って来るよ!」

「安請け合いするなよ、テオ。もう行くぞ」

一歩踏み出したクラウスは、
何を思ったか、踵を返し、子供達に向き直った。
彼等は揃ってきょとんとした顔をしている。クラウスが口を開いた。

「今日は君達が先にここで遊んでいたのに、
邪魔をして、すまなかったな。
今更だが、コートを貸してくれてありがとう。
うちのシルヴァンが世話になっていることにも礼を言う。
迷惑でなければ、これからも仲良くしてやってくれ」

子供達は顔を見合って、くすぐったそうに笑う。

「ああ、それから」

クラウスはこう続けた。

「もうすぐ暗くなる。君達も遅くなる前に家に帰るように。解ったな?」

シルヴァンが吹き出して笑った。
目の端の涙を拭きながら、

「あははっ。クラウスって本当、お父さんみたいっ」

「てゆうか、あれは先生みたいだろ、先生」

「厳しくてコワーイ先生な!」

子供達もそう言って笑っていた。

「おい。なんでそんなに笑うんだ」

不服そうな本人に、テオが微笑む。

「皆にとっても、貴方は愛おしいお父さんだということだよ?」

「意味が解らん」

「良いよ、貴方は解らなくても。
貴方の愛おしさは、私が一番解っているから。
さあさあ、帰ろう。私達のおうちに」

テオに肩を押されて、クラウスが歩き出す。
アイヴィーは携帯灰皿にタバコを入れ、ベンチから立ち上がった。
歩きながら、シルヴァンとテオは何度も子供達に手を振っていた。


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