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Marginal Prince Short Story
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ストリートバスケ4 続編
シュヌーシア寮に帰ってきたテオは、すぐにキッチンへ向かった。
ドアを開けると、銀色の広いキッチンテーブルには、
スティック状にカットされた野菜や生の魚。
緑、赤、白など、色とりどりな食材が並んでいる。
あの黄色いのは、卵を焼いたものだろうか。

「おお、これは美しい。まるでお花畑のようだ」

「あれっ? テオ様?」

成人男性にしてはやや高めの声。
部屋の奥から、小柄なシェフがやってきた。
今日の装いは、レモンイエローの腰巻きエプロン。
頭にも同色のバンダナを巻いていた。
彼が両手で持っている皿には、焼肉が載っている。

「あ、もしかして、もうディナーの時間でしたかっ?」

シェフは慌てて掛時計を見た。

「いや、ディナーにはまだ少しあるよ。
今日はね、ドニに折り入ってお願いがあって来たんだ」

「お願い? 僕にですか?」

「うん。実はね、今日のディナーに、
シルヴァンを招待したいのだよ。
直前の時間にすまないけれど、どうだろう、頼めるかな?」

「ああ、そういうことでしたら。はい。大丈夫ですよ。
今夜は丁度、テマキズシなので」


ウーティス寮ダイニングルーム。
ディナータイムより、少し遅れてやってきたのは、アンリだった。
自室で神秘学の本を読んでいて、時間に気が付くのが遅れたのだ。
集中して読みたいから、部屋で読んでいるのに、
途中、何やらサロンや廊下のほうが、やかましくて、気が散った。
こういう時、寮生活は嫌だと思う。

アンリがダイニングルームの席に着くと、隅に控えていたバトラーが、
アンリのワイングラスに恭しく水を注いだ。
「少々お待ち下さいませ」と言って、一度退室した。
シェフにアンリが来たことを伝えに行ったのだろう。

アンリがチラリとダイニングルーム内を見回すと、
自分以外の生徒は皆、席に着いていて食事中。
いや、一人足りない。

入学初日から外泊し、真面目な生徒代表を困らせている新入生、
シルヴァン・クラークの姿がなかった。
アンリは冷笑を浮かべながら、

「何? また脱走してるの、あの新入り」

「いや、今日は違うよ」

向かいの席に座っていたジョシュアが言う。

「シルヴァンは今、シュヌーシア寮に居るんだ」

それは全く予想していなかった回答だったので、
アンリは思わずそのまま言葉を返した。

「シュヌーシアに?」

「うん。今日はシュヌーシアのディナーに招待されたんだって。
さっき、テオがサロンまでシルヴァンを迎えに来てたんだよ」

ああ、それでサロンが騒がしかったのか、とアンリは胸の内で納得する。
しかし何故、あの問題児が他の寮の夕食などに招待されたのだろう。

一瞬、そんな疑問が浮かんだが、
僕には関係ないことか、と思い直し、ワイングラスに口付けた。
無味な冷たい水が喉を潤してくれる。

「テオが言っていたんだけど」

控えめな口調でジョシュアが言う。

「シルヴァンは今日、クラウスとバスケットボールをしたんだって、公園で。
凄く白熱した良い試合で、感動したって言ってたよ。
それで、シュヌーシアに招待したいって」

人の顔を伺ってばかりの優等生が、
アンリの疑問に適確な答えをくれた。


「あー! 今日は本当に楽しい一日だった!」

シュヌーシア寮、クラウスの部屋。
テオは人の部屋で、今日の思い出を噛み締めていた。
クラウスのベッドに座り、シャチのぬいぐるみを抱き締めている。
これは以前、テオからクラウスにプレゼントした物だ。

「ね! クラウス?」

机に向かっていたクラウスは、テオに顔を向ける。

「お前なあ。それ、何回言ったら気が済むんだ?」

「え? 私、そんなに言っていたかい?」

クラウスは、がっくりと肩を落とし、額に手を当てた。

「ああ。バスケの後から、そればかり言っているぞ」

「おや。私の唇ったら、本当に正直者だねえ」

賑やかなディナーが終わり、
そろそろ就寝時間という時に、テオがここにやってきたのだ。
今日のテオは、本当に笑顔が絶えない。
自分が試合で勝ったわけでもないのに可笑しな奴だ、とクラウスは思う。

「シルヴァンをディナーにお招きして本当に良かったなあ!
おかげで、彼も東洋の文化に興味があることも解ったし。
彼とのビデオ鑑賞会が楽しみだよ」

夕食の席で話をしているうちに、
共通の趣味が見つかったテオとシルヴァンは、
ますます意気投合してしまい、
今度ぜひお互いのお勧めビデオの鑑賞会をやろう、
と大いに盛り上がっていた。
今後の身の回りが、余計に騒がしくなりそうだ。

「早く、気に入ってくれると良いね」

唐突にテオがそう言った。

「何の話だ?」

「シルヴァンの話だよ。シルヴァンにもこの学院を、
この島での暮らしを気に入って貰えたら良いね」

クラウスは愕然とした。テオは続ける。

「でも大丈夫。シルヴァンもきっと好きになる。
だって聖アルフォンソ島は、地上の楽園だもの」

「テオ、お前まさか、シルヴァンをバスケや夕食に誘ったのも、
あいつを学院に馴染ませる為だったのか?」

学院を気に入れば、無闇に余所で泊まることも無くなる、
そう考えた上での行動だったのではないか。

「すまん。俺はてっきり、単にお前が楽しみたいからそう提案したのかと」

「いや、もちろん、そうだよ? シルヴァンの為というより、
私の為、というほうが大きかったんじゃないかなあ?」

ふふふ、とテオは柔らかく笑う。
その笑顔を見て、クラウスは自分の友人の凄さを思い知らされる。

自分の楽しみの為にやったこと。
その言葉は謙遜でなく、事実なのかもしれない。
だが、それでも、シルヴァンが学院を好きになることに、
おそらく、テオは一役買ったのだ。

「あ、そうだ! 今度はバスケだけではなく、
他のスポーツ大会も開催してみるかい?
クラウスVSシルヴァンのスポーツ三番勝負ー! なんてどうかなっ?」

重い息を吐きながら、クラウスは呟いた。

「いや、それは遠慮させてくれ」


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