忍者ブログ
Marginal Prince Short Story
Admin  +   Write
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ストリートバスケ5 続編
シュヌーシアでのディナーが終わり、
シルヴァンは自分が住むウーティス寮へと戻ってきた。

自室に入ると、そのままベッドに横になった。
何もない天井を見ながら、自然と笑顔になってしまう。
右手で自分の頬に触れながら、
笑い過ぎたせいでしょうかね、とシルヴァンは思う。

あんなに、いっぱい喋って、いっぱい笑ったのは久し振りだ。
もう話し疲れた程だが、これは心地好い疲労だ。
運動をした後みたいに、胸のところが、あったかい。

コンコンとドアがノックされた。
ベッドから上半身を起こして、「はい」と返事した。

「お休み前のお時間に失礼致します」

ドアを開けたのは初老の紳士。ウーティス寮に仕える執事だ。
この学院には三つの寮があり、それぞれに専属の執事が居るという。

「シルヴァン様にお電話でございます」

「電話? そうですか。解りました」

つい先日まで野良犬同然の暮らしをしていた人間に、
立派な執事が付くようになるなんて、未だに信じられない。


「シルヴァン?」

電話がある通信室へ向かう途中、
寮の廊下で同学年のジョシュアと会った。

「もしかして、今、シュヌーシアから、
戻ってきたのかい? 随分遅かったね」

「ええ、まあ。さっき帰ってきたところです。
すっかり長居してしまいました。話が盛り上がっちゃって」

「そう。シルヴァンが楽しめたんなら良かったよ」

それじゃおやすみ、と爽やかに言って、
ジョシュアは去って行った。
その後ろ姿を見送りながら、シルヴァンは思う。
ロレート公国大公家の一人息子。
正真正銘の王子様と、同じ寮に居るなんて。
人生とは、本当に不思議なものだ。


受話器を取ると、聞こえてきたのは、
子供の頃から知っている声だった。

「シュミット大佐でしたか。こんばんは。
こちらはそろそろ、おやすみの時間ですよ?」

「そのくらいの時間でなくては、
お前は捕まらないだろうと思ってな」

「おや。さすが、僕のこと、よく解っておいでですね。
それで、今日はどんなご用事ですか?」

「そちらの司令官殿から聞いたぞ?
お前が外泊ばかりしているとな」

「ほんの数回ですよ」

「少なくとも、私の在学中には、入学間もない生徒が、
数回も外泊したことはなかったと記憶しているがな」

「そういう時代だったんですね、昔は」

壁に凭れて、前髪を掻き上げる。

「僕のこと、アイヴィーが貴方に告げ口したんですか?」

「私から彼に連絡を取ったんだ。
『うちの不良息子』が迷惑をかけていないか、とね」

親代わりの存在とは言え、
大佐に『息子』と呼ばれるとドキリとする。

「お前に学院での寮生活ができるだろうかと心配してはいたが。
予想以上に『大人しく』してくれているようだな?」

「ええ。今夜もこうして、ちゃあんと学院に居ますからね」

「今夜も、ではなく、今夜は、だろう?」

受話器越しに溜め息が聞こえる。

「――シルヴァン」

ああ、お説教かな、とシルヴァンは思った。
しかし、大佐が次に言った言葉は、全く別のものだった。

「つらいか? そこでの暮らしは」

「え?」

「もし、本当に、我慢ができないくらいなら」

「待って下さい!」

自分でも驚くくらい大きな声を出していた。

「ああ、すみません。ちょっとビックリしちゃって」

大佐は何も言わない。

「あの僕、そこまで、つらいなんて思ってませんから。
そりゃ、最初は慣れませんでしたけど。
段々、ここも悪くないかなって、
思えるようになってきたところなんです。だから、その」

笑い声が聞こえた。

「なら、もう暫くそこに居ると良い。
嫌になったら言ってくれ。
いつでも陸軍学校に転校させてやるからな」

「なっ、大佐っ!?」

「じゃ、元気でな」

電話は切られてしまった。受話器を置く。

「もう。イジワルですね、シュミットおじさんは」


明日の予習、筋トレ、そしてシャワー。
夜の日課を終え、クラウスの一日もやっと終わろうとしていた。

クラウスは自分のベッドの前に立つ。
普段は綺麗にメイキングされている筈のシーツとブランケットだが、
先程までテオがここに居たので、今日はくちゃくちゃだ。

テオの大らかさと、自分の几帳面さに、
胸の内で溜め息を吐きながら、
テオが乱していったブランケットを整えた。

何事もきちんとしていないと気が済まない。
周りからは「カタブツ過ぎ」だとか、
「バカが付く程マジメ」だと揶揄される程だし、
自分でも潔癖さが、少々過剰なのは解っている。
しかし、それは昔からの性分なので、
これから先も簡単には変えられそうにない。

部屋の電気を消し、ベッドに入る。
ブランケットは肩まできっちりかけた。
目が部屋の暗さに慣れて、天井が白く浮かぶ。

今日は疲れた、と思う。原因はもちろん、あの二人。
自分とは違い過ぎて、俺は振り回されてばかりだ。

あいつらはビデオ観賞会とやらの約束をしていたから、
明日もまたシルヴァンがシュヌーシアに来て、
騒がしいことになるかもしれない。

確かに、生徒同士が親睦を深めることは大切だ。
そうしていくことで、あいつの脱走癖も治っていくだろう。
生徒代表としても、それは喜ばしいことだ。
そうなのだが、しかし。あまりにも先が思いやられる。

「今日はもう寝よう……」

クラウスは半ば強制的に目を閉じる。
今日はすぐに眠れそうだ。


fin
PR
カレンダー
05 2026/06 07
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
ブログ内検索
キャラ名、CP名などで作品検索可
アーカイブ
カウンター
バーコード
material by bee  /  web*citron
忍者ブログ [PR]