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Marginal Prince Short Story
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報われない俺達2 続編
何かつまらない夢を見た気がする。
ベッドの中でまどろみながら、
夢の記憶を辿ろうとしたが、徒労に終わった。

「おはようございます、陛下」

いつもと声が違う。
普段、俺を起こしに来る声は、
冷淡なもので、これほど優しくはない。
ベッドの中から目を向けると、
ドアの前には、髪の長い側近が立っていた。

俺はむくりと上体だけ起こす。
ブランケットで覆われている膝だけが暖かい。

「ホワイトか。ラルヴィスはどうした?」

ホワイトが静かに頭を下げる。
礼に合わせて、長い髪がさらりと揺れた。

「申し訳ございません。本日、レイナは、
体調不良の為、お休みを頂きたく存じます」

「体調不良?」

「はい。今朝方、レイナが赤い顔をしている、
とエメリーが気付きまして、
熱を計らせましたところ、38度6分ございました。
後程、王室医師団のメイスン医師に、
診て頂く予定ですが、おそらく風邪ではないかと。
国内でも流行る季節でございますし」

ラルヴィスの身体は丈夫なほうだと、
思っていたが、珍しいこともあるものだ。
はたと思い当たることがあった。

「あの時に、貰ってきたのかもしれないな」

「あの時、と仰いますと?」

「先日、施設の子達に会いに行ってきただろう?
その中に、咳をしている子が居たんだ」

確か、うちの側近と遊んでくれた子達の一人だ。

「左様でございましたか」

元気な少年少女達にラルヴィスが振り回されている間、
俺は保育士達とのティータイムに呼ばれていた。

カップ片手に、優しい女性達に囲まれながら、
子供達の姿をただ愛でていたわけではない。

何か困っていることや、施設に足りない物はないか等、
生の意見を直に聞く為のティータイムだ。

その時、たまたま庭で子供達が遊んでいて、
慣れぬ相手に、弱り切っている側近の姿が、
チラチラと俺の視界に入ってきただけだ。

あっ、とホワイトが声を出す。

「では、陛下もお風邪を召された可能性が!
陛下、お身体の具合は?
どこか苦しいところはございませんか?」

「いや。俺は至って元気だ」

「潜伏期間やもしれません。
念の為、陛下も診察をお受け下さい。
医師団には私からご連絡致しますので」

面倒なことになった。
ホワイトは面倒見が良過ぎていけない。

「俺は別に、たまに風邪を引くぐらいは構わんがな」

つい本音をもらしてしまうと、
「いけません!」と熱く反論された。
俺には風邪を引く自由もないらしい。

「陛下はロレートで唯一の御方。
私共と違い、陛下の代わりが務まる者など居ないのですよ」

俺にだって代わりは居る。俺などより余程立派な後継者が。
だが、それをホワイトの前で口にするのは止めた。
また熱く反論されるのが目に見えているからだ。

事実、ホワイトの言い分も正論で耳が痛い。
王が体調を崩せば、もれなくテレビや新聞に載せられて、
回復するまで刻々と容態が報道されてしまう。
過剰な辱めは国中に、いや、あの小さな島にまで届く。
この身体は本当に、ちょっと風邪を引くこともできないのだ。

「なお、レイナにつきましては、万が一にも、
陛下に病をお移ししないよう、完治するまでの間、
自室にて控えさせて頂きたく存じますが、宜しいでしょうか」

部屋に隔離か。大公家には従者達も住んでいる。
皆が次々と病に倒れれば、困るのは俺だけでは済まない。

「仕方ないな」

「ありがとうございます。陛下のお優しい御心に感謝致します。
それで、あの、レイナがお休みを頂く間のことなのですが」

緊張しているのか、突然、ホワイトの声がしおらしくなる。

「もし宜しければ、私にレイナの代理を務めさせて頂ければと」

でかい図体をしているくせに、
捨てられた小動物のような目をしてくれる。

そんな目を向けられて、YES以外の選択肢はない。


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