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■報われない俺達5 続編
最初の二日、私の熱は下がらなかった。
少し良くなってきたと自覚できたのは三日目で、
四日目もまだ微熱が残っていた。回復の遅い自分が情けない。
自室に閉じ込められてから、今日でもう五日になる。
医師の話では、完治に近い状態ではあるが、
側近という立場上、陛下への感染を防ぐ為、大事を取り、
あと二日はこのまま安静に、とのことだった。
体調が良くなり、頭が動くようになってくると、
今度は気が滅入ってきた。体調が悪化しなくとも、
あと二日はここを出られないからだ。
もう復帰できるまで体調は回復しているというのに。
ベッドに横になってばかりで、筋肉の衰えを感じる。
今回の風邪には、かなり体力を削り取られた。
こんなことでは陛下をお守りできない。
私は陛下の側近であるというのに。
自分が不甲斐無くて、仕方がなかった。
「雑誌読んだかー、レイナ」
朝、エメリーが来た。
この五日間、こいつと医師の顔くらいしか見ていない。
奴は側近としての制服を着ている。私は夜着のままだ。
「雑誌、全然読んでないじゃん。
せっかく俺が面白いヤツ選んでやったのに」
サイドテーブルに置かれたままの雑誌から視線を私に移す。
「シケたツラしてんなあ」
エメリーは私のベッドに腰掛け、足を組む。
「まーた、情けないとかって、
自分への言葉責めでもしてたのか? スキだねえ、お前も」
何故かこいつには、考えを読まれることが多々ある。
それほど私の考えは、顔に出ているのだろうか。
「可笑しな言い方をするな」
「否定はしない、と」
私は黙ることになる。
「お前さ、もっと気楽に考えらんないの?
臨時休暇が貰えてラッキー、とかって」
「私はお前はではない」
「損な性格」
笑われた。ここ暫くエメリーは良く笑う。
弱っている私を見るのが面白いらしい。
しかし、この数日、こいつに世話を焼かれる中で、
奴は意外とマメで気の付く男だと私は知った。
普段は、やる気無さそうにしているくせに。
陛下から「世話係をするように」とのお言葉があったからか、
この五日、奴は私の身の回りの世話をほぼ完璧にこなしていた。
食事を持ってくるのも、下げるのも全てやっている。
私がいつでも水を飲めるよう、ベッドサイドに、
水とコップを置いてくれたのもエメリーだ。
また、「暇潰しグッズ」と称し、
日替わりでエメリーの私物を持ってきた。
今、サイドテーブルにある雑誌もそのひとつだ。
他に、漫画やゲーム、DVDなどを持ってこられたが、
結果的に、奴と私の趣味が余りにも合わず、
それらに手を伸ばすことはできなかったが。
「んで、レイナ。今日は調子どーよ?」
「もう治ってる。今日からでも陛下のお側に立てる」
「ホントかなー?」
「本当だ。なあ、メイスン医師を呼んでくれないか。
復帰を早めてくれるよう頼みたい」
「何、焦ってんだよ、レイナ」
「焦っている訳ではない。
私の身体のことだ。私が一番理解している」
「ふうん。じゃあ、熱は完全に下がったのかよ?」
私の前髪をそっと避けて、素手で額に触れる。
「んー。もう俺と同じくらいかなあ? 解んないや」
「なら、触るな」
すると、突然、喉に痛みが走り、咳が出た。何度も。
大分、良くなったと思ったのに。
「なんだ。まだ治ってないじゃん」
喉の奥で、僅かに鉄の味がする。
咳が続き過ぎて、胸の中まで痛い。
咳が止んだあとも、呼吸が整うまで時間がかかった。
私が落ち着いた頃、エメリーはコップ一杯の水を私に差し出した。
私は身体を起こして、それを受け取った。
ゆっくりと飲む。荒れた喉が洗い流されていくようで、
気持ちまで、すうっとした。
飲み終わると、奴が私に手を差し出す。
その手にコップを返した。
私は再びベッドの中に戻る。
エメリーがコップをテーブルの上に戻す。
コトン、という小さな音が響いた。
「焦んなよ、レイナ」
エメリーはベッドに腰掛けたまま、
笑顔で私を見下ろしている。
「ちょっと良くなったからって無茶したら、
また熱が上がるぜ? そうなれば余計に、
陛下の側に戻るのが遅れる。それは嫌なんだろ?」
悔しい。こいつに正論で諭されるなんて。
「だからさ」
そう言う顔は確かに笑っているのに、
どこか悲しそうで、私は途惑った。
「もう少し、ぶっ倒れてろよ。な?」
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最初の二日、私の熱は下がらなかった。
少し良くなってきたと自覚できたのは三日目で、
四日目もまだ微熱が残っていた。回復の遅い自分が情けない。
自室に閉じ込められてから、今日でもう五日になる。
医師の話では、完治に近い状態ではあるが、
側近という立場上、陛下への感染を防ぐ為、大事を取り、
あと二日はこのまま安静に、とのことだった。
体調が良くなり、頭が動くようになってくると、
今度は気が滅入ってきた。体調が悪化しなくとも、
あと二日はここを出られないからだ。
もう復帰できるまで体調は回復しているというのに。
ベッドに横になってばかりで、筋肉の衰えを感じる。
今回の風邪には、かなり体力を削り取られた。
こんなことでは陛下をお守りできない。
私は陛下の側近であるというのに。
自分が不甲斐無くて、仕方がなかった。
「雑誌読んだかー、レイナ」
朝、エメリーが来た。
この五日間、こいつと医師の顔くらいしか見ていない。
奴は側近としての制服を着ている。私は夜着のままだ。
「雑誌、全然読んでないじゃん。
せっかく俺が面白いヤツ選んでやったのに」
サイドテーブルに置かれたままの雑誌から視線を私に移す。
「シケたツラしてんなあ」
エメリーは私のベッドに腰掛け、足を組む。
「まーた、情けないとかって、
自分への言葉責めでもしてたのか? スキだねえ、お前も」
何故かこいつには、考えを読まれることが多々ある。
それほど私の考えは、顔に出ているのだろうか。
「可笑しな言い方をするな」
「否定はしない、と」
私は黙ることになる。
「お前さ、もっと気楽に考えらんないの?
臨時休暇が貰えてラッキー、とかって」
「私はお前はではない」
「損な性格」
笑われた。ここ暫くエメリーは良く笑う。
弱っている私を見るのが面白いらしい。
しかし、この数日、こいつに世話を焼かれる中で、
奴は意外とマメで気の付く男だと私は知った。
普段は、やる気無さそうにしているくせに。
陛下から「世話係をするように」とのお言葉があったからか、
この五日、奴は私の身の回りの世話をほぼ完璧にこなしていた。
食事を持ってくるのも、下げるのも全てやっている。
私がいつでも水を飲めるよう、ベッドサイドに、
水とコップを置いてくれたのもエメリーだ。
また、「暇潰しグッズ」と称し、
日替わりでエメリーの私物を持ってきた。
今、サイドテーブルにある雑誌もそのひとつだ。
他に、漫画やゲーム、DVDなどを持ってこられたが、
結果的に、奴と私の趣味が余りにも合わず、
それらに手を伸ばすことはできなかったが。
「んで、レイナ。今日は調子どーよ?」
「もう治ってる。今日からでも陛下のお側に立てる」
「ホントかなー?」
「本当だ。なあ、メイスン医師を呼んでくれないか。
復帰を早めてくれるよう頼みたい」
「何、焦ってんだよ、レイナ」
「焦っている訳ではない。
私の身体のことだ。私が一番理解している」
「ふうん。じゃあ、熱は完全に下がったのかよ?」
私の前髪をそっと避けて、素手で額に触れる。
「んー。もう俺と同じくらいかなあ? 解んないや」
「なら、触るな」
すると、突然、喉に痛みが走り、咳が出た。何度も。
大分、良くなったと思ったのに。
「なんだ。まだ治ってないじゃん」
喉の奥で、僅かに鉄の味がする。
咳が続き過ぎて、胸の中まで痛い。
咳が止んだあとも、呼吸が整うまで時間がかかった。
私が落ち着いた頃、エメリーはコップ一杯の水を私に差し出した。
私は身体を起こして、それを受け取った。
ゆっくりと飲む。荒れた喉が洗い流されていくようで、
気持ちまで、すうっとした。
飲み終わると、奴が私に手を差し出す。
その手にコップを返した。
私は再びベッドの中に戻る。
エメリーがコップをテーブルの上に戻す。
コトン、という小さな音が響いた。
「焦んなよ、レイナ」
エメリーはベッドに腰掛けたまま、
笑顔で私を見下ろしている。
「ちょっと良くなったからって無茶したら、
また熱が上がるぜ? そうなれば余計に、
陛下の側に戻るのが遅れる。それは嫌なんだろ?」
悔しい。こいつに正論で諭されるなんて。
「だからさ」
そう言う顔は確かに笑っているのに、
どこか悲しそうで、私は途惑った。
「もう少し、ぶっ倒れてろよ。な?」
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