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Marginal Prince Short Story
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約1か月前 続編
■ユウタの愉快な仲間達
「じゃあ、ユウタの誕生日には、ぱぁーっと肝試し大会でもやるかっ!」
「ハロウィンでやったばっかじゃん。また衣装着るのめんどくさいよ。
 てゆうか、最後の方、ユウタちょっと泣いてたし」
「可愛かったですよね、ユウタ! 僕、また見たいですー♪」
「ではもう一度泣かせる?」
「アンリ。それじゃ、ユウタのお祝いにならないよ」
ウーティス寮サロン。ユウタを除いて、全員が集まっていた。
シュヌーシア寮に住むミハイルの協力の下、来たる12月15日に向けて、
ウーティスでは秘密裏に第一回目の会議が行われていた。
現在ユウタはミハイルの部屋で映画鑑賞中。あと一時間は戻って来ない。
今年の新入生の誕生日をどう祝おうか、わいわい話し合っていた。
意見は活発に交わされるのだが、個性がバラバラでまとまりがつかない。
「はいはーい! 僕、コスプレパーティが良いと思いまーす♪
 日本ではよく行われるイベントなので、ユウタにも喜んで貰える筈です!」
「え。本当かい?」
驚くジョシュアに日本人のハルヤが待ったをかける。
「いや、あの、本当だけど違うっていうか…」
「僕はうさぎ怪獣のきぐるみを着たいので、皆さんは他のでお願いしますね♪」
「お前しか着ねえよ。やっぱさ! パーティと言ったら森でバーベ」
「単細胞だね。それはもう飽きたよ」
「なら、お前は何やりたいんだよ!」
「趣向を変えて、降霊会というのは?」
「アンリ。それじゃ、ユウタのお祝いにならないよ」
ジョシュアは溜め息を漏らす。
制限時間内に何らかの終着点に辿り着くのか心配になってきた。


聖アルフォンソ学院 保健室。
カウンセラーは興味深くミハイルの話を聞いていた。
「ほう。ではそれで悩んでいるんだね?」
「…はい。僕、友達の誕生日プレゼントを考えるなんて、初めてで…」
ユウタを引き止める、という大役を見事に果たした日。
ミハイルはカウンセリングで、今日のことを話した。
そして『最近、悩んでいること』として、『ユウタのプレゼント選び』を挙げた。
「僕、ユウタと会えて、この学院に入って良かったなって思うんです。
 だから、ユウタのお誕生日、お祝いしたいんですけど、
 でも、何を選んで良いのか分からなくって…」
「そうか。なかなか決められなくて困ってしまうんだね?」
「はい。そうなんです…」
「その時、頭の中にはどんなことが浮かんでいるのかな?」
「えっと…ユウタのこと、いっぱい考えて…」
「うん」
「ユウタに喜んで貰えたらいいなあって」
「どんな気持ちになるんだい?」
「あの、あったかくなります、しあわせな気持ちです」
「なるほど」
カウンセラーは左手で眼鏡に触れる。
そしてボールペンでカルテに何かさらさらと記述した。
「それで、ユウタの誕生日はいつなのかな?」
「来月です。12月15日だって、ウーティスの皆が、教えてくれました」
「ではまだ時間はある。ゆっくり考えるといい。
 気付いているかい? 今日のミハイルはとても楽しそうだよ?」

カウンセリングが終わった後。
ミハイルはいつものように泉に向かった。
1本だけの棕櫚の木。日当たりが良く、ぽかぽかと暖かい場所。
此処で涙を乾かしてから、寮に向かう。今日もやっぱり涙が流れた。
博士に「今日はユウタのことを考えながら歌ってごらん」と言われた。
そうすると、いつもとはちょっと違う歌が保健室に響いた。
博士は「とても素晴らしかったよ」と褒めてくれた。
歌い終った時、ミハイルの胸は、ちょっとあたたかくなっていた。
「プレゼント…何がいいのかなあ…好きなものがいいかな…」
泉を見ながら、ミハイルはそっと呟いた。
水面には金髪の少年。自分の姿が、ゆらゆらと揺れている。
「ユウタの好きなものって何だろう?」
大型の鳥が泉に飛んで来た。ナイチンゲールではない。
真っ白な翼を派手にはためかせ、着地する。
黄色の羽冠と黄色のほっぺ。
時々此処で会う。ミハイルの知っている鳥だった。
「あっ、オウムさん。こ、こんにちは…」
呼ばれた鳥は、ぎゅるんと首を半回転させる。
びしっと翼で指差し、甲高い声で叫んだ。
「ゴメンネ! コンニチハ!」
オウムは知能が高く、人の名前と顔を一致させて覚えることができる。
アルファルド寮の生徒は完璧だ。その顔を見れば名前を叫ぶ。
しかし、ミハイルの名前は、誤って『ゴメンネ』と覚えてしまったようで、
会う度にそう呼ばれていた。
ミハイルとしては顔を覚えて貰ったことが嬉しかったので、
名前が間違っていることは、それほど気にならなかった。
オウムはよちよちと寄って来る。
顔見知りのミハイルに対しては警戒心がないらしかった。
小さな黒目と目が合う。
「ゴメンネ、キョウもナミダ?」
「ん。でも大丈夫だよ。今日はね、楽しいこと考えてたから。
 プレゼント、考えてたんだ、ユウタの。お誕生日なんだって」
「タンジョウビ?」
「うん。12月15日にね。博士もゆっくり考えればいいって言ってくれたし。
 僕、ユウタが喜んでくれる顔、見たいなあ」
 あっ、オウムさん、ユウタには内緒にしてね?」
「ユウタにはナイショ?」
「うん。内緒」
「ユウタにはナイショ!」

その夜。
オウムはアルファルド寮のサロンで、いつも通り騒いでいた。
今日覚えた言葉を通りすがりの生徒達に叫ぶのが日課だった。
無口な人種が勢揃いしているこの寮では、
オウムの行動が一種の掲示板の役割を果たしている。
生徒同士が会話をしなくとも、互いの状況が分かる。
何か知りたい時は、黙ってサロンに座っていればいい。
誰がどんな理由で寮を空けているとか、
今日は誰が風邪を引いて寝込んでいるかとか。
アルファルドいちの情報通が、
ぎゃーぎゃー騒いでいるのを聞けば大抵のことは解った。
サロンに黒髪の生徒が現れる。
制服ではないラフな服装。ジムの帰りだった。
寮の生徒を見付けた鳥はびしっと翼で指差し、甲高い声で叫んだ。
「エンジュー、オカエリー! オマエ、ヘンなオウムダナ!」
黒髪の生徒の足が止まる。
切れ長の瞳に睨まれても、オウムは臆することはない。
今日も楽しく、ホットな情報をお送りしていた。
「ユウタにはナイショ! ユウタにはナイショ!」
オウムは今日ミハイルから聞いた単語をオウム返しする。
白い翼を挙げて、元気いっぱい叫んだ。
「ユウタ! オタンジョウビ! 12ガツ15ニチ!」
サロンにもう一人生徒が現れる。
黄金の髪に小麦の肌、オウムの飼い主だ。
その姿を見付けた鳥は、喜び勇んで飛んで行く。
「ジャワハルワール! オカエリー! サミシカッタヨー!」
肩に乗ったオウムを飼い主は優しく撫でる。
一人と一羽は、彼等の部屋へと戻って行った。
サロンにはまだ黒髪の生徒が居た。


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