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Marginal Prince Short Story
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26日前 続編
■ユウタの愉快な仲間達
「へえ。ユウタが誕生日ねえ」
アイヴィーは食後の一服中。
「ん。そうなんだ。12月15日」
ハルヤの前にはグリーンティ。
アイヴィーの家にハルヤとシルヴァンが遊びに来ていた。
この時間、二人は講義がないようで、よく一緒に休憩しに来る。
年取っても俺の半分くらいか、とアイヴィーは思う。
が、この島に6年も居ると「お前達は若くて良いな」という言葉は出てこなかった。
年齢など関係なく、辺境の王子達は重責を負わされている。
それに、自分が子供の時、大人に子供扱いされて腹立だしかった記憶もある。
王子達より幾らか年上のお兄さんにできることは、
彼等と出来得る限り『普通に』接することだ。
「んで、その第一回目の会議で決まったのか?」
「ううん。決まんなかった。まだ、どうしようかなあ、って思ってるとこ。
 今日もね、この後、みんなで会議するんだ。ね?」
「ええ。僕はコスプレパーティーが良いって言ったんですけど。
 コスプレはハロウィンでやったばかりだと却下されてしまいました」
「そいつは残念だったな、シルヴァン」
アイヴィーは苦笑する。素っ頓狂な意見ばかり出て、
前に進まなかった会議の様子がなんとなく想像できた。
「あ。アイヴィーんちでパーティするのも良いかも」
「さすがはハルヤ! 良いアイディアですね!」
「そん時はアイヴィーに料理作って貰いたいな」
「お前さんが食べたいだけじゃないのか? ハルヤ」
「あはは。そうかも。俺、毎日アイヴィーの料理で良いし」
「口説くなって」
「でも、ほんとだよ? 全然、お世辞とかじゃなくって」
「俺も毎日お前さんの和食で良いぜ?」
「え…でも俺、アイヴィーみたいに上手くないよ?」
「上手いだろう。サシミとかできんじゃん」
「あ、まあ、それは」
「それじゃー、もう二人で暮らすかっ」
「ま、待って下さい! どうしてそうなっちゃうんですかっ!?」
シルヴァンはハルヤの腕を取る。
「もう、そろそろ寮に戻りましょう。会議が始まってしまいます」
「え、でもまだちょっと早っ…」
「アイヴィー、車出して下さい、車!」


同じ頃、神秘学の教室では講義が終わったところだった。
他の生徒が皆、居なくなると、アンリは席に座ったまま、教壇を見上げる。
「ねえ? 今日の講義、いつもより準備不足だと思ったのは僕だけかな?」
「手厳しいね、アンリ」
教授は生徒にダメ出しをされていた。
少しでも手を抜くとすぐに見抜かれてしまう。
「いや、確かにアンリの言う通りなんだ。
 色々と間に合わなくてね。来週、補強するよ」
「お詫びに紅茶を淹れて欲しいところだけれどね。この後、会議なんだ」
「会議? 島の外へ行くのかね?」
「いいや。ウーティスの会議。全然、決まらないんだよね」
「おや。何か揉めているのかい?」
「大揉めだよ」嫌そうに横髪を梳く。
「たった1人の寮生の為に、何度も会議するなんて。
 僕はもう4年もウーティスに居るけれど、こんなことは初めてだ。
 とんだトリックスターだね、彼は。これまでの秩序を乱してくれる」
そう悪態を吐く顔には微笑が浮かんでいる。
言うほど嫌ではないようだ。生徒は席を立つ。
「ではね、オーギュ。君の紅茶が飲めなくて残念だよ」
ドアの向こうに消える生徒の背中を見ながら、
言動の一致しない子だな、と教授は思った。


同じ頃、生徒代表室では、主が受話器を耳に当てていた。
講義がないこの時間は、ゆっくり話すことができた。
幸福な時間は無情にも早く過ぎ行く。
生徒代表は時計を見上げた。もう今日の講義が全て終わる。
皆が寮に戻ってくる時間だ。
「ごめん。もっと話していたいけど、もうすぐ会議だから」
聞こえてくる相手の声。心地好い。
「あっ、違うんだ。生徒代表としてではなく、ウーティスの一員として、ね」
生徒代表室から森を眺める。自分の部屋とは葉の青さが違って見えた。
「実は俺達、ユウタの誕生日のお祝いがしたくて、
 どんなことをしたらユウタが喜んでくれるかなっていう会議を重ねてるんだ。
 でも、意見が多過ぎて、なかなか決まらないんだけどね」
受話器の向こうから「うちの弟が皆さんに迷惑を掛けて」と恐縮した声がする。
露ほどもそう思っていない生徒代表は自分の想いを説明した。
「迷惑だなんて思っているわけないよ。俺達はお礼が言いたいくらいなんだ。
 ユウタの為に皆で集まって、話している時間、とても楽しいんだ。
 なんだか、わくわくしてしまって。きっと、皆もそう思ってるんじゃないかな」
今まで、自分の感情を人に伝える、ということは余りしてこなかった。
相手の顔が見えない、電話、という手段を用いているからだろうか。
ユウタに会ってから、色々なことが変わっていく。自分も、寮の皆も。
「最近改めて感じるんだ。ユウタがウーティス寮に入ってくれて良かったって」


「お前ってさあ、姉ちゃんに似てるよなー」
同じ頃、ウーティス寮サロン。
アルフレッドはユウタの両頬を手で押し潰す。
力の加減はしてくれているのか、痛くはないが。
頬に押されて、唇がクチバシのように突き出される。
とても喋り難い状況なので、短い言葉しか選べない。
「そお?」
「だって顔も似てるし、性格おんなじじゃん?」
弟としては姉と同じというのは心外だ。
自分はあんなにおっちょこちょいじゃないし、お節介でもない。
そんな意見が顔に書かれたのを見て、アルフレッドは笑った。
「おんなじだって」
人差し指でつんと突かれる。続いて片頬を伸ばされる。
アルフレッドはユウタのほっぺはよく伸びるのが面白いようで、
時々こうして、びよーんと伸ばされたり、潰されたりする。
「姉ちゃんのほっぺもお前みたいに伸びんのかなー」
「し、知らないよっ!」
「じゃあ今度会った時、やってみるかな」
「だっ、ダメだよっ!」
「何慌ててんだよ。ほっぺ伸ばすくらいイイだろ、別に」
「あ、俺、そろそろ行かないと」
「行くって何処に?」
「ミハイルんとこ」
「またか。仲良いんだな、お前達」
「うん。ミハイルがね、一緒にドラマ見ようって。レッドのだよ?」
「へえ。ミハイルはすっかり俺のファンだなあ」
ミハイルにユウタを誘うよう頼んだのはアルフレッドだった。
ハリウッドスターは自然な演技を続ける。
「ファンは大切にしないとな。ユウタ、俺のファンには優しくしてくれよ?」
途端にユウタは頬を膨らませた。
「ミハイルは、俺の友達だよ。それに」
「なんだよ?」
「何でもない。じゃあ、俺、シュヌーシア寮に行くから」


寮へ出たユウタは、ミハイルが待つシュヌーシア寮へ向かう。
保健室に程近いシュヌーシアまでは少し遠い。
頭の中ではアルフレッドに言われた言葉が勝手に甦ってくる。
ポケットに手を入れて、ぽつんと呟いた。
「レッドのばか」
口に出したことで、余計に憤りが増幅される。
最近のアルフレッドは、ミハイル、ミハイル、って言うことが多い。
「俺だって、レッドのファンなのに。ミハイルよりずっとずっと前から、
 アルフレッド・ヴィスコンティが出てる作品、好きだったのに」
ポケットの中で手が固く結ばれる。
上空を白い鳥が通った。ユウタの嫌いなオウムだった。
何か叫びながら飛んでいる。
「ユウタにはナイショ! ユウタにはナイショ!」
オウムは行ってしまった。ユウタは暫く空を呆然と見つめていた。
今、自分の名前だったように聞こえたが。
「き、聞き間違い、かな?」
ナイショという部分も気にかかる。何がナイショなんだろうと思い、
ふと、最近のウーティス寮での出来事が思い当たる。
なんとなく、皆の様子が可笑しいのだ。
ユウタがサロンに顔を出すと、皆が途端に静かになったりする。
この前、ハルヤの部屋に行った時、レッドとシルヴァンが居て。
楽しそうにしてたから、「何の話をしてたの?」って聞いたら、
「ライブの打ち合わせですよ」って言われたんだけど。
楽器も楽譜もなかったし、なんか三人とも変なかんじだったし。
ジョシュアの部屋に本を返しに行った時は、
部屋の中から「勝手だね」って声が聞こえて。
ノックしたら、ジョシュアが開けてくれたんだけど、中にはアンリが居た。
ユウタの顔を見ると、アンリはすぐに出て行ってしまったし。
ジョシュアに「何かあったの?」って聞いても、
「何でもないんだよ」ってごまかされてしまった。
今思い返してみると、皆どこか不自然だった気がする。
なんか変だ。本当にナイショにされているのかもしれない。
ユウタの足が止まる。
「俺、もしかして、仲間外れにされてんのかな…」


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