忍者ブログ
Marginal Prince Short Story
Admin  +   Write
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

テオシナリオ 続編
「解ったよ、姉貴。はい、ハルヤ。姉貴をよろしく」
ユウタから手渡された携帯電話を受け取る。
「ど、ども。ありがと…」
携帯を手にすると、その場に居た堪れなくなった。
周りの視線を気にしつつ、携帯画面を伺う。
「えっと…俺の部屋でいいかな?」

ハルヤはドアを開ける。まるで王様の部屋みたいだった。見たことはないけど。
よく解らない絵画とか壷もあるが、怖くてさわれないかんじだ。
「なんかスゴイよねえ、うちの寮の部屋より広いし。
お客さんを泊めるだけの部屋、他にもいっぱいあるらしいよ?
やっぱテオって、お金持ちのお坊ちゃんなんだね」
この部屋には、座椅子や座布団の類は当然ない。
ハルヤはベッドに座ることにした。
「君までギリシャ旅行に巻き込んじゃって、ごめんね」
無意識に正座になっていた。傍には小さめのボストンバック。
バッグの上には透明な手提げ袋。
ドーナツ型のパンのようなものが5、6個入っていた。
「あ、これ?」
ユウタの姉の視線に気付く。ハルヤは携帯をベッドに置いて、パンを1個取り出して見せた。
輪っかのパンには金色のゴマが綺麗にまぶしてあった。
「クルーリって言うんだって。なんか面白い名前だよね。
ドーナツみたいで割と美味しかったから、夜食用に買ってきちゃった。
広い公園みたいなとこで売ってたんだ、パラソルの下で。
他の…多分、ギリシャの人だと思うけど、みんな普通に買ってたよ。
メジャーな食べ物なんだろうね、きっと」
クルーリを袋に入れて、バッグの上に戻す。

「あ、あのさ」
正座した膝の上で携帯を持つ。
「テオって、元々ああいう大袈裟な話し方する人なんだよ。
今日、ユウタに会った時も『東洋の黒い真珠が二人も!』って騒いでたし。
何が良いんだろうね、黒い瞳の。俺達から見れば皆の方が綺麗なのに」
両手で持っている携帯画面を眺める。
同じ瞳を持つ人。テオが真珠と讃える黒い瞳。
自分には大袈裟な愛称だけど。
「君は真珠だよね。##NAME1##、綺麗だもん」
沈黙が二人の間を通る。
言われた人と言った人まで少し頬を染めた。
「…や、何テオみたいなこと言ってんだろ…ごめんね。
でもっ、本当に、そう思っただけなんだけど、えと…
あ、そう言えばさ、レッドが言ってたことなんだけど」
先程の光景を思い出す。
お姉さんの争奪戦になった原因だ。
「俺が代わりに言わないといけないよね。面白い話とかじゃなくて悪いんだけど。
あの…テオね、今年中に結婚するんだ。
本人から聞いたわけじゃないんだけど、ギリシャのニュースで見たんだ。
めちゃくちゃお金使った結婚式になるみたいでさ。
そんなわけで、レッドは君に、テオのこと言おうとしてたんだよ。
奥さんが決まってる人のこと、好きになっちゃう場合もあるけどさ。
やっぱり、あんまり良くないよね。
俺がまだ17歳だからかな。そういうの、よくわかんないんだ」

ハルヤは幼い頃の記憶が甦る。
祖父の家で、腹違い兄と日舞の稽古をしていた頃のこと。
稽古の間は大好きな兄と一緒に居られて、楽しかった。
唯一、嫌だったことは、兄の母と顔を合わせること。
「俺ね、兄様の母様に、嫌われてたんだ。
意地悪とかは全然されてないよ? 俺にも優しい人なんだけど、でも。
俺のこと『春也さん』ってずっと呼んでたし、
俺の母様とも目を合わさないかんじとか。
表面上は、母様達、普通にしてるんだけど、
なんか…なんかさ、俺、その時まだ子供だったけど、
それでも、二人とも苦しんでるのが解ってさ、すごく、嫌だった。
俺の母様は籍を入れないまま、父様ともなかなか会えないし。
そういう母様見てると…後悔、とかしてないのかなって、俺、思ってて。
奥さんが居るのに…父様も母様も、どうして、好きになっちゃったのかな」
再び降りた沈黙に、ハルヤは口を押さえた。
言うつもりのなかったことを、話している。
「ご、ごめん。俺、また…。こんなこと、誰にも話したことないのに」
母様や兄様にも言えなくて、今までは奥底に沈んでいた。
だけど、お姉さんの前では、ふわふわと浮かんできて。
自分でも気付かなかった自分に出逢う。
「あの、えっと。俺のこととかじゃなくて。
テオはもう結婚する人、決まっているから、その…」
クールとか、飄々としているとか、そういう自分ではない。
緊張して、何話していいかわかんなくて、変なこと言っちゃって。
それでも君は受け止めてくれるんじゃないかって、心の何処かで思ってる。
君と話すのは、照れることもいっぱいあるけど、でも、すごく、好きだから。
「テオのことは、好きにならないで。君には悲しい想い、させたく、ないよ」
また沈黙。
彼女の顔を確かめずにますます俯いた。
「せっかく俺のこと選んでくれたのに、うっとうしい話聞かせちゃってごめん。
今度は楽しい話しよ? また、電話してくれる?」
全然上手く喋れなくて、変に思われてないかな、とか、
もし君に「もう電話しない」って言われたら、って不安になる。
君の「はい。また電話しますね」という返事を聞いて、いつも、ほっとする。
「よかった。今日はほんと、ごめん。そんじゃね」
電話を切る。携帯は待受画面に戻った。
頬に触れてみる。やはり熱い。
「##NAME1##…」
その先が言えないまま、今日もキュッと携帯を握った。
PR
カレンダー
06 2026/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
キャラ名、CP名などで作品検索可
アーカイブ
カウンター
バーコード
material by bee  /  web*citron
忍者ブログ [PR]