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■一か月後:メール 続編
「博士? あ、そっか。博士と話しすれば、
スッキリするかもね。よし。じゃ保健室まで行こっか」
弟はウーティス寮から離れた建物まで、姉を連れて行った。
カウンセラーに携帯を預けた弟は、
後で携帯取りに来ますと言い残し、保健室から退室した。
二人きりになると、早速、博士は姉に挨拶をした。
「こんにちは、##NAME1##。久しいね」
背景はいつものカウンセリングルーム。
インリテリアは落ち着いた色合いで揃えられている。
白衣の先生は眼鏡を掛け直しながら言った。
「丁度、君のことを考えていたところだよ。
##NAME1##と話がしたいと思っていたのでね。
すまないが、カルテの準備をするから、少し此処で待っていてくれるかい?」
カウンセリングルームに携帯を置き去りにして、医師は部屋を出て行く。
姉の前に映し出されているのは壁に飾られた、あたたかみのある絵画。
ギリシャとは違う、見慣れた光景に少し気が楽になるようだった。
しかし、カウンセラーが戻ってくるまでの間は、やはり少々落ち着かない。
この博士に待たされることは今に始まったことではないが、
姿が見えない時間が続くと、もう戻ってこないのではと思う時もあった。
やがて、先生は片手にカルテと抱え、すまない遅くなったね、と言いながら、
もう片方の手は白衣のポケットに入れた姿で現れた。
ぱさとカルテを机の上に置く。
ゆっくりと椅子に座ると、やっと博士と目が合った。
眼鏡の奥の瞳が、面白そうに笑う。
「君はまた、そんな顔をして…」
低音の含み笑い。
待たされた後にそう聞かされると、何故か褒められたように感じてしまう。
まるで『良い子で待っていられたね』と言われた感覚に陥る。
「さて。では私から幾つか質問をさせて貰うよ」
博士はカルテを盗み見てから話した。
「ウーティスのギリシャ旅行に、君も付いて行ったそうだね?
いや、今の言い方では少し語弊があるかな。
君は携帯電話を通して、テオ・メネシスと話したと聞いているよ」
ユウタが喋ったのだろうかと思いつつ、ええ、と答える。
「想像に難くないが、君はテオに色々と甘言を囁かれたんじゃないかな?
だが、あれは生まれながらの性質で、彼はもう結婚する身だ。解っているね?」
ユウタの姉は、はい、という声が僅かに小さくなる。
灰色の瞳は心の奥底まで探るようにこちらを見つめている。
「##NAME1##、君が気に病むことではないよ。
テオが決めた道だ。彼の思うように歩ませなさい。
もしその道が間違いだと思えば、引き返すことも可能なのだから」
博士は白衣のポケットに手を入れる。
「いや、すまない。そうでは、なくて」
どうも歯切れが悪い。先程から視線も泳いでいる。
このカウンセラーにしては珍しいことだ。
「テオが結婚するという話を聞いて、私も、
その、そろそろ身を固めようと思ったんだ」
白衣のポケットから出した手には小さな四角い箱。
長い指が静かに箱を開ける。
純白に輝く指輪が入っていた。
博士は揺らぐ視線をやっと正面に向けた。
「私のパートナーは、君以外に考えられない。
##NAME1##、ずっと私の傍に居て貰えないだろうか?」
END(Sokurov ending)
「博士? あ、そっか。博士と話しすれば、
スッキリするかもね。よし。じゃ保健室まで行こっか」
弟はウーティス寮から離れた建物まで、姉を連れて行った。
カウンセラーに携帯を預けた弟は、
後で携帯取りに来ますと言い残し、保健室から退室した。
二人きりになると、早速、博士は姉に挨拶をした。
「こんにちは、##NAME1##。久しいね」
背景はいつものカウンセリングルーム。
インリテリアは落ち着いた色合いで揃えられている。
白衣の先生は眼鏡を掛け直しながら言った。
「丁度、君のことを考えていたところだよ。
##NAME1##と話がしたいと思っていたのでね。
すまないが、カルテの準備をするから、少し此処で待っていてくれるかい?」
カウンセリングルームに携帯を置き去りにして、医師は部屋を出て行く。
姉の前に映し出されているのは壁に飾られた、あたたかみのある絵画。
ギリシャとは違う、見慣れた光景に少し気が楽になるようだった。
しかし、カウンセラーが戻ってくるまでの間は、やはり少々落ち着かない。
この博士に待たされることは今に始まったことではないが、
姿が見えない時間が続くと、もう戻ってこないのではと思う時もあった。
やがて、先生は片手にカルテと抱え、すまない遅くなったね、と言いながら、
もう片方の手は白衣のポケットに入れた姿で現れた。
ぱさとカルテを机の上に置く。
ゆっくりと椅子に座ると、やっと博士と目が合った。
眼鏡の奥の瞳が、面白そうに笑う。
「君はまた、そんな顔をして…」
低音の含み笑い。
待たされた後にそう聞かされると、何故か褒められたように感じてしまう。
まるで『良い子で待っていられたね』と言われた感覚に陥る。
「さて。では私から幾つか質問をさせて貰うよ」
博士はカルテを盗み見てから話した。
「ウーティスのギリシャ旅行に、君も付いて行ったそうだね?
いや、今の言い方では少し語弊があるかな。
君は携帯電話を通して、テオ・メネシスと話したと聞いているよ」
ユウタが喋ったのだろうかと思いつつ、ええ、と答える。
「想像に難くないが、君はテオに色々と甘言を囁かれたんじゃないかな?
だが、あれは生まれながらの性質で、彼はもう結婚する身だ。解っているね?」
ユウタの姉は、はい、という声が僅かに小さくなる。
灰色の瞳は心の奥底まで探るようにこちらを見つめている。
「##NAME1##、君が気に病むことではないよ。
テオが決めた道だ。彼の思うように歩ませなさい。
もしその道が間違いだと思えば、引き返すことも可能なのだから」
博士は白衣のポケットに手を入れる。
「いや、すまない。そうでは、なくて」
どうも歯切れが悪い。先程から視線も泳いでいる。
このカウンセラーにしては珍しいことだ。
「テオが結婚するという話を聞いて、私も、
その、そろそろ身を固めようと思ったんだ」
白衣のポケットから出した手には小さな四角い箱。
長い指が静かに箱を開ける。
純白に輝く指輪が入っていた。
博士は揺らぐ視線をやっと正面に向けた。
「私のパートナーは、君以外に考えられない。
##NAME1##、ずっと私の傍に居て貰えないだろうか?」
END(Sokurov ending)
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