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■ウーティス寮
■教えてくれない 続編
「四人か。悪くはないね、人数的には」
ある日のウーティス寮サロン。
ドアを開けたアンリは、開口一番そう言った。
談笑していたデッドプリンスとユウタが全員振り向く。
「生徒代表殿は?」
アンリの質問に、ユウタが答える。
「さっき生徒代表室に行くって、行っちゃったよ?」
「そう。まあ、四人でも五人でも変わらないかな」
「どうしたの、アンリ?」
ドアのところから、ゆっくりとテーブルの方へ歩いてくる。
四人の傍へ来て、小首を傾げた。
「ねえ? 僕と賭けをしない?」
ギャンブル好きのアルフレッドがいち早く反応する。
「お前から誘ってくるなんて、珍しいじゃん、アンリ。
それ、お前が勝つ仕組みになってんじゃないだろーな?」
アンリは挑発的な微笑を浮かべる。
「君にしては弱気な発言だね、レッド。まさか、やらないの?」
レッドが立ち上がる。
「やってやろーじゃねえかー!」
アンリはクスリと笑って、他のメンバーにも声を掛けた。
「君達も、僕と一緒に遊ぼう?」
その微笑みは、お誘いというよりは拒否権を許さない圧力がある。
ハルヤは少し困り顔になったが、ユウタとシルヴァンは楽しそうだ。
「なんか面白そうだね!」
「アンリアンリ、今日は僕も入れてくれるんですか?」
「うん。君の身体能力には期待しているからね?」
「キャッ。アンリってば僕のカラダで何をするおつもりですかっ♪」
提案者は腕を組んだ。
「探偵ごっこ」
寮生達は打ち合わせもしていないのに、綺麗に揃って復唱していた。
提案者はルール説明を始める。
「いい? 君達は全員、探偵役。目的は犯人役のアジトを突き止めること。
捜査範囲は島全域になるからあらゆる交通手段を使って良い。
目的達成の為なら、どんな手段を用いても構わない。
但し、犯人役に気付かれては駄目。
アジトを見付けられたら、ご褒美をあげても良いよ?」
「つまりー、お前と鬼ごっこすんのか?
そんなのカンタンじゃん。すぐに捕まえてやるぜ?」
レッドの言葉に、アンリは首を横に振った。
「犯人役は、僕ではないよ」
レッド、ユウタ、シルヴァン、ハルヤが寮を出発する。
サロンにはアンリ一人が残る。
提案者はソファに肘を掛け、足を組んだ。
「バトラー、僕に紅茶を。ルフナのセイロンが良いな」
執事は胸に手を置いて一礼する。
「畏まりました」
聖アルフォンソ島最大の街フィンシャル。
島の人口三万人のうち、二万人がこの街に暮らしている。
レッドとユウタ組は犯人の後を付けていた。
建物の影に隠れる様子は探偵ドラマさながらだ。
ハリウッドスターとその大ファンが囁き合う。
「遅れるなよ、ワトスン君」
「はーい、レッド探偵!」
二人とも名探偵と助手の役になりきっていた。
視線の先には一人の紳士。
紺のコート。手には黒い革の鞄を持っている。
アンリが言った犯人役は、神秘学の先生だった。
彼はこの島の何処かに隠れ家を持っているらしい。
今日は出掛けるそうだから、後を付けて、
彼の隠れ家を探し出して、とのことだった。
「てか、何処まで行くんだ、あの先生」
「ほんとだね。まだ、どのお店にも入ってないし」
「もしかして俺達が追い駆けてんのバレてんのか?」
「あっ、そうかも。スルドイね、さすが名探偵!」
「まあな! あ、いや、バレてちゃマズイだろ」
「そっか。あっ、レッド探偵! 見て!」
紳士が店の中に入っていく。レッドは首を捻った。
「あそこは確か…ドラックストア? よし、俺達も潜入するぞ、ワトスン!」
ウーティス寮サロン。
ジョシュアが生徒代表室から戻っていた。
アンリは紅茶のカップに口付けている。
テーブルには置いていかせたユウタの携帯電話。
探偵達には公衆電話からこの携帯へ連絡を入れるように言っていた。
ジョシュアは執事からコーヒーを受け取る。
「ありがとう、バトラー」
執事は「いえ」と礼をして、サロンから下がった。
コーヒーを一口飲んでから話の続きをした。
「じゃ、みんなは、先生の隠れ家を探しに行ったんだね?」
「そう。君も入れてあげるよ。電話番ね?」
「それは良いけど、アンリはどうしてみんなと行かなかったんだい?」
「僕、彼等と違って体力ないから」
シルヴァンとハルヤ組は、街まで乗せてくれたタクシー運転手に手を振る。
「ありがと、アイヴィー」
「また近いうちにおうちに遊びに行きますねー!」
煙草を銜えた運転手が返事の代わりにクラクションを鳴らし、去っていく。
「さて。じゃ、行きましょうか、ハルヤ」
「だね。ちゃんとやらないとアンリに怒られそうだし。ああ、めんどくさっ」
「では先ず、そこのお店でクレープを買っていきましょう♪」
「えー。いきなり?」
「食べながらだって、探偵ごっこはできますよ。ハルヤ、食べたくないんですか?」
「…食べたい」
「じゃ、行きましょ行きましょ♪」
サロンのテーブルで携帯が光る。探偵達から連絡が来たようだ。
アンリは紅茶のカップを持つ。ジョシュアが電話に出た。
「もしもし。レッド? うん。俺、電話番なんだ。
調子はどう? うん、うん。そっか。ちょっと待って」
ジョシュアはアンリに言う。
「みんな、先生のこと見失ってしまったって。どうする、アンリ?」
「では、罰として、天使の顎でも買ってくるように言って?」
「解った」
ジョシュアは微笑んで、携帯の向こう側に伝えた。
「みんな、お疲れ様。アンリがお礼にケーキをご馳走してくれるって。
好きなのをみんなで選んできてくれるかな? あ、アンリには天使の顎をね?
うん、頼むよ。じゃあ、待ってるね」
電話を終えた人を、アンリは睨み付ける。
「ジョシュア」
「俺は、アンリに言われた通り、伝えたつもりだよ?」
「君に電話番を頼んだのは間違いだったよ。僕が出れば良かった」
ジョシュアは可笑しそうに笑う。
「先生の隠れ家、見付けられなくて残念だったね、アンリ」
「別に。最初からあまり期待していなかったから」
そういう割には頬が少し膨れている。
「そもそもキャスティングミスだったね、彼等に探偵なんて」
「みんなのこと、頼りにしてたんだろう?」
アンリは、むすっと言った。
「最近、君とは英語が通じない」
fin
■教えてくれない 続編
「四人か。悪くはないね、人数的には」
ある日のウーティス寮サロン。
ドアを開けたアンリは、開口一番そう言った。
談笑していたデッドプリンスとユウタが全員振り向く。
「生徒代表殿は?」
アンリの質問に、ユウタが答える。
「さっき生徒代表室に行くって、行っちゃったよ?」
「そう。まあ、四人でも五人でも変わらないかな」
「どうしたの、アンリ?」
ドアのところから、ゆっくりとテーブルの方へ歩いてくる。
四人の傍へ来て、小首を傾げた。
「ねえ? 僕と賭けをしない?」
ギャンブル好きのアルフレッドがいち早く反応する。
「お前から誘ってくるなんて、珍しいじゃん、アンリ。
それ、お前が勝つ仕組みになってんじゃないだろーな?」
アンリは挑発的な微笑を浮かべる。
「君にしては弱気な発言だね、レッド。まさか、やらないの?」
レッドが立ち上がる。
「やってやろーじゃねえかー!」
アンリはクスリと笑って、他のメンバーにも声を掛けた。
「君達も、僕と一緒に遊ぼう?」
その微笑みは、お誘いというよりは拒否権を許さない圧力がある。
ハルヤは少し困り顔になったが、ユウタとシルヴァンは楽しそうだ。
「なんか面白そうだね!」
「アンリアンリ、今日は僕も入れてくれるんですか?」
「うん。君の身体能力には期待しているからね?」
「キャッ。アンリってば僕のカラダで何をするおつもりですかっ♪」
提案者は腕を組んだ。
「探偵ごっこ」
寮生達は打ち合わせもしていないのに、綺麗に揃って復唱していた。
提案者はルール説明を始める。
「いい? 君達は全員、探偵役。目的は犯人役のアジトを突き止めること。
捜査範囲は島全域になるからあらゆる交通手段を使って良い。
目的達成の為なら、どんな手段を用いても構わない。
但し、犯人役に気付かれては駄目。
アジトを見付けられたら、ご褒美をあげても良いよ?」
「つまりー、お前と鬼ごっこすんのか?
そんなのカンタンじゃん。すぐに捕まえてやるぜ?」
レッドの言葉に、アンリは首を横に振った。
「犯人役は、僕ではないよ」
レッド、ユウタ、シルヴァン、ハルヤが寮を出発する。
サロンにはアンリ一人が残る。
提案者はソファに肘を掛け、足を組んだ。
「バトラー、僕に紅茶を。ルフナのセイロンが良いな」
執事は胸に手を置いて一礼する。
「畏まりました」
聖アルフォンソ島最大の街フィンシャル。
島の人口三万人のうち、二万人がこの街に暮らしている。
レッドとユウタ組は犯人の後を付けていた。
建物の影に隠れる様子は探偵ドラマさながらだ。
ハリウッドスターとその大ファンが囁き合う。
「遅れるなよ、ワトスン君」
「はーい、レッド探偵!」
二人とも名探偵と助手の役になりきっていた。
視線の先には一人の紳士。
紺のコート。手には黒い革の鞄を持っている。
アンリが言った犯人役は、神秘学の先生だった。
彼はこの島の何処かに隠れ家を持っているらしい。
今日は出掛けるそうだから、後を付けて、
彼の隠れ家を探し出して、とのことだった。
「てか、何処まで行くんだ、あの先生」
「ほんとだね。まだ、どのお店にも入ってないし」
「もしかして俺達が追い駆けてんのバレてんのか?」
「あっ、そうかも。スルドイね、さすが名探偵!」
「まあな! あ、いや、バレてちゃマズイだろ」
「そっか。あっ、レッド探偵! 見て!」
紳士が店の中に入っていく。レッドは首を捻った。
「あそこは確か…ドラックストア? よし、俺達も潜入するぞ、ワトスン!」
ウーティス寮サロン。
ジョシュアが生徒代表室から戻っていた。
アンリは紅茶のカップに口付けている。
テーブルには置いていかせたユウタの携帯電話。
探偵達には公衆電話からこの携帯へ連絡を入れるように言っていた。
ジョシュアは執事からコーヒーを受け取る。
「ありがとう、バトラー」
執事は「いえ」と礼をして、サロンから下がった。
コーヒーを一口飲んでから話の続きをした。
「じゃ、みんなは、先生の隠れ家を探しに行ったんだね?」
「そう。君も入れてあげるよ。電話番ね?」
「それは良いけど、アンリはどうしてみんなと行かなかったんだい?」
「僕、彼等と違って体力ないから」
シルヴァンとハルヤ組は、街まで乗せてくれたタクシー運転手に手を振る。
「ありがと、アイヴィー」
「また近いうちにおうちに遊びに行きますねー!」
煙草を銜えた運転手が返事の代わりにクラクションを鳴らし、去っていく。
「さて。じゃ、行きましょうか、ハルヤ」
「だね。ちゃんとやらないとアンリに怒られそうだし。ああ、めんどくさっ」
「では先ず、そこのお店でクレープを買っていきましょう♪」
「えー。いきなり?」
「食べながらだって、探偵ごっこはできますよ。ハルヤ、食べたくないんですか?」
「…食べたい」
「じゃ、行きましょ行きましょ♪」
サロンのテーブルで携帯が光る。探偵達から連絡が来たようだ。
アンリは紅茶のカップを持つ。ジョシュアが電話に出た。
「もしもし。レッド? うん。俺、電話番なんだ。
調子はどう? うん、うん。そっか。ちょっと待って」
ジョシュアはアンリに言う。
「みんな、先生のこと見失ってしまったって。どうする、アンリ?」
「では、罰として、天使の顎でも買ってくるように言って?」
「解った」
ジョシュアは微笑んで、携帯の向こう側に伝えた。
「みんな、お疲れ様。アンリがお礼にケーキをご馳走してくれるって。
好きなのをみんなで選んできてくれるかな? あ、アンリには天使の顎をね?
うん、頼むよ。じゃあ、待ってるね」
電話を終えた人を、アンリは睨み付ける。
「ジョシュア」
「俺は、アンリに言われた通り、伝えたつもりだよ?」
「君に電話番を頼んだのは間違いだったよ。僕が出れば良かった」
ジョシュアは可笑しそうに笑う。
「先生の隠れ家、見付けられなくて残念だったね、アンリ」
「別に。最初からあまり期待していなかったから」
そういう割には頬が少し膨れている。
「そもそもキャスティングミスだったね、彼等に探偵なんて」
「みんなのこと、頼りにしてたんだろう?」
アンリは、むすっと言った。
「最近、君とは英語が通じない」
fin
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