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■春臣×春也
■シリアス。幼少期。弟の背中の続編。
--------------------------
丑三つ時。
春臣は自室で床に就いていた。
和歌山の夏の夜は、暑苦しくて。
夢と現の行き来を繰り返していた。
今日は夏休みで、春也がこの家に泊まりに来ていた。
離れの部屋に居る筈だ。
春也はちゃんと眠れているだろうか。
何か音を聞いた気がして、春臣は薄く目を開ける。
ひたひたと近付いて来る足音。
白く小さな手が、ふすまに置かれていた。
「にいさま…」
寝巻き姿の春也。
普段は、とっくに寝ている筈の時間だ。
手には枕を持って、瞳には涙を溜めていた。
「春也、どうした?」
きゅっと枕を握る。
「あの、ね。…いっしょに、ねてもいい?」
「怖い夢でも見たのか」
こくんと頷く。
「…たくさん、見た」
理由は容易に思い付く。
今日は、春也と一緒に、幽霊の映画を見に行った。
見たいと言ったのは、春也だ。
怖がるくせに、この手のものは割りと好きらしい。
「春也、幽霊の夢、見たんだろ?」
「ん…」
「やっぱり、映画、見なきゃ良かっただろ?」
「でも、見たかったんだもん…」
「仕方無いな、春也は。ほら、来いよ」
敷布団をとんと叩くと、
弟は安堵の表情を見せて、兄のすぐ隣に枕を置いた。
枕と枕の間は殆ど無い。
弟は、ぴたと身体を寄せてくる。
「そんなに近付いて、暑くないのか?」
「…だめっ?」
涙目で訴えられて、兄は否と言えなかった。
「お前が良いなら、俺は良いよ」
只でさえ熱帯夜なのだが、今夜はもう少し暑くなりそうだ。
早速、首元に、じとりと汗が伝う。
「にいさまっ…」
「ん?」
「こわいゆめ、ゆうれいだけじゃ、ないの…」
「なに?」
「…いなくなっちゃう、ゆめ」
「居なくなる?」
「にいさまが、いなくなっちゃうゆめだった! どこか遠くに行っちゃって…
『行かないで』って言っても、にいさま、まってくれなくてっ…」
「馬鹿、泣くなよ。…そんな夢、見たくらいで」
「だって…だって、こわくてっ…」
ぽろぽろと涙が零れ落ちる。
涙を拭くこともせず、兄に必死に尋ねる。
「にいさまは、どっかに行ったりしないよねっ!?」
「俺は今、此処に居るだろ?」
「これからもずっと、ぼくといっしょだよね?」
兄は弟の頭を抱えた。
暑さなど忘れて、自分の胸に押し付けた。
弟を安心させる為ではない。
咄嗟に答えられなかった。
笑顔を見せられる自信もなくて。
表情を読み取られるのが怖かった。
喉の奥が痛い。
俺は今、どんな顔をしている?
黙りこくった兄に、視界が遮られた弟は不安な声をあげる。
「にい、さま?」
「俺は、春也の傍に居たいだけなのに…
大体、なんで、離れて暮らさなきゃいけないんだよ…俺達、兄弟だぞ…」
「じゃあ、ずっと、いっしょ?」
「…ああ。ずっと一緒に、決まってるだろ」
「よかった」
兄は深く息を吸って、弟を離す。
弟は、すっかり安心した様子で、泣き顔のまま笑っていた。
優しく弟の頭を撫でる。
「じゃあ、もう眠れるな?」
「うん」
弟は嬉しそうに、兄にひっつく。
その目は、とろんとしていて、もう大分眠そうだった。
弟は、寝言のように呟く。
「ぼく…にいさまの、おふとん…すき」
「え?」
「にいさまの、においがする」
fin
■シリアス。幼少期。弟の背中の続編。
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丑三つ時。
春臣は自室で床に就いていた。
和歌山の夏の夜は、暑苦しくて。
夢と現の行き来を繰り返していた。
今日は夏休みで、春也がこの家に泊まりに来ていた。
離れの部屋に居る筈だ。
春也はちゃんと眠れているだろうか。
何か音を聞いた気がして、春臣は薄く目を開ける。
ひたひたと近付いて来る足音。
白く小さな手が、ふすまに置かれていた。
「にいさま…」
寝巻き姿の春也。
普段は、とっくに寝ている筈の時間だ。
手には枕を持って、瞳には涙を溜めていた。
「春也、どうした?」
きゅっと枕を握る。
「あの、ね。…いっしょに、ねてもいい?」
「怖い夢でも見たのか」
こくんと頷く。
「…たくさん、見た」
理由は容易に思い付く。
今日は、春也と一緒に、幽霊の映画を見に行った。
見たいと言ったのは、春也だ。
怖がるくせに、この手のものは割りと好きらしい。
「春也、幽霊の夢、見たんだろ?」
「ん…」
「やっぱり、映画、見なきゃ良かっただろ?」
「でも、見たかったんだもん…」
「仕方無いな、春也は。ほら、来いよ」
敷布団をとんと叩くと、
弟は安堵の表情を見せて、兄のすぐ隣に枕を置いた。
枕と枕の間は殆ど無い。
弟は、ぴたと身体を寄せてくる。
「そんなに近付いて、暑くないのか?」
「…だめっ?」
涙目で訴えられて、兄は否と言えなかった。
「お前が良いなら、俺は良いよ」
只でさえ熱帯夜なのだが、今夜はもう少し暑くなりそうだ。
早速、首元に、じとりと汗が伝う。
「にいさまっ…」
「ん?」
「こわいゆめ、ゆうれいだけじゃ、ないの…」
「なに?」
「…いなくなっちゃう、ゆめ」
「居なくなる?」
「にいさまが、いなくなっちゃうゆめだった! どこか遠くに行っちゃって…
『行かないで』って言っても、にいさま、まってくれなくてっ…」
「馬鹿、泣くなよ。…そんな夢、見たくらいで」
「だって…だって、こわくてっ…」
ぽろぽろと涙が零れ落ちる。
涙を拭くこともせず、兄に必死に尋ねる。
「にいさまは、どっかに行ったりしないよねっ!?」
「俺は今、此処に居るだろ?」
「これからもずっと、ぼくといっしょだよね?」
兄は弟の頭を抱えた。
暑さなど忘れて、自分の胸に押し付けた。
弟を安心させる為ではない。
咄嗟に答えられなかった。
笑顔を見せられる自信もなくて。
表情を読み取られるのが怖かった。
喉の奥が痛い。
俺は今、どんな顔をしている?
黙りこくった兄に、視界が遮られた弟は不安な声をあげる。
「にい、さま?」
「俺は、春也の傍に居たいだけなのに…
大体、なんで、離れて暮らさなきゃいけないんだよ…俺達、兄弟だぞ…」
「じゃあ、ずっと、いっしょ?」
「…ああ。ずっと一緒に、決まってるだろ」
「よかった」
兄は深く息を吸って、弟を離す。
弟は、すっかり安心した様子で、泣き顔のまま笑っていた。
優しく弟の頭を撫でる。
「じゃあ、もう眠れるな?」
「うん」
弟は嬉しそうに、兄にひっつく。
その目は、とろんとしていて、もう大分眠そうだった。
弟は、寝言のように呟く。
「ぼく…にいさまの、おふとん…すき」
「え?」
「にいさまの、においがする」
fin
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